はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 4 [花嫁の秘密]

メイフィールド侯爵が訪れた時の事はあまり思い出したくない。

この日を境にすべてが変わってしまった気がする。
侯爵は当然のように『結婚』と言う言葉を口にした。
それはアンジェラに向かってではなく、母に向かってだった。もちろん母に求婚したわけではない。アンジェラに求婚することを、お許しいただきたいと母に申し出たのだ。

侯爵は歳は二十八と言った。そろそろ結婚してもいい歳だ。

アンジェラは自分の事を、まるで他人事のように傍で聞いていた。
アンジェラは完全に蚊帳の外だった。
結婚って、求婚って、こんな感じなの?と思わずにはいられなかった。

話し掛けられなければ、こちらから質問すらできないのに、侯爵はアンジェラに何も聞いてこようとしなかった。目線すら合わせてくれなかった。

侯爵がアンジェラに話しかけられない理由は、きっと母のせいだろうと思った。
母のお喋りは侯爵相手でも衰えることを知らなかった。

唯一アンジェラが口を開くチャンスがやって来た。

「素敵な髪の色ですね」そう言った。

侯爵は口元を僅かに上げると、「ありがとうございます」と返事をした。
アンジェラだけ気付いたことだが、侯爵はほんの一瞬だが不快そうに目を細めた。それもほんの少しだ。

これは言ってはいけない事だったのだ。
侯爵はその赤く燃える様な髪の毛を忌み嫌っている。
その理由は誰も知らないが、いつしか暗黙のうちに誰もがそのことには触れなくなったのだ。
だが、社交界に疎いこの屋敷の親子はそんなこと知る由もなかった。

それを知ることになったのはロジャーがアップル・ゲートにやって来てからだった。
侯爵の求婚話を聞かされたロジャーは驚きを隠せなかった。
この訪問はロジャーが段取りをしたものだったのだが、まさかいきなり求婚というところまでいくとは思っていなかったのだ。
もちろんそう考えなかったわけではないのだが、侯爵が何を考えているのかロジャーには理解できなかった。

「それなら、例の作戦は成功なんじゃない?」
セシルがおずおずと意見を述べた。ただいま兄弟三人で協議中なのだ。

「作戦?」ロジャーが訊いた。

「そうだわ。これでもし、侯爵様に嫌われたとしたら、結婚もしなくて済むし、社交界に疎いわたしの言葉ですもの、それでお兄様の顔に泥を塗ることにもならないと思うけど、どうかしら?」

侯爵に嫌われてしまおう作戦はきっと成功したのだと、その場の全員がその意見に一時納得したのだが、侯爵はどうやら求婚をやめるつもりはないようだった。

つづく


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