はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 381 [花嫁の秘密]

エリック・コートニーがとある噂を聞きつけて何度か接触してきていたが、さすがに逃げ切れないか。

クィンは諦めて、ブランデーグラス片手にお気に入りの革張りの椅子に深々と身を沈めた。まずは向こうがどうしたいのか話を聞こうではないか。ここを買い叩くつもりなら、すぐにでも追い出してやる。

クィンは現在三十六歳、十五年前に叔父からここの実質的な経営を受け継いだ。当時はもっと野蛮な者たちの溜まり場だったが、叔父が手を引いたことで客離れが起き――クィンの経営方針が気に入らないのもあって――結果としていまのような洗練された紳士クラブへと変貌を遂げた。

最初の五年は苦労も多かったが、仕事をしていて一番楽しかった時期だ。若かったせいもあるだろうが、すべてが新鮮で刺激的だった。けれどもこの数年は以前ほどここに魅力を感じない。自分が年を取ったせいもあるが、このクラブにまつわる悪い噂が出回っていることも少なからず関係している。

ここを拠点に犯罪が行われているという類のものだが、いったいどんな犯罪なのか具体性に乏しくはっきりしない。
ライバルによる工作かとも思ったが、似たような紳士クラブとはきちんと住み分けが出来ているし、噂の出所も特定できていない状態では何とも言えない。

まさか目の前の男の仕業ではないだろうな。

クィンは疑いの眼差しをエリック・コートニーに向けた。隣に座るステファン・アストンは素性こそはっきりしているが、こっちもかなり胡散臭い存在だ。フィリップの頼みでなければ今夜わざわざ時間を割くこともなかっただろう。

「経営が傾いているという噂もありますが、どうやら噂だけのようですね」コートニーが何食わぬ顔で言った。やはりこいつが噂を?

「噂などそんなものです。会員相手にこういうことはあまり口にするべきではありませんが、売り上げは右肩上がりです」特にこの数ヶ月、自分の気持ちとは裏腹にクラブ経営は順調すぎるほど順調だ。

コートニーはそんなことはとっくに知っているといった顔で頷いた。「ではなぜここを手放そうと?奥様のせいですか?」

「その言い方だと妻が悪者に聞こえるな」クィンは不快感を示した。確かに妻はここを手放して欲しいと思っている。結婚を承諾させるために提案した条件のうちのひとつで、遠からず自分はそれを実行しなければならない。だがそれを他人に指摘されるいわれはない。

「失礼。ただ、あなたがここを手放そうとしている理由を知っていると言いたかっただけです。それで、俺に売る気はありますか?」まるで帽子でも買いに来た言い草だ。自室のようにゆったりとくつろぎ、グラスを口に運ぶ様は、立場が優位にあることを物語っている。

「君はここを買えるのか?」隣に座るアストンがいくらか出資するとしても、コートニーはいったいどこから資金を調達する気だろう。いくつかある住まいを売って、持ち株を処分する、あとは兄から借金をするとして、果たして経営を維持していけるだろうか。

プルートスの会員になるにあたって資産状況は報告させているが、もしかすると隠している財産があるのかもしれない。仮にあったとして、ここをこいつに明け渡すにはクリアすべき条件がまだいくつもある。

「言い値で買いますよ。俺が全額出してもいいですが、それだとあいつがあとからぶつくさ文句を言いそうなので、半々てところですかね。こいつもいくらでも出すでしょうし」コートニーは立てた親指をアストンに向けた。

あいつというのが最近一緒にここへ来ている、サミュエル・リードのことだとしたら、また少し違った展開になる。彼は一見すると賭け事には向いてなさそうに見えるが、カードの席に着かせると相手が泣いて降参するまで席を立たせない。それにいかさまを見抜く目も持っている。

彼とプルートスを賭けてひと勝負してみるのも面白いのかもしれない。それこそこのクラブの醍醐味と言うものだ。

つづく


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