はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 2 [花嫁の秘密]
暫くソフィアはその噂に浮かれていたが、またこの屋敷で二人きりの生活が始まると他の楽しい事に夢中になっていた。
夏休みなり、三男のセシルがアップルゲートに戻って来た。
「ただいま、母様、ハニー」
セシルが母とアンジェラのいる家族用の小さな応接室へ入って来た。
「お帰りなさい、セシル」二人は声をそろえて返事をした。
ハニーとはアンジェラのニックネームだ。アンジェラははちみつ色につやつやと輝く髪の色をしている為、三人の兄には「ハニー」と呼ばれている。
セシルは、ごく薄い金色の髪の毛で柔らかくウェーブしている。瞳はアンジェラと同じでヘーゼルだ。
セシルはアンジェラの隣に腰掛けると、メイドに何かお腹が膨れる物を頼んだ。
「お腹すいちゃって」
歳の割に幼く見えるセシルが舌をぺろっと出して、アンジェラに微笑みかけた。
「セシルは、学校が始まるまでここにいるんでしょ?いっぱい学校のお話聞かせてね」
「うん、ロジャー兄様にも会って来たから、その話も後でするよ。とりあえず、今は何か食べたい」
上の二人の兄とは違い、かわいい顔の二人が微笑み合う姿は、母ソフィアにとっては幸せそのものだった。
間もなく、サンドウィッチとシードケーキ、紅茶が運ばれてきて、セシルは一気にそれらを平らげると、母とアンジェラに土産話を始めた。
*****
夜になりアンジェラの部屋にセシルがやって来た。
セシルは窓際の椅子に腰かけ、少しだけ真面目な顔でアンジェラの顔をじっと見て口を開いた。
「ハニー、さっきは母様がいたから言えなかったけど、ロンドンで大変な事になってるんだよ」
「大変って?」
アンジェラは不思議そうな顔で訊いた。
「ハニーの噂だよ。ロジャー兄様が言ってたけど、社交界ではコートニー家にはそれは美しく聡明な末娘がいて、それに相応しい嫁ぎ先を探しているとね」
「何言ってるの?探してなんかないし、その噂、以前お母様が言っていたわ。まだ、そんな噂が?」
「兄様も困ってたよ。紹介して欲しいって幾人にも言われたって……まだ、そんな歳ではないからと、なんとかかわしたってさ」
「それにしても、どうしてそんな噂が?だって、わたしのことって、その、あまり世間に知られてないでしょ。ただ娘がいるとしか世間の人は知らないはずよ」
「それは、おそらくリックの仕業かと……。ほらリックって、酒癖悪いし、酔ってクラブで大声で吹聴した可能性は拭えない。それに社交場にも一応出ることもあるし、あの軽さは、誰もが認めるからね」
アンジェラは深い溜息を吐いた。
「噂が消えるまで待つしかないわね。ロジャー兄様がきっとうまくやってくれるはずだし」
長男のロジャーは潔癖に近いほど真面目でお堅い性格なのだが、それとは対照的に自称ジャーナリストのエリックは遊び回っていて、その言動も軽く信頼度はかなり低い。
だが、一度広まった噂は何か別の話題がなければその分長引く。きっと社交場にロジャーが顔を見せる度、どこからともなく復活してくるのだろう。それだけ、今の社交界は噂話に飢えているのだ。
「それが……メイフィールド侯爵がその噂に興味を持ったらしくて――だから、普段は上手くあしらう兄様が困っていたんだ」
「メイフィールド侯爵……クリストファー・リード様のこと?」
「ハニー知ってるの?」
「ううん。直接は知らないけど、お母様の話に出て来た人だわ。リード家の印ともいえる、燃える様な真っ赤な髪の色をしているって言うあの方でしょ。でも、歳はずいぶん上だったはず……」
「うーん、そうだったかな?僕はあんまり世間の噂には疎いから」
セシルは学校生活で手一杯の為、世間の噂には構っていられないのだ。
「でも、どっちにしたって断るしかないでしょ。だって、わたし結婚なんて出来ないし……それに、お母様を一人に出来ない」
「結婚は、そうだね……でも、母様には僕もいるから大丈夫だよ」
再び耳にした、ロンドンでのアンジェラの噂は、結局二人の間ではどうすることも出来ず、その後はセシルの学校話で夜遅くまで盛り上がっていた。
つづく
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夏休みなり、三男のセシルがアップルゲートに戻って来た。
「ただいま、母様、ハニー」
セシルが母とアンジェラのいる家族用の小さな応接室へ入って来た。
「お帰りなさい、セシル」二人は声をそろえて返事をした。
ハニーとはアンジェラのニックネームだ。アンジェラははちみつ色につやつやと輝く髪の色をしている為、三人の兄には「ハニー」と呼ばれている。
セシルは、ごく薄い金色の髪の毛で柔らかくウェーブしている。瞳はアンジェラと同じでヘーゼルだ。
セシルはアンジェラの隣に腰掛けると、メイドに何かお腹が膨れる物を頼んだ。
「お腹すいちゃって」
歳の割に幼く見えるセシルが舌をぺろっと出して、アンジェラに微笑みかけた。
「セシルは、学校が始まるまでここにいるんでしょ?いっぱい学校のお話聞かせてね」
「うん、ロジャー兄様にも会って来たから、その話も後でするよ。とりあえず、今は何か食べたい」
上の二人の兄とは違い、かわいい顔の二人が微笑み合う姿は、母ソフィアにとっては幸せそのものだった。
間もなく、サンドウィッチとシードケーキ、紅茶が運ばれてきて、セシルは一気にそれらを平らげると、母とアンジェラに土産話を始めた。
*****
夜になりアンジェラの部屋にセシルがやって来た。
セシルは窓際の椅子に腰かけ、少しだけ真面目な顔でアンジェラの顔をじっと見て口を開いた。
「ハニー、さっきは母様がいたから言えなかったけど、ロンドンで大変な事になってるんだよ」
「大変って?」
アンジェラは不思議そうな顔で訊いた。
「ハニーの噂だよ。ロジャー兄様が言ってたけど、社交界ではコートニー家にはそれは美しく聡明な末娘がいて、それに相応しい嫁ぎ先を探しているとね」
「何言ってるの?探してなんかないし、その噂、以前お母様が言っていたわ。まだ、そんな噂が?」
「兄様も困ってたよ。紹介して欲しいって幾人にも言われたって……まだ、そんな歳ではないからと、なんとかかわしたってさ」
「それにしても、どうしてそんな噂が?だって、わたしのことって、その、あまり世間に知られてないでしょ。ただ娘がいるとしか世間の人は知らないはずよ」
「それは、おそらくリックの仕業かと……。ほらリックって、酒癖悪いし、酔ってクラブで大声で吹聴した可能性は拭えない。それに社交場にも一応出ることもあるし、あの軽さは、誰もが認めるからね」
アンジェラは深い溜息を吐いた。
「噂が消えるまで待つしかないわね。ロジャー兄様がきっとうまくやってくれるはずだし」
長男のロジャーは潔癖に近いほど真面目でお堅い性格なのだが、それとは対照的に自称ジャーナリストのエリックは遊び回っていて、その言動も軽く信頼度はかなり低い。
だが、一度広まった噂は何か別の話題がなければその分長引く。きっと社交場にロジャーが顔を見せる度、どこからともなく復活してくるのだろう。それだけ、今の社交界は噂話に飢えているのだ。
「それが……メイフィールド侯爵がその噂に興味を持ったらしくて――だから、普段は上手くあしらう兄様が困っていたんだ」
「メイフィールド侯爵……クリストファー・リード様のこと?」
「ハニー知ってるの?」
「ううん。直接は知らないけど、お母様の話に出て来た人だわ。リード家の印ともいえる、燃える様な真っ赤な髪の色をしているって言うあの方でしょ。でも、歳はずいぶん上だったはず……」
「うーん、そうだったかな?僕はあんまり世間の噂には疎いから」
セシルは学校生活で手一杯の為、世間の噂には構っていられないのだ。
「でも、どっちにしたって断るしかないでしょ。だって、わたし結婚なんて出来ないし……それに、お母様を一人に出来ない」
「結婚は、そうだね……でも、母様には僕もいるから大丈夫だよ」
再び耳にした、ロンドンでのアンジェラの噂は、結局二人の間ではどうすることも出来ず、その後はセシルの学校話で夜遅くまで盛り上がっていた。
つづく
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2011-01-10 00:04
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