はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

薄紅の心 6 [薄紅の心]

翌朝、洗面所で二人は顔を合わせた。
瑞希は何事もなかったかのように振る舞おうとしていたが、慶に一度も目を合わせようとはしなかった。
友美に異変を悟られてはいけないと、瑞希は朝食も取らず逃げるように家を出た。

慶は考えていた。
瑞希を手に入れる為には、友美が邪魔だった。
孝雄の会社のコネと自分のつてを使い、まずは友美を追い払う準備をした。

友美が行きたがっていた美術展のチケットを手に入れた。
瀬戸内の小さな島の美術館は、友美の実家にも近かった。
「ね、母さん。父さんもいないしゆっくりしてきなよ」
慶はいつものように爽やかな笑顔で友美にチケットを渡した。
そして、念には念を入れチケットは数枚用意し、友人と行くように勧め、近くの宿も押さえた。
実家には寄らず、日帰りで帰ってこられては困るからだった。
社交的な友美は慶の思惑通りに、週末友人と共に出掛けることになった。

「ねえ、瑞希。見て見てー、これ慶から貰ったのよ。お母さん、週末お友達と泊りで出掛けるから、慶と留守番よろしくね」
友美はチケットと宿のパンフレットを、はしゃぎながらピラピラとさせ瑞希に見せた。
「母さん、俺からっていうよりかは、父さんの会社のおかげだよ。ちょうど母さんが行きたがってた美術展のスポンサーみたいだし」
慶はにっこりと微笑みながら瑞希の方を見た。

瑞希の顔からは血の気が引いていた。
これでこの週末に、瑞希が慶のものになることが決まったのだ。
いつかも分からず毎日ビクビクするよりかは、分かっている方がマシだろうと、慶は自分の都合のいいように思う事にした。

「瑞希どうした?具合でも悪いのか?」
「――えっ、あ、大丈夫だよ、兄さん。じゃあ、僕、上で勉強するから……」
そう言って、椅子から立ち上がり、足の震えを堪えるように、手をぎゅっと握り二階へ上がって行った。

そして、あっという間に週末が訪れた。

「いってらっしゃい、母さん。向こうに着いたら連絡して」
「あら、慶心配してくれるの?着いたらちゃんと連絡するわ。それじゃあ、行ってくるわね」
「いってらっしゃい」

友美は一泊の割には大きな荷物を持ち、タクシーに乗り込むと嬉しそうに後ろを振り返り、手を振りながら慶と瑞希から遠ざかって行った。
タクシーが見えなくなると、慶が瑞希の肩を抱き「入るよ」と家の中へと促した。

つづく


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