はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 374 [花嫁の秘密]
ラウンズベリー伯爵の本邸は小高い丘の上にあり、最寄りの駅へは南側の宿場町を通ることになる。けれども今回は迂回路を行くことになり、東の小さな集落を通過する。日が暮れる前にそこまで行き、北へ向かう。
目くらましで侯爵家の馬車をフェルリッジへ、伯爵家の馬車をアップル・ゲートへ、三台が時間差で出発する。
アンジェラがどこにいるのか知られないためだが、知られるのも時間の問題だろう。
クリスたちが行く道は、夜になれば明かりもなく真っ暗になる。そのためロジャーが前もって街灯を設置し、御者はその道を目を瞑っていても通り抜けられる者に頼んだ。信頼のおける人物で、急に早まった出発にもうまく合わせてくれた。
フェルリッジであの箱を受け取ってから二週間、とうとうクリスとアンジェラはラムズデンへと出発する。
「まさか本当にその格好で行くつもりか?」馬車の乗り換え地点まで同行したロジャーが、アンジェラのズボン姿を見て言う。
「そうよ。あっ……そうだよ」アンジェラは口元に手を当てて、それから声を作って言い直した。
「ハニー、無理しなくていいんだよ」クリスは変装自体は賛成だが、アンジェラが愛人セシルになるのにはあまり気が進まない。なぜよりによって兄の名前を?
「そうね。ここにはロジャー兄様とクリスしかいないものね」アンジェラは肩の力を抜いた。小さな馬宿を出発して駅に到着するまではクリスと二人、おそらく眠って過ごす。それから列車に乗ってしまえば、またクリスと二人きりだ。
「ハニー、あまりクリスを困らせるなよ。お前は侯爵夫人として、領民に会いに行くことを忘れるな」ロジャーは心配で胃がキリキリしていた。今後アビーをアンジェラに任せなければいけないことも、その一因だ。
「わかっているわ。これからのこともあるし、失敗しないようにするわ」アンジェラは兄の意をきちんとくみ取り答え、クリスに促されるように馬車に乗り込んだ。
クリスは扉を閉めてロジャーに向き直った。「ここまでしてくれて感謝する。向こうでの問題が片付き次第、またここへ戻る。その間に少しでも調査が進めばいいが、あの箱に関してわかることはもうないだろうな。だから聞く、ロジャーは犯人を知っているのか?」
箱を送った者のことではなく、アンジェラを襲った犯人のことだ。知っていて黙っているのは確実だが、言う気があるのか確かめたかった。この期に及んで黙っているとしたら、今後何度聞いても答えたりはしないだろう。
「犯人は死んだ。それ以上はわからない。だが今回のことがあの事件と関連があるとしたら、フェルリッジの酒場にいたという、見慣れない男を見つけ出すしかないだろうな」クリスを見てそう言い切ったロジャーは、一瞬たりとも目を逸らさなかった。
クリスはこれ以上の追及は諦めた。「それは手配済みだ。うまく見つかればいいが、まあ、とにかく行ってくる」
つづく
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目くらましで侯爵家の馬車をフェルリッジへ、伯爵家の馬車をアップル・ゲートへ、三台が時間差で出発する。
アンジェラがどこにいるのか知られないためだが、知られるのも時間の問題だろう。
クリスたちが行く道は、夜になれば明かりもなく真っ暗になる。そのためロジャーが前もって街灯を設置し、御者はその道を目を瞑っていても通り抜けられる者に頼んだ。信頼のおける人物で、急に早まった出発にもうまく合わせてくれた。
フェルリッジであの箱を受け取ってから二週間、とうとうクリスとアンジェラはラムズデンへと出発する。
「まさか本当にその格好で行くつもりか?」馬車の乗り換え地点まで同行したロジャーが、アンジェラのズボン姿を見て言う。
「そうよ。あっ……そうだよ」アンジェラは口元に手を当てて、それから声を作って言い直した。
「ハニー、無理しなくていいんだよ」クリスは変装自体は賛成だが、アンジェラが愛人セシルになるのにはあまり気が進まない。なぜよりによって兄の名前を?
「そうね。ここにはロジャー兄様とクリスしかいないものね」アンジェラは肩の力を抜いた。小さな馬宿を出発して駅に到着するまではクリスと二人、おそらく眠って過ごす。それから列車に乗ってしまえば、またクリスと二人きりだ。
「ハニー、あまりクリスを困らせるなよ。お前は侯爵夫人として、領民に会いに行くことを忘れるな」ロジャーは心配で胃がキリキリしていた。今後アビーをアンジェラに任せなければいけないことも、その一因だ。
「わかっているわ。これからのこともあるし、失敗しないようにするわ」アンジェラは兄の意をきちんとくみ取り答え、クリスに促されるように馬車に乗り込んだ。
クリスは扉を閉めてロジャーに向き直った。「ここまでしてくれて感謝する。向こうでの問題が片付き次第、またここへ戻る。その間に少しでも調査が進めばいいが、あの箱に関してわかることはもうないだろうな。だから聞く、ロジャーは犯人を知っているのか?」
箱を送った者のことではなく、アンジェラを襲った犯人のことだ。知っていて黙っているのは確実だが、言う気があるのか確かめたかった。この期に及んで黙っているとしたら、今後何度聞いても答えたりはしないだろう。
「犯人は死んだ。それ以上はわからない。だが今回のことがあの事件と関連があるとしたら、フェルリッジの酒場にいたという、見慣れない男を見つけ出すしかないだろうな」クリスを見てそう言い切ったロジャーは、一瞬たりとも目を逸らさなかった。
クリスはこれ以上の追及は諦めた。「それは手配済みだ。うまく見つかればいいが、まあ、とにかく行ってくる」
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2023-04-10 01:45
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