はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 408 [花嫁の秘密]

ウィックファーム駅に到着した時にはすでに雨が降り始めていた。

列車はおよそ1時間遅れ、フェルリッジ方面の乗合馬車も出発した後だった。最終便が出たとなると自分で貸し馬車の交渉をするしかないが、あいにく出払っているらしい。

翌朝にはどうにかなると言っても、ここまで来て足止めを食らった状態というのはどうにも落ち着かない。やはり最初から馬車で移動しておけばよかった。あの方が列車の旅を嫌う理由が理解できた。

ブラックは馬宿の主人ともう一度交渉することにした。雨はそれほどひどくないものの、まずは悪天候の夜道を頼める御者がいないと話は始まらない。それでもだめなら他所へ行くしかない。

用意してもらった部屋は申し分ないし、ここで少し休憩を取ったからといって新しい主人は文句を言ったりしないだろう。けれど元の主人エリック様が目を離すなそばにいろと言うからには、必ずそうすべきだとブラックの頭の中で警告の鐘が鳴り響いていた。

食堂には同じように足止めを食らった客が数人まばらにいた。諦めたようにエールをちびちびやりながら、仕事の話をしている。荷物の遅れを心配しているようだ。

ウィックファームに駅があるのは、ひとつは物流の拠点になっているからだ。それなのに嵐でもない夜に身動き取れなくなるなど予想外だ。

「クリープエンドの方なら連れて行ってやれるんだがな」カウンターの端で宿の主人との会話を聞いていた男が言った。赤ら顔の陽気そうな男だ。「荷物の積み替えに少し時間がかかるが、朝まで待つよりかはましだろう?」

「申し出はありがたいが、残念ながら方向が違う。フェルリッジの方へ行きたいんだ」ブラックは答えた。

「ああ、そっちのほうか。確かヘイズがフェルリッジを通るとか言っていなかったか」男はまた別の男に話しかけた。

「言っていたな。けどまだ姿を見てないな」テーブル席に座る別の男が言った。眠たげに欠伸をする。

「運ぶ荷があるから必ずここに顔を見せるはずだ。荷物がひとつ増えたところで文句は言わないさ。いい所で降ろしてもらえばいい」男がのんびりと言う。

荷物というのは俺の事か。「それなら、そのミスター・ヘイズが姿を現したら交渉してみることにするよ」ブラックは答え、カウンターに向かってグラスを手に取った。中身はただの炭酸水だ。この調子だと外套を羽織って馬で駆けつけるしかなくなる。が、あまりいい案とは思えない。

やはりミスター・ヘイズか朝になるのを待つかの二択しかない。

結局それまで仮眠をとることにしたブラックは、部屋に戻り決して寝心地のいいとは言えないベッドに横になった。いつでも出発できるようにとただ目を閉じただけのつもりが、ドアを激しくたたく音で飛び起きることとなった。

ドアを開けると、宿の主人がせわしない様子で立っていた。タオルを手に肩のあたりが濡れているところを見るに、外に出ていたようだ。

「旦那、ヘイズが少し遠回りだがお屋敷まで送って行ってもいいと。もう一〇分もしたら出発するそうです」寝ている間に交渉してくれたようだ。世話好きな主人で助かった。

「それはありがたい。出発はすぐにでもできる」時間を確認すると午前三時だった。多く見積もっても二時間もあれば向こうに着ける。

ブラックは外套を取って部屋を出た。

つづく


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