はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

薄紅の心 3 [薄紅の心]

『瑞希ー?帰ってるの?』
出掛けていた母が帰宅した。
玄関の扉を開け、靴を脱ぎながら二階にいる瑞希に声を掛ける。

瑞希が怯え切った表情で慶を見た。
慶は『言わないから大丈夫だ』と頭を撫で、瑞希の部屋から出た。

慶は階下に降り、母に瑞希は疲れて寝ているようだと伝えた。
今、母と顔を合わせれば、すべてが明るみに出る可能性があったからだ。
そうなれば、離婚と言うことにもなりかねない。
それは、慶にとっても困る。
瑞希が自分の傍から離れてしまうからだ。

慶は孝雄の性癖をなんとなくだが知っていた。
瑞希がいたから結婚を決めたとは思わないが、もしかしたらそうなのかもしれないとも思う。
孝雄は特にゲイと言うわけではなさそうだ。
ただ、綺麗なものが好きなのだ。
特に綺麗な少年が。

瑞希は母、友美に似てとても綺麗だった。
細い黒髪が顔の輪郭に沿ってさらりと流れる。
目尻にかけて長く伸びる睫毛が、綺麗な顔立ちに優しさと艶っぽさをプラスしている。
薄く整った唇が儚さを醸し出し、白く透ける肌は誰かに染めてもらうのを待っているようだった。

慶はその肌を自分によって淫らに朱に染めたい、ずっとそう思っていた。
そして父が戻ってくる前に、瑞希を手に入れなければ、そう思った。

慶はその夜早くも行動に出た。
夜が更け、家中がしんと静まり返る時間――母は割と早く床に就くと、朝まで目が覚めることはないが、その代り朝とてつもなく早起きだった。
慶と瑞希だけの時間がやって来たのだ。

慶は気になっていた。いつから父は瑞希にあのような事をしていたのだろうか?
最近であることは確かだった。
なんとなくだが、ここひと月ほどの出来事だと思った。
もっと早く気づいていれば……いや、もっと早く自分のものにしているべきだったのだと慶は後悔した。
疲れたように、そして安心したように眠る瑞希に、自分はこれから何をしようとしているのだろうか?

瑞希の部屋へそっと入り、ベッドの上で眠る瑞希を確認する。
部屋のドアに背を向け、うつ伏せで眠る瑞希の傍に近寄り、顔を覗き込んだ。
すーすーと寝息を立てて眠る瑞希を目にし、気持ちが揺らいだ。
本当はゆっくりと信頼関係を築き、兄として慕うその心を愛しい人へ向けられるそれへと変えていき、それからすべてを手にしようと思っていた。
だからこそ、瑞希が兄と慕い心を寄せてくれたのに、それが今この瞬間終わる。
それでも、父にみすみす瑞希を奪われるわけにはいかない。だからここまでやって来たのだ。

つづく


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