はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 3 [花嫁の秘密]

議会の閉会と共にシーズンも終わり、ロンドンにいる人々は一斉に領地へと戻ってゆく。

「お母様、ロジャー兄様はまだこちらにはいらっしゃらないの?そのまま本邸へ行かれるのかしら?」

「しばらくロンドンで用があるのですって。リックはどこにいるのやら……」
ソフィアはそう言った後、何かに気付いたように顔を煌めかせ、息を大きく吸い一気にしゃべり始めた。

「今度こちらにメイフィールド侯爵様がいらっしゃるのよ。ほら、春先に噂があったでしょ、あの噂で、あなたに是非会いたいのですってよ。侯爵様があんな噂程度でこちらまでやって来るなんて、何て光栄なんでしょう」あんな噂程度と言った母の顔はそんな風には見えず、うっとりと壁に掛けられているアンジェラの肖像画に目をやり話を続ける。
「アンジェラ、結婚って事になったらどうしましょう?侯爵はほらとてもハンサムで、パーティーに参加した女性はみんなあの方からダンスの申し込みを待っているのよ。とても優雅で、それはもう、貴族の中の貴族って方よ」

「お母様!わたしはまだ十五よ、結婚なんて――」
なんとか母を諌めようと口をついて出た言葉は、あえなく母に一蹴されてしまう。

「まあ、昔はもっと早くに結婚した子もいるのよ。それに早い方が子供を産むのにもいいに決まってるわ」
ソフィアは四十歳でアンジェラを出産し、死の境を彷徨ったため、その時の経験からやはり子供は早く生んだ方がいいという結論に達したのだ。

母には何を言っても無駄な事が分かっている。アンジェラは暫くして自室に戻った。

それから、アンジェラの世話をしているマーサを呼んだ。
もとは母の侍女だったのだが、アンジェラの誕生時からアンジェラの世話係になった。
マーサは四十代後半で、茶色い瞳に黒髪を頭上で丸く纏めている。
アンジェラはマーサを母のように慕っている。
母には言えない事もマーサには言える、いや、マーサにしか言えない事があるのだ。

「マーサ、聞いた?あの話」

「ええ、聞きましたよ」
マーサはおお恐ろしいという様に、両手を頬に当て肩を竦め震えた。

「わたしどうしたらいい?お母様本気よ」

「とにかく、侯爵様の訪問は避けられません。侯爵様がどういうつもりでこちらに来られるのかは分かりませんけど、こうなったら、ありきたりだけど、嫌われる事です」

「マーサ!そんなことしたら、兄様の顔に泥を塗ることになるわ」

「だから、それとなくそういう方向へ持っていくしかないと……」
マーサも困っていた。

「それに、わたし怖い。もしかしたら、ばれちゃうかも――だって、侯爵様はいつも綺麗な女の方を大勢見ていらっしゃるのに、わたしなんて……」

「お嬢様、それは大丈夫ですよ。こんなに愛らしくて美しいのに、誰があなたさまを男だと思いますか?わたしだって世話をしていても、男の子だってことつい忘れてしまうんですから」

マーサの慰めは喜んでいいのかどうなのか、アンジェラは複雑な気持ちになった。

出産後生死を彷徨ったソフィアは、意識が戻って初めて目にした我が子が天使に見えるほど愛らしく、もちろんその我が子が待ち望んだ女の子だと少しの疑いも抱かなかったのだ。
そんななか、子供を取り上げたマーサは本当の事が言えず、アンジェラをそのまま女の子だと言う事にしたのだ。
落ち着いたら話そうと思っていた真実を言えぬまま、洗礼を受けてしまい、そのまま長い月日が過ぎてしまったのだ。
アンジェラが自分の身体が女の子のものではないと気付いたのは十歳の時。それでも、そんな疑いは周りの自分に対する扱いで、そのまま特に気にしなかったのだ。
そして、十二歳の時に自分が男の子だと自覚し、マーサに相談したのだ。
マーサは泣いてアンジェラに謝った。
兄三人もアンジェラが男の子だと知っていたが、母がもしそれを知れば、正常ではいられないと思い、みんなアンジェラを女の子として扱っていたのだ。
その時アンジェラは男の子っぽい振る舞いをしようとしたのだが、それは誰から見てもおてんばな女の子にしか見えなかったのだ。
結局、アンジェラはそのまま女の子としての生活を続けることにしたのだ。
ただ、その時から自分は女でも男でもない人間になってしまったと、一度だけだがマーサの腕の中で涙が尽きるまで泣いたのだ。

アンジェラの秘密を知る者は、兄たちとマーサだけだ。
今回の侯爵訪問時には、侯爵にも母にもこの秘密を知られることなくやり過ごさなければならない。

つづく



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