はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 380 [花嫁の秘密]

エリックは気の長い方ではないが、仕事柄待つことには慣れている。調べものをするとき、結果がすぐに出ればいいが、何日も何週間も、ことによっては数年かかることもある。対象に動きがなければ動くまでじっと待つしかないのだから仕方がない。

けど今夜はクィンがここへ来ることは間違いない。顔を出すと言う情報を得て、面会の約束を取り付けたのはステフのくせに、こいつはさっきから吐きそうな顔をしている。よほどこの場所がお気に召さないらしい。

ステフとジョンは法律家のアルフレッド・スタンレーの保護下にある。アルフレッドは前コッパー子爵と親交があり、子爵が亡きあとジョンが独り立ちするまで面倒を見てきたが、それはいまも継続中だ。親子とまではいかないが、それに近い関係を築いている。

そのおかげでクィンと今夜こそ会える。

こういった仕事の話は酒でも飲みながらする方がいいのだが、クィンはそういうタイプではない。堅い男ではないが、警戒心はサミー並みにある。

サミーはいったいいつになったら俺を信用するのか。いや、もちろんある程度はしているとは思う。だが、すべてを任せるほど信頼しているかといえば、まったく違うと言ってもいいだろう。どんなに理不尽に思っても、あいつの気持ちがそうそう変化するとは思えない。

けど、あまり悠長なことを言っていられない。

「しかし、ランフォード公爵とクィンが知り合いだとは思わなかった。どこにも接点はないだろう?」エリックはステフに尋ねた。

ランフォード公爵エドワード・スタンレーはアルフレッドの甥で、少なからずステフとジョンと関係があるが、口利きをしてくれるほどとは思わなかった。

「伯爵と――ああ、いや、公爵とは特に知り合いではないようですが、友人がクィンと付き合いがあるみたいです。あまり詳しくは聞けませんでしたが」いつも人を食ったような態度のステフだが、スタンレー家の者は別だ。さすがに図々しく聞き出すような真似は出来なかったらしい。

「友人ね……」思いつく人物は数人しかいない。特定するのは簡単だが、そこは重要ではない。

戸口に支配人が一瞬だけ顔を見せたかと思うと、ゆったりとした足取りでクィンが部屋に入って来た。長身で逞しく、黄金に輝く豊かな髪はまるでその富と比例しているかのようだ。太陽神と陰で呼ばれているのも納得の容姿だ。

その太陽神はラウンジに姿を見せる時とは違って、愛想の欠片もない。これは幸先が悪そうだ。今夜この場では客ではないし、仕事の話をしに来ているのだから、向こうが苦い顔をしても文句は言えない。

エリックとステフは立ち上がって、クィンを出迎えた。どちらの立場が上かは、現段階でははっきりしている。けど、あまり下手に出過ぎると足元を見られるどころか、交渉のテーブルにさえ着けない可能性がある。

そうなったら、自分の武器を使うまでだが、いまのところはおとなしくしておこう。

「ミスター・コートニー、うちの会員になったのはここを狙っての事ですか?」クィンは前置きもなしに、いきなり切り出した。敵意を見せているというより、優位に立ちたいがためだろう。

「もっと友好的に話し合いましょう」エリックはクィンが座るのを待たずに、腰をおろした。ステフにも座るようにそれとなく促す。

クィンはひとつ息を吐き、支配人を呼んだ。無意味なやり取りは省いてくれるらしい。

「フロックハート、グラスを三つとそこのデキャンタを持ってきてくれ。それから、ディクソンのことはお前に任せる。うまく対処してくれ」

つづく


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