はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 416 [花嫁の秘密]

ブラックが部屋を出た時と変わらず、そこにサミーはいた。ベッドの上で動かなくなった主人を見てブラックの鼓動が早くなる。

マーカス・ウェストがここへ来ていたとして、いったい何をしたらこうなる?もちろん、何をしていたのかは想像せずとも明らかだ。そこに合意があったのかなかったのか、いまの段階では何とも言えないが、予期しない何かが起こったと思うのが自然だ。

ブラックは新しいシーツをサミーの横に広げた。自らを守ろうとするかのように背を丸めるサミーから上掛けをはがし、身体を隅々まで改めた。目立った何かがあるわけではないが、左肩の辺りが赤くなっている。強く掴まれたか何かしたのかもしれない。

シーツの上に移し身体を覆う。隣の部屋をのぞくと、ちょうど支度が整ったところだった。

「一人は部屋の外で待っていてくれ。一人はグラントにサミュエル様のベッドを整えるように言ってくれ」下僕二人が部屋から出ていくのを目の端で見ながら、ブラックはサミーのところへ戻った。医者が来るまでに少しでもマシな状態にしておきたい。

抱き上げて部屋を横切る。お前は従僕にしては背が高過ぎだと言われたが、この体躯のおかげで男一人やすやすと抱えることができる。浴槽から引き出すのはもう一人の手を借りる必要がありそうだが、目覚めてくれればその手間も省ける。

ゆっくりと湯船に沈め、顔を濡らしたタオルで優しく撫でるように拭く。まさかこんなふうに世話をするとは、契約を交わしたときは思いもしなかった。

「ブラックさん、いいですか?」隣の部屋からグラントが呼ばわった。声に緊張が見られる。

「何か見つけましたか?」ブラックは尋ねた。

「旦那様の寝室に侵入した形跡がありました。サンルームの窓の鍵がうまくはまっていなかったので侵入はそこからかと。それと、ブラックさんの言うように裏手に車輪の跡が――」

車輪の跡、ということはマーカス・ウェストは馬車で来たのか。堂々としたものだ。待機させておいて用が済んだらさっさと去る。さすが手慣れているな。この男の事は正直よくは知らないが、ちょっとした噂は耳にしている。

パトロンを見つけてその屋敷に潜り込む。コンサルタントと自称しているが実際は何をしているのやら。

「雨が止んでくれて助かった。おかげで足跡が辿れる」エリック様はきっと追えと言う。ただ、いますぐは無理だ。サミュエル様をドクター・キャノンに引き渡すまでは。

「すぐに追わせますか?」

バサバサとシーツを取り換えている音がする。当然と言えば当然だが、グラントは思うことがあっても、その疑問を口にはしなかった。

「いや、それはこっちでやる」絶対に逃がしたくはないから、任せてはおけない。それに追うならしっかりと準備を整えてからだ。

そのためには、まずはエリック様に報告をしなければ。

つづく


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