はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 344 [花嫁の秘密]
ラッセルがこの百貨店を買い取ったおかげで、年の瀬だというのに思い通りの買い物ができた。あと数時間で閉まってしまうようだが、三日ほど休んですぐに通常営業に戻る。従業員は大変だがそんなことはおくびにも出さない。よほど訓練されているのだろう。
結局朝食は昼食になってしまったが、ここのティールームは静かで男一人でいてもとても居心地がいい。
サミーはアルコーブの奥まった場所から、客や従業員の動きをのんびりと観察していた。
仕事をするというのはどんなものなのだろう。人に使われる側と使う側と。エリックはちょうど両方の立場にある。新聞社や雑誌社が欲しがっている記事を提供するのも、そう簡単ではないはず。依頼された記事を書き上げるまでに、何人くらい人を動かすのだろう。
ケーキの最後のひと口を口に運び、ここにセシルがいたらいいのにと、一緒に味わえないことを残念に思った。しばらくしてこっちに戻ったとしても、学校が始まればまた行ってしまうが、ここに残ってくれたらどんなにいいか。
そういえばセシルは大学で何を学ぶと言っていただろう。きちんと聞いておけばよかった。こっちに戻ってきたら、少し真面目な話をすることにしよう。それから、エリックとも。
こっちへ出て来てから色々なことが起こりすぎて、いったい自分がいま何をすべきなのかわからなくなっている。とにかく今夜ジュリエットとカウントダウンのイベントに参加する。そのことだけを考えていられたらいいのだが、屋敷に戻ったらブラックの契約書の概要をまとめてエリックにチェックしてもらわなければ。
しかしこんな時でも買い物客は結構いるものなのだな。ラッセルの戦略は当たったということか。彼はいったいどんな男なのだろう。ホテルに行けば会えるだろうか。とても興味がある。
「リード様」
ふいに声を掛けられ、サミーは左に顔を振った。視界の端に給仕が近づいてきているのが見えていたが、もしかして長居しすぎだと追い出されるのだろうか。
「僕に何か?」見上げて問う。なかなか見栄えのする給仕は、少しおどおどしていてまだ新人といった初々しさが見え隠れしていた。
「お連れ様から、一階の帽子売り場にいるから早く降りてこい、と伝言を承っております」給仕は顔を赤くしてお客様にこんな口を聞くのは不本意だとばかりにそう言うと、サミーが怒りださないうちにと急いで自分の持ち場に戻った。
お連れ様?そんなものはいないが、早く降りてこいと偉そうに言う辺り、一人しか思い浮かばない。きっとあの給仕に俺の言葉をそのまま伝えろとか偉そうに言ったに違いない。ここまで来ていたなら、なぜ席まで来ない?
それより用事は済んだのだろうか?どこへ行くかは聞いていなかったが、僕よりも遥かに忙しいのは心得ている。つまり、これ以上待たせると後で面倒なことになり兼ねないということだ。
今朝のエリックはひどく苛々していたから、たまには素直に従っておこう。
つづく
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結局朝食は昼食になってしまったが、ここのティールームは静かで男一人でいてもとても居心地がいい。
サミーはアルコーブの奥まった場所から、客や従業員の動きをのんびりと観察していた。
仕事をするというのはどんなものなのだろう。人に使われる側と使う側と。エリックはちょうど両方の立場にある。新聞社や雑誌社が欲しがっている記事を提供するのも、そう簡単ではないはず。依頼された記事を書き上げるまでに、何人くらい人を動かすのだろう。
ケーキの最後のひと口を口に運び、ここにセシルがいたらいいのにと、一緒に味わえないことを残念に思った。しばらくしてこっちに戻ったとしても、学校が始まればまた行ってしまうが、ここに残ってくれたらどんなにいいか。
そういえばセシルは大学で何を学ぶと言っていただろう。きちんと聞いておけばよかった。こっちに戻ってきたら、少し真面目な話をすることにしよう。それから、エリックとも。
こっちへ出て来てから色々なことが起こりすぎて、いったい自分がいま何をすべきなのかわからなくなっている。とにかく今夜ジュリエットとカウントダウンのイベントに参加する。そのことだけを考えていられたらいいのだが、屋敷に戻ったらブラックの契約書の概要をまとめてエリックにチェックしてもらわなければ。
しかしこんな時でも買い物客は結構いるものなのだな。ラッセルの戦略は当たったということか。彼はいったいどんな男なのだろう。ホテルに行けば会えるだろうか。とても興味がある。
「リード様」
ふいに声を掛けられ、サミーは左に顔を振った。視界の端に給仕が近づいてきているのが見えていたが、もしかして長居しすぎだと追い出されるのだろうか。
「僕に何か?」見上げて問う。なかなか見栄えのする給仕は、少しおどおどしていてまだ新人といった初々しさが見え隠れしていた。
「お連れ様から、一階の帽子売り場にいるから早く降りてこい、と伝言を承っております」給仕は顔を赤くしてお客様にこんな口を聞くのは不本意だとばかりにそう言うと、サミーが怒りださないうちにと急いで自分の持ち場に戻った。
お連れ様?そんなものはいないが、早く降りてこいと偉そうに言う辺り、一人しか思い浮かばない。きっとあの給仕に俺の言葉をそのまま伝えろとか偉そうに言ったに違いない。ここまで来ていたなら、なぜ席まで来ない?
それより用事は済んだのだろうか?どこへ行くかは聞いていなかったが、僕よりも遥かに忙しいのは心得ている。つまり、これ以上待たせると後で面倒なことになり兼ねないということだ。
今朝のエリックはひどく苛々していたから、たまには素直に従っておこう。
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2023-02-25 03:00
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