はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 407 [花嫁の秘密]

少しぼんやりするだけ?

嘘つきめ。

サミーは身をよじった。マーカスに頭を押さえつけられ、身動きが取れない。いったいどういうつもりだと文句を言おうにも口を塞がれている。

気分が悪い。頭がくらくらする。

どう考えてもマーカスの行動の意味が理解できない。それとも理解できないのは、マーカスが僕に何か飲ませたからなのか?頭ははっきりしていると思っていたが、実際はそうでもないのかもしれない。

僕の何がマーカスを刺激したのだろう。ジュリエットとのゴシップ記事を見たからなんだっていうんだ。いままで新聞や雑誌を手に取ることもできない場所にでもいたのか?あんなものは真偽を確かめるまでもなくほとんどが面白おかしくするために誇張したもので、本当のことなどひとつもない。これを言うと、エリックはきっと反論するだろうが、彼の書く記事も嘘ばかりだ。

考えても仕方ない。マーカスはきっとやめない。

せめてここにブラックがいればどうにかなっただろうけど、いまここにいないなら明日の朝までは期待できないだろう。

「あの女と、もう寝たのか」マーカスはゆっくりと顔を上げ、頭を掴む手の力を抜いた。ひとまず開放する気になったようだ。

「いいや」幸いなことにね。

「当てつけならやめておけ」

マーカスの勘違いを指摘する気にもなれない。クリスに嫌がらせなんかしたことないし――アンジェラの事を除いて――、ジュリエットと付き合うことが当てつけになるという考えが、そもそも違っている。

「まさか」自分と関係があったからか?現在進行形ならエリックが把握しているはずだから、過去だとしてもいつの時点だろう。

「サミュエル、お前は働かなくてもいいかもしれないが、俺は違う。お前と違って父親が何もしてくれないからな」

「いったい、なんの――」言いかけて、また口を塞がれた。労働者とは思えない滑らかな手がシャツの裾から入り込んできた。働いていると言っても、女性相手なら指のささくれひとつないのも頷ける。きっと爪はピカピカに磨かれていることだろう。

マーカスがボタンを器用に外していくのをどこか別の場所から眺めている気分だった。ぼんやりするだけとはこういうことか。感覚ははっきりとあるのにもやがかかったような、目を閉じて成り行きに任せる以外僕に何ができるだろう。

それでも、拒絶の意思は示すべきだ。十二年ぶりに突然やってきて好き勝手できると思われたくない。

サミーは頭を左右に振りもがいた。必死に足をばたつかせマーカスを押しのけると、這うようにしてベッドの下へ落ちた。

めまいと吐き気がするが、まったく動けないわけではない。とにかくこの部屋から出て、叫ぶか呼び鈴を鳴らすかすればすぐにグラントがやって来る。

よろめくようにしてドアへ向かう。自分の部屋に戻れたらいいけど、それは無理そうだ。

雨音とともに、マーカスの笑い声が聞こえた。

「量が足りなかったか」まったく人間味のない冷淡な口調。ゆったりとした歩幅で近づき、サミーの腕を掴むと強い力で引き寄せた。「逃げられないとわかっているだろう?」

「こんなことをしてただで済むと?」ああ、なんてありきたりなセリフ。エリックに聞かれたら絶対馬鹿にされる。

「どうする?父親にでも言いつけるか?」マーカスはくつくつと笑い、サミーの顎を掴んで口をこじ開けた。「素直に言うことを聞けばいいものを」

液体が口の中に流れ込んできた。ほんの少量、味はたぶんない。けど、ただただ不快だ。おそらくもう自力で立ってはいられないだろう。

サミーは完全にマーカスに寄り掛かり、まぶたを落とした。

つづく


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