はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 345 [花嫁の秘密]
サミーの面白いところは、自分が周りからどう思われているか全く気づいていないところだ。
おそらく自分では馴染めていると思っているのだろうが、ティールームの隅で紳士が一人でケーキを食べている姿がありふれた光景だとでも?好奇心いっぱいにサミーを見つめるご婦人方の中には、自分の娘の相手にどうだろうかと考えている者もいれば、自分の愛人にと思っている者もいる。
そんな中にいつまでも放置しておくほど、俺は寛大な心は持ち合わせていない。
エリックは帽子をひとつ購入し、サミーが姿を見せるのを辛抱強く待った。あの給仕が俺の伝言を正しく伝えていればもう間もなくやってくるだろう。もちろん逃げ出さなければの話だが、残念ながら出口はすでに押さえている。
「君の用事は済んだのか?」すっと隣に立ったサミーが言う。
「まあね。お前の荷物にチョコレートも紛れ込ませておいた。二日もあれば向こうに届くだろうが、寒い時期でよかったな」
サミーは購入したものを直接ラウンズベリー邸に届けるように手配していた。婦人ものの手袋や帽子、ショール、それにハンカチ等々。気前のいいことに向こうにいる女性みんなに贈り物をするらしい。
母様やマーサはいいとして、アビーに贈り物をしてロジャーが嫉妬しなきゃいいが。
「<デュ・メテル>に行ったのか?」サミーは感嘆の表情でようやくこちらを見た。店を無理やり開けさせたと責めるかと思ったが、素直に喜んでいるのを見ると少し無理をした甲斐もある。
「ああ、閉まっていたが、裏口からちょっとね。いいから帰るぞ」見送ろうとする帽子売り場の担当に礼を言って、サミーと一緒に店を出た。一旦戻って、まずは食事だ。サミーはいったいいつになったらまともに食事をする気になるのやら。
これならジュリエットとディナーに行かせた方がよかった。さすがに外での食事でケーキばかり食べたりはしないだろうから。
通りで馬車を拾い乗り込むと、向かいに座るサミーに買った帽子を差し出した。気に入るか入らないかは別として、反応は見たい。
「開けてみろ」
「いまここで?包みを破れと?」サミーは警戒するようにエリックを見た。外出の邪魔をされて不機嫌そうだ。
「別に帰ってからでもいいが、戻ったらすることがある」
「することね……。僕もちょうど話があるんだ」サミーはそう言いながら、百貨店のロゴ入りの包装紙を開けて、中の帽子を取り出した。
「耳当て付きの帽子だ。夜は冷えるからかぶって行け」エリックは気もそぞろに言った。話ってなんだ?まさかもう一緒には寝たくないとか言う気じゃないだろうな。
「子供がかぶる帽子じゃないか」サミーはもこもこの耳当て部分を左右に引っ張りながら言った。
そんなに不満がることもないだろうに。ちょっともこもこしすぎているが、これでも紳士用だし、かぶっているやつもそこそこ見かける。何よりあの販売員がこれがいいと勧めた。
「お前にぴったりだ」
サミーは帽子を包みの中にきれいに戻すと、脇にそっと置いた。ハニーの手紙のように大事に抱えたりはしないわけか。
「それで、話っていうのは?」沈黙に耐え切れず、エリックは尋ねた。
「もうすぐ屋敷に着く。それまで待てないのか?」
「あと五分はかかる。それだけあれば話せるだろう?」
サミーは大袈裟に溜息を吐いて、不本意さを主張した。「ブラックの契約書を作るのを手伝って欲しいんだ。ここで話す内容じゃないだろう?」
「ブラックを渡すのはもう少し先だぞ」それよりも、わざわざ契約書とはね。ブラックが細かく読んでまでサインするとも思えないが、こういうところがサミーらしい。
「準備をしておいて何が悪い?」
「いいや。手伝ってやる」ついでにカインのことも話すことにしよう。了承を得なきゃあの従僕は首を縦に振らないだろう。なかなかできた使用人だ。
つづく
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おそらく自分では馴染めていると思っているのだろうが、ティールームの隅で紳士が一人でケーキを食べている姿がありふれた光景だとでも?好奇心いっぱいにサミーを見つめるご婦人方の中には、自分の娘の相手にどうだろうかと考えている者もいれば、自分の愛人にと思っている者もいる。
そんな中にいつまでも放置しておくほど、俺は寛大な心は持ち合わせていない。
エリックは帽子をひとつ購入し、サミーが姿を見せるのを辛抱強く待った。あの給仕が俺の伝言を正しく伝えていればもう間もなくやってくるだろう。もちろん逃げ出さなければの話だが、残念ながら出口はすでに押さえている。
「君の用事は済んだのか?」すっと隣に立ったサミーが言う。
「まあね。お前の荷物にチョコレートも紛れ込ませておいた。二日もあれば向こうに届くだろうが、寒い時期でよかったな」
サミーは購入したものを直接ラウンズベリー邸に届けるように手配していた。婦人ものの手袋や帽子、ショール、それにハンカチ等々。気前のいいことに向こうにいる女性みんなに贈り物をするらしい。
母様やマーサはいいとして、アビーに贈り物をしてロジャーが嫉妬しなきゃいいが。
「<デュ・メテル>に行ったのか?」サミーは感嘆の表情でようやくこちらを見た。店を無理やり開けさせたと責めるかと思ったが、素直に喜んでいるのを見ると少し無理をした甲斐もある。
「ああ、閉まっていたが、裏口からちょっとね。いいから帰るぞ」見送ろうとする帽子売り場の担当に礼を言って、サミーと一緒に店を出た。一旦戻って、まずは食事だ。サミーはいったいいつになったらまともに食事をする気になるのやら。
これならジュリエットとディナーに行かせた方がよかった。さすがに外での食事でケーキばかり食べたりはしないだろうから。
通りで馬車を拾い乗り込むと、向かいに座るサミーに買った帽子を差し出した。気に入るか入らないかは別として、反応は見たい。
「開けてみろ」
「いまここで?包みを破れと?」サミーは警戒するようにエリックを見た。外出の邪魔をされて不機嫌そうだ。
「別に帰ってからでもいいが、戻ったらすることがある」
「することね……。僕もちょうど話があるんだ」サミーはそう言いながら、百貨店のロゴ入りの包装紙を開けて、中の帽子を取り出した。
「耳当て付きの帽子だ。夜は冷えるからかぶって行け」エリックは気もそぞろに言った。話ってなんだ?まさかもう一緒には寝たくないとか言う気じゃないだろうな。
「子供がかぶる帽子じゃないか」サミーはもこもこの耳当て部分を左右に引っ張りながら言った。
そんなに不満がることもないだろうに。ちょっともこもこしすぎているが、これでも紳士用だし、かぶっているやつもそこそこ見かける。何よりあの販売員がこれがいいと勧めた。
「お前にぴったりだ」
サミーは帽子を包みの中にきれいに戻すと、脇にそっと置いた。ハニーの手紙のように大事に抱えたりはしないわけか。
「それで、話っていうのは?」沈黙に耐え切れず、エリックは尋ねた。
「もうすぐ屋敷に着く。それまで待てないのか?」
「あと五分はかかる。それだけあれば話せるだろう?」
サミーは大袈裟に溜息を吐いて、不本意さを主張した。「ブラックの契約書を作るのを手伝って欲しいんだ。ここで話す内容じゃないだろう?」
「ブラックを渡すのはもう少し先だぞ」それよりも、わざわざ契約書とはね。ブラックが細かく読んでまでサインするとも思えないが、こういうところがサミーらしい。
「準備をしておいて何が悪い?」
「いいや。手伝ってやる」ついでにカインのことも話すことにしよう。了承を得なきゃあの従僕は首を縦に振らないだろう。なかなかできた使用人だ。
つづく
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2023-02-26 01:32
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