はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 409 [花嫁の秘密]

昔からマーカスにはずるいところがあった。
けど卑劣ではなかったし、故意に傷つけるような真似をしたことはなかった。

今回に限っては、明らかに傷つけるのが目的だとしか思えない。でもいったいなぜ?昔のような関係を望むだけなら、不法侵入して薬だか毒だかをわざわざ飲ませたりはしないだろう。何か必ず別の目的があるはずだ。

結局はこの疑問で思考が止まる。いや、考えていないと正気を保っていられない。

「サミュエル、この傷はどうした?」

マーカスの問いかけに、サミーはまぶたをゆっくりと持ち上げた。目を開けると、途端に世界がぐるぐると回り出す。

見るとマーカスは左腕を掴み、睨むように傷跡を見ている。まるで、また身体に傷を作った僕を責めているかのようだ。

「撃たれたんだ。ただのかすり傷だよ」ギザギザの筋になった傷跡は、生々しいが見た目ほどひどくはない。

「撃たれた?決闘でもしたのか?」どこかあざけるような口調。

決闘ね。ある意味ではあの一瞬は勝負だった。勝ったのは僕で、負けた男は死んだ。「ジュリエットを取り合って?」本当の事は口にできるはずもない。

「まったく笑えないな」吐き捨てるように言う。よほどジュリエットの事が気に入らないようだ。

「それはこっちのセリフだ。いったいどうして、僕をこんな目に?」マーカスが腕に直接触れているということは、僕はとっくに脱がされて裸になっているということか。けど、なぜか寒さを感じない。よくわからない薬のせいで感覚がマヒしているのかもしれない。

「よくしゃべるな。昔とは大違いだ」マーカスはサミーの頬を撫でた。「無事なのはこの顔くらいか?」

醜い傷跡が嫌いなのは知っている。マーカスは僕の顔がお気に入りで、おそらくそれ以外には興味ない。

ひどい男だと思うが、それでもそんなことは気にならないほど、マーカスは僕に様々な世界を見せてくれた。外とのつながりができたのはマーカスがいたからこそだ。けれど、ある日突然姿を消した。

父は僕がごく普通に生きているのが気に入らなかった。家庭教師とまともな関係を築き、様々なことを学んでいることに腹を立てて、外出を禁止したこともある。町へ出て肉屋の主人と話をすることも、仕立屋で洒落たシャツを試着することも許せなかったらしい。

ただ部屋にこもって本を読んでいればいい、そういう考えだったのだろう。けど部屋にこもってしていることといえば――これを父が知ったらどうなっていただろう。

結局マーカスは追い出され、代わりにひどく退屈な女の家庭教師が来た。彼女はいい家庭教師だったが、本当につまらなかった。

「僕として、そのあとどうする?昔に戻りたいのか?」シーツに手を滑らせ、ここが自分のベッドの上だと気づいた。マーカスは僕をここまで運んだのか。寒くないのは部屋が暖かいからで、感覚がおかしくなっているわけではなかったようだ。

「その考えはなかったが、悪くないな。お前があの頃と変わらず俺を満たしてくれればだが」

つまりあの頃はマーカスを満足させていたというわけだ。はっきり言われたことがなかったけど、顔だけではなかったということか。「どうかな?僕を抱いたってつまらないだけだよ」

つづく


前へ<< >>次へ


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村


web拍手 by FC2

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。