はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
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花嫁の秘密 362 [花嫁の秘密]

いつまでもこうしていたいと思ったのは、初めてではないけど、もういつの事だったか思い出せないほど記憶にない。

頬の産毛が逆立つほどピリピリとした視線を感じながら、新しい年を祝う花火に魅入っていた。と同時に、混雑する前に帰ることは可能だろうかと、考えを巡らせていた。

答えはわかりきっている。もちろん不可能だし、何よりジュリエットをこのままにはしておけない。エリックは放っておけと言うが、僕にはそんなことできない。

サミーはそっとメリッサの腕を解き、エリックの背後にまわった。「ジュリエットを迎えに行ってくる」耳打ちをし、止められる前に大股で歩き去る。戻ってくるまでエリックがこの場にいるかどうかは重要ではない。帰りたければ帰ればいいし、イベントが終わって再び人々が動き始めてしまえば、もう出会えないかもしれない。

馬車は降りた場所付近で待機させている。公園の入り口には従僕がいるし、何かあれば伝言するだろう。

結局ラウールについて聞けずじまいだ。でも、あの言い方からすれば、エリックが仕込んだことは間違いない。ジュリエットが僕よりあの若い男を選んで当然だと思っていたようだけど、その気になれば僕だって彼女を夢中にさせることはできる。けど、そうなっては困るからうまく加減をしているというのに、まるで僕に魅力がないような口振り。本当に腹が立つ。

公園は何時まで開放しているのだろう。今夜ひと晩開けっ放しということはないだろうけど、イベントが終わってすぐに閉鎖することはしないだろう。

こうやって人混みを一人で歩いていると、フェルリッジの屋敷を抜け出してロンドンへ出ていた頃を思い出す。伯母の家に泊めてもらったり、叔父にクラブに連れて行ってもらったりと父に内緒でみんなよくしてくれた。不憫に思っていたのは明らかだけど、それでも味方がいるのは心強かった。

いったいラウールはどこにいるのだろう。友人が場所取りをしていると言っていたが、どんなやつか聞いておけばよかった。ジュリエットの襟巻を目印に探してみるが、人があちこち動いていると案外目立たないものだ。

「サミュエル様、右手の奥の所です」ふいに斜め後ろから声を掛けられ、サミーは驚いて亀みたいに首をすくめた。ゆっくりと首を伸ばし、後ろに目をやる。「どうしてお前がここに?」

そんなこといちいち聞きますかというように、ブラックは不遜に片眉を吊り上げた。

「もういい、どうせエリックに命じられたからだろう?まだ僕の従者ではないからね」どちらにしても僕につけるなら、さっさと譲ればいいものを。「それで?ジュリエットはどうしてる」前を向き歩きながら尋ねる。

「さあ、場所の確認しかしていないのでわかりません」素っ気ない返事。ジュリエットに興味がないのは仕方ないにしても、もっと言い方があるだろうに。僕の従者になれば、態度も変化するだろうか。

「ということは、僕は向こうで何が待ち受けているかもわからず突っ込んでいくわけか」このまま回れ右をして引き返したいところだけど、とにかくジュリエットをホテルまで送り届ける義務はラウールではなく僕にある。そのあとは好きにすればいい。

エリックの言うように、ジュリエットなどくれてやる。彼女は恋人でもなんでもなく、アンジェラに害をなすただの仇でしかないのだから。

つづく


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