はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 269 [花嫁の秘密]

セシルの言った通り、エリックはアフタヌーンティーの時間に戻ってきた。朝出掛けた時とは着ている物が変わっていたが、サミーは気にしないようにした。エリックがどこで何をしていようが、自分には一切関係ない。

「まさか一日中そこに座っていたわけじゃないだろうな」エリックは外した手袋をソファテーブルに投げ出し、サミーの隣に座った。

「当たらずとも遠からず、てとこかな。ほとんど動いていないからね」エリックからは埃っぽく湿った匂いがした。一日外にいたのだろうか?

「リック、チョコレートありがとう。すごく美味しい」一日のほとんどを図書室で過ごしたセシルは、チョコレートをそばに置いて、朝読み始めた本をすっかり読み終えていた。

「もう半分も食べたのか?ったく、もっと味わって食えよ」エリックは顔を顰めてみせたが、口元はほころんでいた。

「味わってるよ。サミーなんて感動しちゃってさ、ちょっとずつかじって大切そうに食べてたよ」からかいの言葉も、相手がセシルだとそう嫌でもない。朗らかで無邪気なところが、アンジェラと重なるからかもしれない。

「ふーん、満足したならそれでいい。ちゃんと下のやつらにも届けてくれたんだろう?」エリックは横目でサミーをちらりと見て言った。

「プラットがみんなに配ったって。大喜びしてたよ」セシルが答える。

「僕はプラットのあんな顔初めて見たよ。常々執事らしさに欠けるとは思っていたけど、あそこまで感情を出されると、普段の僕たちがとてもひどい雇い主だと思わざるを得ないね」サミーは嘆かわしいとばかりに吐き出した。

「プラットは二代目だっけ?そのうちダグラスみたいに優秀な執事になるさ、きっと」帰宅した時に姿が見えなかったせいか、言葉は尻すぼみになった。

「それで、なんでチョコレートなんて贈ってきたんだ?」さも、物のついでといったように尋ねた。

「通りで見かけたからちょっとな」エリックはニヤリとした。それ以上は言うつもりはないらしく、サミーも追及はしないことにした。

「ブライアークリフ卿のパーティーにはごちそうは出るのかな?チャリティーがメインだから質素だったりするのかな?」セシルは心配そうな顔でチョコレートの箱に蓋をした。もしもに備えて大切にとっておくことにしたようだ。

「客に金を出させるために豪勢にもてなすだろうよ」エリックは適当に言って、サミーのカップを取ってポットから紅茶を注いだ。誰もエリックのためにカップを持ってこないのだから仕方がない。

「くだらない絵画にお金を出すつもりはないけど、今回は孤児院への支援金集めだと聞いたから協力は惜しまないつもりだけど、代わりに変なもの送り付けてきたりするだろうか」サミーは干からびたサンドイッチの皿を押しやりながら訊いた。

「くだらない絵画でも送り付けてくるんじゃないのか。新進気鋭の新人という名の素人の描いたものを」エリックは皿を押し返した。

「やめてくれ」ありそうで笑えない。「デレクは今回どんな役割を?ホスト役は向いてなさそうだけど」

「愛想の振りまき方くらいは知っているだろう。お前はあいつには近づくな」

だったら僕は何のためにパーティーへ?サミーは喉元まで出かかった言葉を飲みこんだ。

「ねえ、僕の役割って何?」セシルが念のため尋ねた。

「コートニーも慈善事業に関心はあるってことを見せておくだけでいい。後々ロジャーの役に立つだろう」

エリックがこのパーティーに出席を決めたのは、きっとそれが理由なのだろう。狙った獲物もいて一石二鳥ってところか。

狙われているのは僕なのに、サミーはそう思わずにはいられなかった。

つづく


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