はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 393 [花嫁の秘密]

エリックが一方的なのはいつものことだけど、今回は少々やり過ぎだ。

セシルに大学をやめろという権利は、ロジャーならまだしもエリックにはない。まあ、言うだけなら自由だが、実際に行動に移しかねないから恐ろしい。ある日大学へ行ったら自分の居場所がなくなっていた、ということもあり得る。

さて、僕はどこまで口を出していいのか。僕も兄であることには変わりないし、なによりセシルが助けを求めている。

「向こうの名物って何だろう。ハニーは美味しいもの食べているかな?」部屋でひと休みしたセシルが居間に戻ってきた。晩餐までの時間二人で一杯飲むことにしたのだ。

エリックは今夜は食事は外で済ませてくると言って、六時ごろ出掛けて行った。正装をしていたからどこかに招かれているのだろう。予定をいちいち言う気はないらしい。だからと言うわけではないが、プラットに言ってワイン庫からリースリングを持ってこさせた。程よく冷えていて、暖かい部屋で飲むにはちょうどいい。

「ハギスかな。僕は苦手だけど」

「ああ……、甘いものは?」どうやらセシルも苦手のようだ。

「あまり覚えていないけど、チェリータルトとスコーンは美味しかったな」滞在中はのんびり食事はできなかったし、そんな気分でもなかった。問題を片付けるためとはいえ、アンジェラから遠く離れた場所へ一人行くのは気乗りしなかった。だとしても、クリスの代わりに役目を果たすことがアンジェラのためでもあるのだから、行かないという選択肢はなかった。

「さっきのチェリータルトも美味しかったよ。どこで見つけたの?いま新しい料理人を雇うのは大変だって聞いたけど」セシルはくつろいだ様子でワインを口に運んだ。エリックがいたらこうはいかなかっただろう。

「ん、ちょっとね。試用期間を設けてるけど、合格かな?」僕にだってエリックほどではなくても人脈はある。

「僕が決めていいなら、合格だけど、サミーはどうだった?」セシルは子供がおやつをねだるときの顔をしている。セシルが合格だと言うなら、このまま雇って問題はないだろう。

サミーは笑顔を返した。問題は菓子職人を雇うかどうかではなく、エリックがなぜセシルにあんなことを言ったのか。僕の説明でどうにかなるとは思わないけど、セシルはもっと詳しく知るべきだ。

「昨日、プルートスへ行ったんだ。僕はジョンと食事をしただけだけど、エリックはステファンとクィンとの会見に臨んだ」

「それって……」

「そう、エリックはとうとうあのクラブを手に入れるために動き出した。ステファンとジョンを共同経営者に抜擢したらしいよ、僕に何の相談もなく」思い出すだけで腹が立ってくる。エリックはあれこれ説明していたけど、駅を作るという話も然り、決める前に話すことはできたはず。

「それと僕に何の関係が」セシルはワインを飲むのをやめて、ビスケットの入った陶器の器に手を伸ばした。

「君もそれに巻き込まれているってこと。エリックは僕だけじゃ無理だって思っているんだろうけど、仕事をする相手を選ぶ権利は僕にだってあった」それにまだあのクラブが欲しいかどうかも、はっきりとした答えが出ていたわけじゃない。

セシルが巻き込まれて戸惑っているように、僕も戸惑っている。ついでに言うなら、ジョンも戸惑っていた。そんな状態でクラブを経営できるわけない。

つづく


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