はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 249 [花嫁の秘密]

エリックの勧め通り、ローストビーフは絶品だった。

以前から看板メニューだっただろうかと、空の皿を押しやりながら思った。確かに何人か同じように注文しているところを見れば、きっとそうなのだろう。

エリックがどうだ良かっただろうと、得意げな顔を向けてきた。認めるのは癪だけど、否定することでもない。どうせ幼稚だと思われるだけだし、周りがスパイだらけとあっては反発する気も失せる。

「自分の屋敷を持とうとは思わないのか?」エリックが出し抜けに言った。

これまでそんな会話をしたことがあっただろうかと、サミーは顔をしかめた。「本当なら、クリスのものは全部僕のもので、当然屋敷も僕のものだった」

「知ってる」エリックは短く言って、何杯目かのシャンパンを飲み干した。

「僕にどうして欲しい?クリスとアンジェラの邪魔をしないように他所へ行けと?」実際そうすべきなのだろうか?

「邪魔になっているとは思っていない。ハニーはお前を頼りにしているし、助けも必要としている」

「だったらどうして?」答えは聞かなくてもわかった。エリックは自分の都合のいい場所に僕を置いておきたいのだ。それは僕を求めているから?だとしても、愛人かなんかのように扱われるなんて御免だ。「だいたい、いい物件があるとは思えないね」

「その気なら、探してやってもいいぞ」エリックの口調は、どこかすでに目当ての屋敷があるように聞こえた。

「馬鹿みたいな値段で売り付けて、君はそのうちの何割手数料として取るつもりだい?」これが冗談でも何でもないのだから――エリックとはそういうやつだ――彼がアンジェラの兄でなければ絶対にかかわろうとは思わないだろう。

「人聞きの悪いことを言うな。それにお前はいくらだって出せるだろう?」

いくらでもということはないが、いくつか投資している事業が成功を収めていて、収入はそこそこある。株主として意見を言うことはないが、投資した分のお返しをそろそろ欲しいと思っている。

「そういう君も、僕と同じ株を持っていたんじゃなかったかな?」鉄道、建設、この辺りにエリックも投資しているのは知っている。調査員を雇う資金はここから出ているのかもしれない。

「やあ、リード」この不快な声はデレク・ストーン。なんて耳障りなんだ。

サミーは不快さを隠そうともせず、声の主に目を向けた。いつ見ても自慢だと言う黒髪に必要以上にべったりと整髪料を塗っていて気色悪い。「君か」と一言。それ以上何を言えばいいのか、不愉快すぎて言葉が出てこない。

「相変わらず、素っ気ないな」デレクはそう言って、エリックの方に向き直った。「はじめまして。デレク・ストーンです」手を差し出したが、エリックはそれを無視した。

「エリック・コートニーだ。初めてではないが、言葉を交わすのは初めてだな」不遜な物言いはエリックの得意とするところだ。サミーはこれにいつもイライラさせられる。

デレクは手を引っ込め、肩をすくめた。「ええ、何度か見かけてはいましたが」そう言って、ちらりとサミーを見る。不思議な組み合わせだと思っているのだろう。親戚だから一緒にいたっておかしくはない。

「ああ、そうだ」エリックがふいに思い出したように言う。「明日君のとこのパーティーに出席させてもらう」計算しつくされたセリフは、デレクの反応をうかがうためのものだ。

「僕の?ああ、親父の――チャリティーのか。君も来るのか?」デレクはサミーに向かって尋ねた。黒っぽい瞳に浮かぶのは好奇心か?

「少し、顔を出す程度ね」言葉が辛辣にならないように気を付けた。エリックがこっちを睨みつけていたから、仕方なしに。「でも、寄付はたっぷりさせてもらうよ」これは本心だ。

「それは親父も喜ぶ。それじゃあ僕は向こうに戻るよ。二人ともよい夜を」背を向け去っていくデレクは、いったいどんな顔をしているのだろう。

獲物がかかったとほくそ笑んでいるのか、はたまた話がうますぎると訝しんでいるのか、いったいどちらだろうか。

つづく


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