はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 370 [花嫁の秘密]

「お母様は子供っぽいって言うけど、わたしもクリスもこのドレス好きなの」

朝食がすむと、アンジェラとセシルは新年を祝う特別なケーキを食べるため、女性用の居間に場所を移した。白い家具に上品な椅子、花柄のソファ、そして何よりここを女性的にしている撫子色の壁紙は、先代の伯爵が最愛の妻のために選んだものだ。

六代目ラウンズベリー伯爵レイモンド・コートニーはアンジェラが生まれる前に亡くなった。

だからアンジェラは絵の中の父の姿しか知らない。一番のお気に入りは図書室に飾られている。真面目な顔をしていても、どこか微笑んでいるように見えるのだ。そしてどことなしか、次男のエリックに似ている。

「その赤いタータンチェックのドレス?まあ、母様の言うこともわかるかな。だって侯爵夫人はあまりそういうの着ないものでしょ?でもハニーはまだ子供だからいいんじゃない」セシルは女性のドレスの問題よりも、特別ケーキの方に興味を持っていかれている。

見た目は普通のヴィクトリアケーキと変わらないように見えるけど、はみ出るほどたっぷりと挟まれているクリームは、まるで裏庭に積もった新雪のようだ。赤いベリーのジャムとのコントラストは素晴らしい。

「ねえ、どうしてこのケーキは特別なのかしら?」二人はケーキを目の前に考え込んだ。

「一年に一度だけ登場するとか?」セシルが言った。

「それなら、特別ね」アンジェラは考えるのをやめた。

「アビーはまだかな?」セシルが焦れたように言う。女性を――特に兄の婚約者――を差し置いて、ケーキにフォークを突き刺すほど無神経ではない。なぜなら女性の怖さは嫌というほど知っているから。

「お母様に捕まっていたから、しばらくは来られないと思うの。だから食べてしまわない?もちろんひと切れずつよ」お母様はあまりアビーにかまったりしないと思っていたのに、違ったみたい。もしかすると、わたしが男だと知ってしまったから?

「そうだね」そうとなればセシルの動きは早い。皿を二枚並べ、手際よくケーキサーバーでひと切れずつ盛る。フォークを乗せてそれぞれの前に置かれた時には、紅茶も準備万端整っていた。

しばらく二人は無言でケーキを味わった。さすが特別と名の付くだけあって、ほっぺたが落ちるほど美味しかった。

「そういえば、アビーにはもう秘密を打ち明けたの?」セシルはケーキスタンドのケーキに目をやりながら尋ねた。ひと切れなんて全然足りないと、じっとりとした目つきで訴える。

「まだよ。お母様がもう少し待ちなさいって言うの。ロジャー兄様とあと半年で結婚するのに、いったいいつならいいのかしら?」アビーは秘密を知っても婚約破棄はしないはず。だからいつでも話せるように、心の準備はしている。

「まあ、母様も知ったばかりでまだ混乱しているからね。それにここへ来ることになった理由も理解できる範疇を超えている。ハニーが命を狙われる理由が秘密にあると思ってるみたいだし、いまのところその可能性だってないわけじゃないしね」

セシルは我慢できず、二切れめのケーキに手を伸ばした。アンジェラもつられて皿を差し出した。

「セシルもまだわたしの命が狙われていると思っているの?でも、いったい誰が何のために?」

「よくわからないけど、犯人がまだ諦めていないからあれを贈って来たんじゃない?」セシルは自分がここへ来た目的を思い出したのか、険しい顔つきになった。

「ふーん。そうかしら」アンジェラはいまはもう手元にない箱の事を考えた。調査すると言って持って行ってしまったけど、いったい何をどうやって調べるの?それとももう犯人はわかっているから、裏付けを取るだけ?

セシルも知っているのに黙っている。誰も教えてくれないからこそ、ロイに会いに行きたかったのに。メグは会ってもわからないままだと考えているようだけど、わたしはそうは思わない。あれから時間が経ってロイも何か思い出しているはず。

でも会いに行くのもしばらくはお預け。あと数日したら、クリスと二人でラムズデンへ向かう。旅はそんなに大変ではないらしいけど、クリスはずっとピリピリしている。夜暗いうちに逃げるようにここを出発する計画を、クリスとロジャー兄様とで立てている。

安全策を取るのはアンジェラも理解できた。だから、アンジェラなりに協力するつもりだ。

髪を切ったのも、そのためだ。

つづく


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