はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 271 [花嫁の秘密]
セシルは舞踏室を出て、食べ物にありつけそうな場所を目指して廊下を歩いていた。
ここに到着してまだ一〇分ほど。チャリティーの集まりだと言うからもっと、なんていうか、もっと静かな会を想像していた。けれども実際は通常の舞踏会と変わりなく、ダンスの申し込みを期待する未婚の令嬢の視線をかわさなきゃならないなんて思いもしなかった。
リックの言うことは話半分に聞いておくべきだった。しかもそのリックは到着するなり姿を消した。きっと何か企んでいるのだろうけど、案外サミーがこの場に馴染んでいたことに驚かされた。社交的な印象は全くないし、きっと人が多い場所は苦手だから静かな図書室辺りに引っ込むと予想していた。
結局逃げ出したのは僕の方が先だった。
狙い通り、応接室には美味しそうなものがたくさんあった。レディたちが夢中なデザートは後にして、まずはお肉。それともデザートを先に食べておかないとなくなっちゃうかな?牛フィレ肉をパイ生地で包んで焼き上げたものを、給仕係に大きめにカットしてもらって、それを手に壁際の静かな場所に腰を落ち着けた。
こうして全体を見渡せる場所で、怪しい人物がいないか観察することにしよう。サミーに例の四人のうち二人は教えてもらった。主催のブライアークリフ卿の長男デレクと準男爵のシリル・フロウ。マックス・ホワイトは不参加で、正体不明の四人目の男は姿を見せるのかどうか不明。もしかするとすでにパーティーに何食わぬ顔で参加しているかもしれない。
ロジャー兄様のために、適度に愛想を振りまかなきゃいけないのが何とも落ち着かないけど、とにかくコートニー家の評判を保ちつつ、行儀よくしておけば問題はないだろう。リックが何かやらかさなきゃいいけど。
ソースをたっぷりつけた上等な肉を口に運んでいると、給仕係が飲み物を持ってきた。トレーの上には様々な種類のアルコールが乗っていたが、セシルは炭酸水を頼んだ。アルコールは味覚をだめにする。せっかくの料理を心行くまで味わえないのは親不孝と同じく忌むべきものだ。
ブライアークリフ卿がケチでなくてよかった。こんなに素晴らしい料理にありつけるなんて、これならクリスマスに騒々しい場所へ出てきた甲斐もある。せっかくだからマッシュポテトも付けてもらえばよかった。
出入りする人をぼんやりと眺めていたら、廊下を見覚えのある女性が通り過ぎて行った。
まさかね?でもいくら僕が街の事情に詳しくなくても、あの炎のような髪の毛を彼女以外の誰かと勘違いするはずない。サミーは知っているのだろうか、ジュリエット・オースティンが来ていることを。
おそらく彼女はテラスから中に入ってきた。庭で何をしていたのだろうか。外は寒いしクリスマスの飾りつけがされている場所を除けばほとんど真っ暗だ。
とにかく、こうしてはいられない。まだお肉しか食べてないけど、サミーにこのことを知らせなきゃ。
セシルは残りのお肉を口の中に押し込み、名残惜しげに席を立った。
つづく
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ここに到着してまだ一〇分ほど。チャリティーの集まりだと言うからもっと、なんていうか、もっと静かな会を想像していた。けれども実際は通常の舞踏会と変わりなく、ダンスの申し込みを期待する未婚の令嬢の視線をかわさなきゃならないなんて思いもしなかった。
リックの言うことは話半分に聞いておくべきだった。しかもそのリックは到着するなり姿を消した。きっと何か企んでいるのだろうけど、案外サミーがこの場に馴染んでいたことに驚かされた。社交的な印象は全くないし、きっと人が多い場所は苦手だから静かな図書室辺りに引っ込むと予想していた。
結局逃げ出したのは僕の方が先だった。
狙い通り、応接室には美味しそうなものがたくさんあった。レディたちが夢中なデザートは後にして、まずはお肉。それともデザートを先に食べておかないとなくなっちゃうかな?牛フィレ肉をパイ生地で包んで焼き上げたものを、給仕係に大きめにカットしてもらって、それを手に壁際の静かな場所に腰を落ち着けた。
こうして全体を見渡せる場所で、怪しい人物がいないか観察することにしよう。サミーに例の四人のうち二人は教えてもらった。主催のブライアークリフ卿の長男デレクと準男爵のシリル・フロウ。マックス・ホワイトは不参加で、正体不明の四人目の男は姿を見せるのかどうか不明。もしかするとすでにパーティーに何食わぬ顔で参加しているかもしれない。
ロジャー兄様のために、適度に愛想を振りまかなきゃいけないのが何とも落ち着かないけど、とにかくコートニー家の評判を保ちつつ、行儀よくしておけば問題はないだろう。リックが何かやらかさなきゃいいけど。
ソースをたっぷりつけた上等な肉を口に運んでいると、給仕係が飲み物を持ってきた。トレーの上には様々な種類のアルコールが乗っていたが、セシルは炭酸水を頼んだ。アルコールは味覚をだめにする。せっかくの料理を心行くまで味わえないのは親不孝と同じく忌むべきものだ。
ブライアークリフ卿がケチでなくてよかった。こんなに素晴らしい料理にありつけるなんて、これならクリスマスに騒々しい場所へ出てきた甲斐もある。せっかくだからマッシュポテトも付けてもらえばよかった。
出入りする人をぼんやりと眺めていたら、廊下を見覚えのある女性が通り過ぎて行った。
まさかね?でもいくら僕が街の事情に詳しくなくても、あの炎のような髪の毛を彼女以外の誰かと勘違いするはずない。サミーは知っているのだろうか、ジュリエット・オースティンが来ていることを。
おそらく彼女はテラスから中に入ってきた。庭で何をしていたのだろうか。外は寒いしクリスマスの飾りつけがされている場所を除けばほとんど真っ暗だ。
とにかく、こうしてはいられない。まだお肉しか食べてないけど、サミーにこのことを知らせなきゃ。
セシルは残りのお肉を口の中に押し込み、名残惜しげに席を立った。
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2022-11-26 00:42
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