はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 417 [花嫁の秘密]

「まったく、毎度この俺をベッドから引きずり出すのはお前くらいなもんだぞ。こんなに朝早くいったいどうした?ん?」

目が覚めたら清潔なベッドの上で、きちんと枕に頭を乗せていた。目の前には熊みたいな風貌の男。ぼさぼさの頭に無精髭。ひと目で寝起きだとわかる。

「少しは、静かにできないのか?キャノン」サミーは腕を持ち上げ頭の上に置いた。吐き気は収まっているが頭痛がする。

「やれやれ、呼びつけておいて何て言い草だ。ほら、よく顔を見せてみろ」キャノンはサミーの腕を掴んで身体の横に戻した。「何か飲んだか?例えば酒とか」

「酒?いや、ああ……ああ、飲んだな。よくわからないが、何か飲まされた」

「あの男に?」

サミーはキャノンを見上げた。何もかも知っているような口ぶりだ。自分でも何が何だかよくわからないのに。

「少しぼんやりするだけだと言った。けど、めまいがして気分が悪くなって――ブラックはどこだ?」
とにかく、ブラックが後始末をしてくれたことだけはわかった。毛先が湿っていて石鹸の香りがするのは、そういうことなのだろう。

「お前の従者か?あいつなら下でグラントと話をしていたぞ。呼ぶか?」

「いや、いい」きっとすべきことをしているのだろう。いま呼んだところでうまく指示を出せるとも思えない。天井の細かな細工を見つめ、ぼんやりとした頭で考える。ひとつだけ、エリックにこのことを言うなと言っておかないと面倒なことになる。

「少し身体を起こせるか?」キャノンは言いながら身体の下に腕を差し入れた。引き上げて枕を背に座らせるとグラスを手に持たせた。「これで少しは気分がよくなる」

「僕が何を飲んだのかわかっているのか?」サミーはグラスを覗き込んだ。薬草でも煮出したのか、茶色い液体はひどく苦そうだ。

「おおよそはな。だからそれを飲んで今日一日はベッドにいるんだな」

「この薬はなんだ?」聞いたところでわかりはしないだろうけど。

「ただの吐き気止めだ」キャノンは椅子を引き寄せ座った。サミーの顔を見て、さっさと飲めと顎をしゃくる。

「これを飲んだら吐きそうだ。効くのか?」そう尋ねながらひと息に飲み干した。マーカスに飲まされた何かより、むかむかする。

「まあ、少しはよくなるんじゃないかな。他にどこか痛むところはあるか?」

まったく。相変わらず適当だな。「そういうのは、無理やり身体を引っ張り上げる前に言って欲しいね。あちこち痛むけど、ひどいことをされたわけじゃないから平気だ」どちらにしても半分は覚えていないし、大袈裟に騒ぎ立てたくない。

「こんな目に遭わされて、よくそんなことが言えるな。それで、あいつは何しにここへ来たんだ?」キャノンは呆れたように言って、空になったグラスを取り上げた。

「昔の事をあれこれ言っていたけど、結局何をしに来たのかよくわからない」もしかするとぼんやりしている間に、重要なことを口にしたかもしれない。けど、それが何であれ二度と会いたくはない。

サミーは身体をずらして、また横になった。確かに吐き気に悩まされなければ、ゆっくり寝て回復はできる。キャノンの様子から、たいしたものを飲まされたわけではなさそうだ。ただあれがどういったときに使われるものなのかは、十分理解できた。

「二度と村には入らせないようにしておく」キャノンが真顔で言う。普段はあまり見せない顔だ。

「村の獣医にそんなことができるとは思えないね」憎まれ口を叩きながら、キャノンに確かめておきたいことがあったのを思い出した。そのために戻ってきたというのに、マーカスのせいで危うく忘れてしまうところだった。

つづく


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