はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 369 ~第十部~ [花嫁の秘密]

息苦しい。まるで身体を押し潰されているかのよう。身動きが取れず、叫び声さえ出せない。寒くて歯がカチカチと鳴る。もしかして、わたしは裸なの?

アンジェラを恐怖が襲う。あの男が戻って来たのだ。

たすけて、たすけ……て。喉がヒリヒリしてどうやっても声が出ない。どうしよう。

「ハニー!起きるんだ――」

クリス?そこにいるの?

アンジェラは差し出された手をどうにか掴んだ。掴んだその手に手首をしっかり掴まれて引き上げられる。おそるおそる目を開けると、目の前には心配そうに顔を覗き込んでいるクリスがいた。

「わたし――」

クリスが指先でそっと頬に触れた。「夢を見ていたんだ。悪い夢を」

夢?アンジェラは目をしばたたかせ、それからクリスに抱きついた。しばらくは平気だったのにどうしてまた。

もちろん完全に忘れられるわけではない。けど思い当たることがあるとすれば、一週間前届いたあのクリスマスプレゼントのせいだ。クリスに見てはいけないと言われたけれど、確かめずにはいられなかった。

実際見てみたら、なんてことない物だった。

ナイフは確かに物騒だったけど、血のようなものがついたハンカチは自分の物ではなかったし、たいして意味があるとは思えなかった。脅しと言われればそうなのかもしれない。翌日にはセシルがリックの派遣した調査員と一緒にフェルリッジにやって来て、結局家族はランズベリーの本邸に集うことになった。リックとサミーを除いて。

「おはようクリス」努めて何でもないふうを装って言った。いまさら遅いかもしれないけど。

「おはよう、ハニー」クリスは震える声でそう言って、アンジェラの額に口づけた。「どうも慣れないな」口づけたまま言う。

「ベッドが違うから?」

「いや、ハニーの髪が短くなったこと」

腰の辺りまであった髪は背中が半分隠れるくらいまで短くなった。クリスは反対したがアンジェラは切ると言ってきかなかった。マーサはアンジェラがどういう目的で切ろうとしているのか薄々気づいていても、あえて口出しはしなかった。

「気に入らない?リックみたいになっちゃったから」アンジェラが参考にしたのは、まさにエリックだ。紐で適当に縛って、男性用の帽子を頭に乗せれば、簡単に変装できる。

アンジェラにとって男装は難易度が高く、どうすればそれらしく見えるかメグとアイデアを出し合った。

「いや、そんなことはない。ついでに言えば、ハニーの髪がエリックと同じくらいの長さになったとしても、エリックみたいにはなっていない」クリスはとにかく否定した。一瞬でもエリックとアンジェラを重ねたくないらしい。

「よく似てるって言われるわ」きっと目の色が同じだから。髪の色も同じだけど、実際は少し違う。

「もちろん、似ている。けど、それとこれとは違うんだ」クリスはむっつりと言った。

なんだかよくわからないけど、違うのね。アンジェラはひとりごちた。

「朝から今日は忙しいみたいだけど、わたしたちはゆっくりしていていいのよね」ここではアンジェラもクリスもただのお客様で、屋敷の中を切り盛りする必要もない。ただ、仕切るのがソフィアなので多々不安はある。

「ああ、私たちは余計なことをしないのが一番だ。時間になればメグが来るから、それまではベッドでゆっくりしていよう」

アンジェラは賛成とばかりに、クリスの胸に顔をうずめた。

つづく


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