はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 372 [花嫁の秘密]
エリックは朝目覚めて、サミーの寝顔を好きなだけ眺めてから、その日の仕事に取り掛かる。
あいにく今朝はそうゆっくりとしていられず、出掛けたついでだと挨拶回りもして、屋敷に戻ったのはすっかり日も暮れた頃だった。
ブラックが報告に現れないということは、サミーは今日は余計なことはしてないということか。昨日の今日でジュリエットにメッセージでも送るかと思ったが、帰り際のあの様子からして、何か他に計画しているのかもしれない。勝手な行動を起こす前に少し話し合っておくか。
昨日の疲れが出て何もする気は起きないはずだと居間を覗いたら、案の定サミーはいつものソファにほとんど横になった状態で目を閉じていた。ティーカップから湯気があがっているところを見るに、眠ってはいないようだ。
「まさか一日そこにいたわけじゃないだろうな」エリックは決まり文句を口にした。
サミーがゆっくりと目を開ける。「ついさっき起きたばかりだ。君こそ新年早々どこへ?」起き上がってティーカップに手を伸ばした。
「挨拶回りだ」エリックは他に何があるとばかりに言い、同じくいつもの場所に腰を落ち着けた。「お前は挨拶回りしないのか?」
「それはクリスの仕事だ。それに父のせいで、いやおかげと言うべきかな、一族との付き合いもほとんどしなくていいからね」サミーはそう言ってゆったりとティーカップに口をつけた。半分ほど飲んで、元の場所に戻す。
クリスはそれどころではないだろうが、すべきことを怠ったりはしないはずだ。サミーの言うように任せておいて問題はないだろう。
「食事はしたのか?」つい気になって尋ねてしまう。ここにセシルがいればそんな心配しなくても済むが、戻るのはもう少し先だ。おかげで保護者のようにいちいち確認しなきゃならん。
「お腹が空いて目が覚めたからね。もう昼過ぎていたし一人だから残りものでいいと言ったけど、さすがにそうもいかなかったみたい。おかげで動くのが面倒になったよ」
しっかり食べたということか、それならいい。
「動かなくていい、しばらくはおとなしくしていろと言っただろう」
サミーは横目でエリックを見た。「二、三日はこうしている予定だけど、そのあとはちょっと調べ物をしようと思う」
「調べ物?どんな?」また余計なことじゃないだろうな。
「ブライアークリフ卿のパーティーで見かけた男、誰だかわかったから探ってみようかと」サミーは素直に答えた。
探るたって、どうするつもりだ?昨日クレインがもたらした情報の中に、その男のこともあったが、少々厄介な相手だ。サミーの手に負えるとは思えない。「その男の事ならこっちで調べるから手出しはいらない」
サミーが眉を吊り上げた。「君は僕を無能のように扱うけど、今回ばかりは一緒にことをすすめた方がいいと思うんだけど」声にはっきりと怒りを滲ませていた。ここで扱いを間違えると、かなり面倒だ。
「お前はあの男の事どこまで知っている?」
「どこまで?いまのところ、名前と出自くらいかな。怪しいと思っているけど、調べてみないことにはこれ以上の事はわからない。君が知っていることを教えてくれれば、話は早いんじゃないかな」サミーはふんぞり返って足を組んだ。まるで妥協するつもりはないと宣言しているようだ。
「こっちも調べを始めたばかりだ」正直言って、パーティー会場で一瞬見かけただけで、怪しいと考えたサミーの直感には恐れ入る。俺と同じ感覚を持っているとしたら、サミーの言うようにこれからは一緒に動いた方がいい。それに、その方がいちいち見張らなくて済む。
「それで?情報を共有する気はあるの?」腕を組んでつんと顎先を上げる。
どう考えてもこっちの足元を見ているとしか思えない。もしも断れば、いったいどんな仕返しがあるのか、考えたくもないが、選択の余地は残されていない。
「ああ、ある。だからお前も勝手な行動はするな」エリックは念を押したが、あまり期待はしていなかった。サミーの行動を制限するより、好きに動けるように後押しする方が容易い。
「勝手なのはそっちだけど、まあいいや」サミーはようやく納得したのか、再びリラックスした姿勢に戻り、テーブルの上の焼き菓子に手を伸ばした。
やれやれ、まるで子供みたいだ。ではまず、互いの情報を交換するとするか。
つづく
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あいにく今朝はそうゆっくりとしていられず、出掛けたついでだと挨拶回りもして、屋敷に戻ったのはすっかり日も暮れた頃だった。
ブラックが報告に現れないということは、サミーは今日は余計なことはしてないということか。昨日の今日でジュリエットにメッセージでも送るかと思ったが、帰り際のあの様子からして、何か他に計画しているのかもしれない。勝手な行動を起こす前に少し話し合っておくか。
昨日の疲れが出て何もする気は起きないはずだと居間を覗いたら、案の定サミーはいつものソファにほとんど横になった状態で目を閉じていた。ティーカップから湯気があがっているところを見るに、眠ってはいないようだ。
「まさか一日そこにいたわけじゃないだろうな」エリックは決まり文句を口にした。
サミーがゆっくりと目を開ける。「ついさっき起きたばかりだ。君こそ新年早々どこへ?」起き上がってティーカップに手を伸ばした。
「挨拶回りだ」エリックは他に何があるとばかりに言い、同じくいつもの場所に腰を落ち着けた。「お前は挨拶回りしないのか?」
「それはクリスの仕事だ。それに父のせいで、いやおかげと言うべきかな、一族との付き合いもほとんどしなくていいからね」サミーはそう言ってゆったりとティーカップに口をつけた。半分ほど飲んで、元の場所に戻す。
クリスはそれどころではないだろうが、すべきことを怠ったりはしないはずだ。サミーの言うように任せておいて問題はないだろう。
「食事はしたのか?」つい気になって尋ねてしまう。ここにセシルがいればそんな心配しなくても済むが、戻るのはもう少し先だ。おかげで保護者のようにいちいち確認しなきゃならん。
「お腹が空いて目が覚めたからね。もう昼過ぎていたし一人だから残りものでいいと言ったけど、さすがにそうもいかなかったみたい。おかげで動くのが面倒になったよ」
しっかり食べたということか、それならいい。
「動かなくていい、しばらくはおとなしくしていろと言っただろう」
サミーは横目でエリックを見た。「二、三日はこうしている予定だけど、そのあとはちょっと調べ物をしようと思う」
「調べ物?どんな?」また余計なことじゃないだろうな。
「ブライアークリフ卿のパーティーで見かけた男、誰だかわかったから探ってみようかと」サミーは素直に答えた。
探るたって、どうするつもりだ?昨日クレインがもたらした情報の中に、その男のこともあったが、少々厄介な相手だ。サミーの手に負えるとは思えない。「その男の事ならこっちで調べるから手出しはいらない」
サミーが眉を吊り上げた。「君は僕を無能のように扱うけど、今回ばかりは一緒にことをすすめた方がいいと思うんだけど」声にはっきりと怒りを滲ませていた。ここで扱いを間違えると、かなり面倒だ。
「お前はあの男の事どこまで知っている?」
「どこまで?いまのところ、名前と出自くらいかな。怪しいと思っているけど、調べてみないことにはこれ以上の事はわからない。君が知っていることを教えてくれれば、話は早いんじゃないかな」サミーはふんぞり返って足を組んだ。まるで妥協するつもりはないと宣言しているようだ。
「こっちも調べを始めたばかりだ」正直言って、パーティー会場で一瞬見かけただけで、怪しいと考えたサミーの直感には恐れ入る。俺と同じ感覚を持っているとしたら、サミーの言うようにこれからは一緒に動いた方がいい。それに、その方がいちいち見張らなくて済む。
「それで?情報を共有する気はあるの?」腕を組んでつんと顎先を上げる。
どう考えてもこっちの足元を見ているとしか思えない。もしも断れば、いったいどんな仕返しがあるのか、考えたくもないが、選択の余地は残されていない。
「ああ、ある。だからお前も勝手な行動はするな」エリックは念を押したが、あまり期待はしていなかった。サミーの行動を制限するより、好きに動けるように後押しする方が容易い。
「勝手なのはそっちだけど、まあいいや」サミーはようやく納得したのか、再びリラックスした姿勢に戻り、テーブルの上の焼き菓子に手を伸ばした。
やれやれ、まるで子供みたいだ。ではまず、互いの情報を交換するとするか。
つづく
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2023-04-08 01:18
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