はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
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花嫁の秘密 379 [花嫁の秘密]

ステフにしては珍しく緊張していた。紳士クラブに足を踏み入れたのは初めてなうえ、いきなり最上階のオーナーの私室に招かれている。仕事柄許可を得ずにこういった場所に侵入することはあるが、はっきり言って居心地が悪い。

「一人にしていていいんですか?」ステフは眠ってしまいそうなほど座り心地のいいソファで、そわそわと足を組み替えた。当たり前だが調度品は一級のものばかりで、経営が傾いているようには見えない。

「子供じゃあるまいし平気だ。そっちこそ、あいつを一人にして平気か?」ゆったりとくつろいだ様子のエリックは、ステフを揶揄うように言い返した。

「ミスター・リードがいるから大丈夫でしょう?」そう言って、ステフは盛大に顔を顰めた。あの二人、まともに会話は出来ているのだろうか。

ジョンと彼は同じ階級の人間だが、ジョンの場合ある日その特権を奪われ、さらには俺といることで貴族の暮らしとは程遠い生活をしている。交友関係は皆無で、たまに兄に会っているらしいが、その兄も少々問題ありだ。だからこそ、今回ミスター・コートニーの話に乗った。

クィンは本当にここを譲る気があるのだろうか。調べてみたが、謎が多い人物であまり情報を仕入れられなかった。わかっているのは、彼の妻がクラブ経営から手を引かせたがっていること。

「どうだろうな。まあ、サミーは腹が減ったと言っていたから、仲良くうまいもんでも食べているだろうよ」

それならそれで安心だ。食べている間は、変なことはしないだろうから。あいつは賭け事をするのには向いていない。「それで?ミスター・リードには俺たちの事話したんですか」

もしこのクラブを手に入れたら、俺を共同経営者にとミスター・コートニーは言ったが、そこにジョンもいなければ断るつもりだった。ミスター・リードはそれを承諾したのだろうか?

「いや、まだだ。けど、気づいただろうな。そもそも一緒に来いと言ったのに、下に残ったのはあいつだ。あとで文句言おうが知るもんか」

こうやって悪態を吐くが、この人のしていることはすべて彼のためだ。少し前までは仕事を依頼されてもまったくそんなことは思わなかったのに、いったい何がどう変化したのだろう。それともただ、俺がいままで気づかなかっただけか?

「随分と待たせますね」ステフは苛々と言った。この苦手な場所に自分の椅子も加わるのかと思うと、この話を受けてよかったのか不安になる。これまでジョンとのんびりやって来たのに、仕事がひとつ増えるということは、間違いなく生活は一変するだろう。

「時間はだいたいでしか言われていないから仕方ない。向こうは俺たちと違って忙しいんだ。結婚しているからな」エリックはそう言って、身震いをした。

ステフもつられて身を震わせた。まったく、ゾッとする話だ。

つづく


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