はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 363 [花嫁の秘密]
「行かせていいの?」夜空を見上げていたメリッサはいたずらっぽい視線をエリックに向けた。追いかけるならいまよ、とでも言いたげに。
「好きにさせておけ。あいつはこうと決めたら聞きやしない。ったく、腹の立つ」エリックは舌打ちをしてサミーが歩き去った方を見た。すでに姿はないが、どこへ向かったかはわかっている。追ってもいいが、それはあまりにも無駄な行為だ。
「彼女を誰に任せたの?サミーと取り合いになったりしなければいいけど。花火はもう終わりかしら?」メリッサは上を見るのをやめて、ほっとひと息吐いた。「案外あっけないものね」
次の花火がなかなか上がらず、観衆がざわついてきた。終わりなら終わりで合図でもあればいいが、おそらくそんなものはない。
「取り合う価値もないが、しないとも言い切れないな。相手はラウールだ」面倒だから指示は最低限しかしていないが、ラウールも誰を相手にしているのかぐらいわかっているから無茶はしないだろう。
「まあ。人たらしのラウールね。確かに彼は魅力的だけど、彼女にはちょっと子供っぽくないかしら?」
確かにビーの言うようにラウールは子供っぽいところがある。それは気心の知れた相手だからこそで、仕事をしている時はそれなりに見える。
「お前から見たら演技力はまだまだだろうな。けど、そういう抜けがある方が魅力的に見えるもんだ。ディナーでは手ごたえがあったようだし、しばらく任せてみようと思う」今夜束の間でもサミーからジュリエットを奪うことに成功したのだ。充分実力を発揮出来ている。
「サミーにはちゃんと話をしているの?彼に黙っているのはフェアではないわ」メリッサは腕を解き、エリックに向き直った。やり方に不満があるらしい。
「帰ったら話す。話しておかないとうるさいからな」どちらにしても、先に話しておかなかったせいでひどく腹を立てるだろう。素直にすべてを任せればいいものを、どうしてこうも突っかかるような真似をするのだろうか。俺がここまでする理由はわかっているだろうに。
「戻ってくるかしら?」
いったい誰を心配しているのか、俺の事ではないのは確かだろう。
「さあな。待っていろとは言わなかったから、帰るか?ぼやぼやしていると身動き取れなくなるぞ」ここで突っ立ったままサミーを待つほど間抜けなことはない。
「もう遅いのではないかしら?人の流れが出来始めているわ。でも、ここにじっとしているわけにもいかないわね。とても寒いもの」メリッサはその場で足踏みをした。湿気を帯びた冷気が足元から這い上がってきている。
「馬車まで先に戻っておくか。サミーもすぐに来るはずだ」エリックはその場でぐずぐずせずに歩き出した。ブラックが後を追ったから、うまく連れ戻してくるだろう。近くまで馬車を回しておけば、暖かで居心地のいい場所へさっさと戻れる。
「エリック、あなた本当に変わったわね」メリッサは横に並びエリックを見上げしみじみと言う。
「何がだ?」色々心当たりはあったが、素知らぬふりをした。いまサミーの事であれこれ突っ込まれたくない。
幸いメリッサはそれ以上何も言わなかった。
つづく
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「好きにさせておけ。あいつはこうと決めたら聞きやしない。ったく、腹の立つ」エリックは舌打ちをしてサミーが歩き去った方を見た。すでに姿はないが、どこへ向かったかはわかっている。追ってもいいが、それはあまりにも無駄な行為だ。
「彼女を誰に任せたの?サミーと取り合いになったりしなければいいけど。花火はもう終わりかしら?」メリッサは上を見るのをやめて、ほっとひと息吐いた。「案外あっけないものね」
次の花火がなかなか上がらず、観衆がざわついてきた。終わりなら終わりで合図でもあればいいが、おそらくそんなものはない。
「取り合う価値もないが、しないとも言い切れないな。相手はラウールだ」面倒だから指示は最低限しかしていないが、ラウールも誰を相手にしているのかぐらいわかっているから無茶はしないだろう。
「まあ。人たらしのラウールね。確かに彼は魅力的だけど、彼女にはちょっと子供っぽくないかしら?」
確かにビーの言うようにラウールは子供っぽいところがある。それは気心の知れた相手だからこそで、仕事をしている時はそれなりに見える。
「お前から見たら演技力はまだまだだろうな。けど、そういう抜けがある方が魅力的に見えるもんだ。ディナーでは手ごたえがあったようだし、しばらく任せてみようと思う」今夜束の間でもサミーからジュリエットを奪うことに成功したのだ。充分実力を発揮出来ている。
「サミーにはちゃんと話をしているの?彼に黙っているのはフェアではないわ」メリッサは腕を解き、エリックに向き直った。やり方に不満があるらしい。
「帰ったら話す。話しておかないとうるさいからな」どちらにしても、先に話しておかなかったせいでひどく腹を立てるだろう。素直にすべてを任せればいいものを、どうしてこうも突っかかるような真似をするのだろうか。俺がここまでする理由はわかっているだろうに。
「戻ってくるかしら?」
いったい誰を心配しているのか、俺の事ではないのは確かだろう。
「さあな。待っていろとは言わなかったから、帰るか?ぼやぼやしていると身動き取れなくなるぞ」ここで突っ立ったままサミーを待つほど間抜けなことはない。
「もう遅いのではないかしら?人の流れが出来始めているわ。でも、ここにじっとしているわけにもいかないわね。とても寒いもの」メリッサはその場で足踏みをした。湿気を帯びた冷気が足元から這い上がってきている。
「馬車まで先に戻っておくか。サミーもすぐに来るはずだ」エリックはその場でぐずぐずせずに歩き出した。ブラックが後を追ったから、うまく連れ戻してくるだろう。近くまで馬車を回しておけば、暖かで居心地のいい場所へさっさと戻れる。
「エリック、あなた本当に変わったわね」メリッサは横に並びエリックを見上げしみじみと言う。
「何がだ?」色々心当たりはあったが、素知らぬふりをした。いまサミーの事であれこれ突っ込まれたくない。
幸いメリッサはそれ以上何も言わなかった。
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2023-03-23 11:34
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