はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 367 [花嫁の秘密]

「ビー、先に馬車に乗ってろ」

エリックはサミーの姿を見とめて、すぐに様子がおかしいことに気づいた。待ち伏せていたクレインの用件はたいしたことではなかったが、数日以内に動きを見直す必要はありそうだった。

人の流れに逆らうようにして、二人に近づく。ジュリエットは喋っていたが、あの顔だとおそらくサミーの耳には届いていない。いったい何があった?

「サミー!ここだ」軽く手を上げて、名前を呼ぶ。サミーはハッとしたように焦点を合わせて、ようやくこちらに気づいた。ジュリエットは途端に苦い顔をしている。

「そんな大きな声を出さなくても、自分の馬車くらい見ればわかる」可愛げのない返事だが、ホッとしているのがわかった。だからジュリエットなんかと関わるなと言ったのに、言うことを聞かないからこうなる。何があったにせよ、次はもうない。

「自分の馬車ね。これはクリスのだ」そう言った途端、なぜかジュリエットに睨まれた。クリスの名前は聞きたくないということか?

「はいはい。君とここでこの馬車の権利について話してもいいけど、彼女はすっかり冷え切っている。続きは中でいいかな」ジュリエットの背中に手を添え、馬車へと促す。さりげない仕草は親密そうに見える一方、自分のそばから追い払いたそうにも見えた。

ジュリエットはぐずぐずせず、従僕の手を借りて事前に暖められた車内へと消えた。

従僕に扉を閉めるように言い、サミーの腕を取って馬車と馬車の間に引き込んだ。「サミー大丈夫か?」耳元で囁くように尋ねる。ずいぶん顔色が悪い。エリックはサミーの血の気の引いた頬に触れたい衝動を何とか抑え、周囲に目を配った。

「平気だ」頷きながら呟くように返事をしたサミーの声はわずかに震えていた。

どこが平気なもんか。だからやめておけと言ったんだ。このあと何かする気だったとしても、今夜はもう終わりだ。

「帰るぞ」

どんな反論も受け付けない。ジュリエットとメリッサをホテルに送り届けて、寄り道せずに帰る。いまエリックにできることはこれしかない。

「ああ、そうだな」サミーはうわの空で答え、エリックから逃れるようにして馬車に乗り込んだ。

足取りはしっかりしているから体調が悪いわけではなさそうだ。サミーの機嫌がころころ変わるのはいつもの事だが、おかげでこっちはそわそわと落ち着かない。

帰りの車内は静かだった。夜遊びに慣れているジュリエットでさえ、時折サミーに囁きかけていた以外は眠たそうにしていた。連日パーティー続きで疲れが出たのかもしれないし、ただサミーに寄りかかる口実だったのかもしれない。

目の前の俺たちはいないも同然ってわけだ。エリックは苦々しげに、サミーに触れているジュリエットの指先を睨みつけた。二度も結婚をしたジュリエットに乙女のような恥じらいを求めるのは愚かしいが、こうも堂々と誘いをかけるような真似をするとはね。恐れ入る。

サミーはジュリエットの意図に気づいていても、あえて気づかないふりをしている。次の約束はもうしたのだろうか?まだだとしたら、ジュリエットはさぞかし焦っているだろう。狙う相手をラウールに変更してくれれば面倒が少なくて済むが、この様子だとまだまだサミーを諦めるつもりはないようだ。

帰宅して、サミーと話ができるかどうか。さっきの状態だと余計な口出しをするなと、聞く耳を持ちそうにない。仕方ない。ブラックに訊くとするか。

もう少しでサミーの側につくが、いまはまだ俺の手駒だ。すべて報告してもらう。

つづく


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