はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 368 [花嫁の秘密]
サミーとエリックがリード邸に戻ったのは午前三時を過ぎた頃だった。
玄関広間で出迎えたプラットは仮眠を取っていたらしく、いつもよりも気の抜けた顔をしていた。
「僕はこのまま部屋に行くよ。君はブラックから報告を受けるんだろう?プラット、お前はもう休め。あとはこっちでするから」
プラットは一瞬躊躇いを見せたものの、サミーの言葉に従った。どちらにせよもう二時間もすれば、新しい年の朝の支度が始まる。主人が遅く戻ったからといって、この屋敷のサイクルが変わるわけではない。
「ブラックは何かお前に言ったか?」エリックは階段を上がろうとするサミーの手首を掴んだ。
サミーはゆるりと振り返りエリックと目を合わせた。ブラックに言われてまずいことでもあるのだろうか。いや、おそらくまずいことだらけだろう。僕がアンジェラやセシルのように食い下がるタイプではなくて感謝することだ。
「余計なことは喋らないから君の下についているんだろう?」そんな貴重な男を僕は横取りした。まだ正式には僕のものではないけど。
「サミー、あとで部屋に行く」エリックは溜息を吐きたそうにしながらも、それを飲み込み言った。
「お好きにどうぞ」
エリックはサミーから手を離し、一歩下がった。あまりに無表情で考えを読み取れなかったが、いまの返事に満足してないように見えた。
ではどう言えばよかった?エリックはここが他人の屋敷だろうが関係なく振舞い、自分の手下も潜り込ませている。僕たち――リード家とコートニー家――の関係を思えば、そんなことする必要はないのに。
エリックのせいで僕がいかに無能で滑稽かを思い知らされる。いつも冷静でいようと努めているのに、時々感情が暴走してしまうのもそのせいだ。
今回のアンジェラの事件についてすべてを共有するのは無理なのか?僕の動きを裏で封じたりしなくてもいいように、二人で計画を立てて実行し、ジュリエットに相応の罰を受けさせる。エリックは僕の協力などいらないと思っているだろうけど、もうそういう時期は過ぎている。
ラウールという男の登場でひとつわかったのは、ジュリエットはただ単に地位や金だけで相手を選ばないということだ。これは最初からわかりきっていたが、彼女が執着しているのはあくまでクリスで、アンジェラなのだ。だから僕は必要だということをエリックが理解してくれれば、この先うまく計画が進められる。
自分の部屋に入ると、ホッとして膝の力が抜けた。上着を椅子の背に掛けて、暖炉の前の安楽椅子に深々と座り、目を閉じた。ブラックはいったいどんな報告をするのだろう。そもそもそんなに報告するようなことあるだろうか。ジュリエットとラウールの見張りをしていたわけではなさそうだし――そもそも彼は僕を見張るためにいる。
このまま眠ってしまいそうだと思いながら、袖口のカフスボタンをはずした。その辺に投げてもよかったが、それを拾う手間を考えて手元の小さな丸い台に置いた。
とにかく新しい年を迎えた。目が覚めたらすべて思い通りに事が運ぶはずだと期待しながら、サミーは夢の中に落ちていった。
つづく
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玄関広間で出迎えたプラットは仮眠を取っていたらしく、いつもよりも気の抜けた顔をしていた。
「僕はこのまま部屋に行くよ。君はブラックから報告を受けるんだろう?プラット、お前はもう休め。あとはこっちでするから」
プラットは一瞬躊躇いを見せたものの、サミーの言葉に従った。どちらにせよもう二時間もすれば、新しい年の朝の支度が始まる。主人が遅く戻ったからといって、この屋敷のサイクルが変わるわけではない。
「ブラックは何かお前に言ったか?」エリックは階段を上がろうとするサミーの手首を掴んだ。
サミーはゆるりと振り返りエリックと目を合わせた。ブラックに言われてまずいことでもあるのだろうか。いや、おそらくまずいことだらけだろう。僕がアンジェラやセシルのように食い下がるタイプではなくて感謝することだ。
「余計なことは喋らないから君の下についているんだろう?」そんな貴重な男を僕は横取りした。まだ正式には僕のものではないけど。
「サミー、あとで部屋に行く」エリックは溜息を吐きたそうにしながらも、それを飲み込み言った。
「お好きにどうぞ」
エリックはサミーから手を離し、一歩下がった。あまりに無表情で考えを読み取れなかったが、いまの返事に満足してないように見えた。
ではどう言えばよかった?エリックはここが他人の屋敷だろうが関係なく振舞い、自分の手下も潜り込ませている。僕たち――リード家とコートニー家――の関係を思えば、そんなことする必要はないのに。
エリックのせいで僕がいかに無能で滑稽かを思い知らされる。いつも冷静でいようと努めているのに、時々感情が暴走してしまうのもそのせいだ。
今回のアンジェラの事件についてすべてを共有するのは無理なのか?僕の動きを裏で封じたりしなくてもいいように、二人で計画を立てて実行し、ジュリエットに相応の罰を受けさせる。エリックは僕の協力などいらないと思っているだろうけど、もうそういう時期は過ぎている。
ラウールという男の登場でひとつわかったのは、ジュリエットはただ単に地位や金だけで相手を選ばないということだ。これは最初からわかりきっていたが、彼女が執着しているのはあくまでクリスで、アンジェラなのだ。だから僕は必要だということをエリックが理解してくれれば、この先うまく計画が進められる。
自分の部屋に入ると、ホッとして膝の力が抜けた。上着を椅子の背に掛けて、暖炉の前の安楽椅子に深々と座り、目を閉じた。ブラックはいったいどんな報告をするのだろう。そもそもそんなに報告するようなことあるだろうか。ジュリエットとラウールの見張りをしていたわけではなさそうだし――そもそも彼は僕を見張るためにいる。
このまま眠ってしまいそうだと思いながら、袖口のカフスボタンをはずした。その辺に投げてもよかったが、それを拾う手間を考えて手元の小さな丸い台に置いた。
とにかく新しい年を迎えた。目が覚めたらすべて思い通りに事が運ぶはずだと期待しながら、サミーは夢の中に落ちていった。
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2023-04-01 15:19
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