はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 376 [花嫁の秘密]

「おい、いつまでそうしているつもりだ?」

エリックは腕を組み、サミーを冷ややかに見おろした。この一週間というもの、サミーはずっと居間のソファに座っているか横になっているか、何もしていないはずはないが、何かしている様子もない。

見張り役のブラックに聞いても、特に何もしていないと言うが、どうにも疑わしい。こうなったらさっさとブラックを向こうに押し付けて、こっちはカインを貰うか。

「ん?」気だるげに見上げるサミーは、エリックがそばに来ていたことにも気づいていなかったらしい。

「ん?じゃない、出掛けるから着替えろ」やれやれと息を吐き、手を差し出す。

「出掛けないよ」サミーはエリックの差し出した手を無視した。

エリックはソファの後ろをまわって、サミーの横に座った。ふわりと香る石鹸の香りに、この数日溜めている欲望が噴き出しそうになる。だがもうしばらくお預けだ。今夜はプルートスにクィンが来るという情報がある。買収の件を少しでも進めるためには、まず今夜会わなくてはならない。

「そう言わずに着替えろ。一人で無理なら手伝ってやるぞ」となると約束の時間に間に合いそうにないが。

「どこへ行こうとしているのか知らないけど、明日にはセシルが戻ってくるよ」サミーは両手の指を組み合わせ、腕を前に伸ばした。そのまま猫が伸びをするようにのけぞって、脱力した。このしなやかさがベッドの中で役立つ。

エリックは余計な考えを振り払い、目の前の会話に意識を戻した。「ハニーたちは無事列車に乗ったようだな。何度か乗り継ぎもあるし、向こうに着いてからが大変そうだが、危険から遠ざかることはできた」

「危険ね……彼女がいったい何を考えているのかさっぱりわからないよ」サミーはソファの背に寄りかかったまま、顔だけエリックの方に向けた。

「連絡を取っているのか?」いかにもな詰問口調になってしまった。それも仕方ない。サミーは情報をすべて寄越せと言いながら、自分は多くを打ち明けない。

サミーは肩をすくめる仕草をした。「いや、もう取らないと決めたからね」

ようやく言うことを聞く気になったか。この様子だと、向こうからもまだ連絡はなさそうだが、ジュリエットの事だ、サミーの方から何か言ってくるのを待っているのだろう。ラウールにもう少し頑張れと言っておいたから、このままあいつに任せて、サミーはこっちの問題に専念させよう。

「調査は進めているのか?」エリックは尋ねた。

「調査?ああ、彼の事ね。まだだよ。もし、彼がデレクたちと関係あるとして、プルートスに姿を見せたことがあるだろうか?僕は見た記憶がないけど、君は?」

「俺もないな。だが、無関係ではないだろうな。現にパーティーに招待されていたわけだし、どこかでつながってはいるはずだ」

「ブライアークリフ卿と何か繋がりがあるとしたら、金に関することかな。チャリティーイベントに招待される面々は金を出す者だけだろう?君も含めてね」招待された理由は君がよく知っているだろうと、サミーは意味ありげに言った。

息子はどうしようもないクズだが、父親の方はなかなかできた人間だ。人望もあるし、喜んで出資する者は大勢いる。だからこそ、ランフォード公爵が出資を見送ったことはショックだっただろう。

公爵とは面識はあるが、こちらが何か頼めるような人物ではない。ステフの口添えがなければ、彼は耳を貸すことはなかっただろう。次のロゼッタ夫人の誕生日会で会えたら、ぜひ直接礼を言いたい。

「それで、出掛ける気はあるのか。もしも嫌だというなら、俺も予定変更してお前の相手を存分にしてやるが」サミーがいつまでもぐずぐずするから、いっそこのまま、という欲望に負けてしまいそうになる。

「僕を赤ん坊か何かのように扱うのはやめてもらえるかな。まったく、着替えればいいのか?ブラックに手伝ってもらうけど、それで問題はないね」サミーはぷりぷりと言いながら立ち上がると、ひざ掛けを絨毯に落としたまま部屋を出て行った。

問題あるに決まってるだろうが。だがエリックがそう思ったところで、もう間もなくブラックはサミーの命令を聞くしかない立場になる。朝部屋に入って来てサミーを起こすところから始まり、着替えさせ――くそっ!そこまでするのは契約に入っていたか?

いまのうちに契約書を確認しておこう。問題があれば、こっちで勝手に書き換えるまでだ。

つづく


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