はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 242 [花嫁の秘密]
サミーが自分の部屋と呼べる場所へ戻ったのは、ずいぶんと遅くなってからだった。
話が進むにつれ居心地のいい図書室から動くのが面倒になり、食事もそのままそこで適当に済ませることになった。エリックは執事に言って、極上のボルドーワインを持ってこさせた。クリスのものはアンジェラのものも同然で、すなわちアンジェラの兄である自分にも飲む権利があるとかどうとかくだらないことを言っていた。
クリスのものだろうが何だろうが、ワインくらい好きに飲めばいい。ワインも地下で眠っているより飲まれた方がその価値があるというものだ。
「なあ、僕は本気で疲れているんだ」サミーはタオルで頭を拭きながら、背後に立つ男にうんざりと言った。
「気にするな」
気にするな?朝目覚めてから寝るまで一日中つきまとわれればうんざりもする。しかも長旅になったのはエリックが列車で行くのを拒んだからだ。ちょうどいい時間がなかったものあるのだろうが、あちこち寄り道して、それにはおそらく目的があったはず。
サミーは言われた通り気にしないことにしたが、背中にぴったりとくっついていられたら気にしないわけにはいかない。
「いい加減部屋に戻ったらどうだ?僕は髪を乾かしたいんだ」
「手伝ってやるからそこに座れ。なんだってこんなに寒い日に髪を洗う?」
「手伝いはいらないし、僕は君と違って綺麗好きだからね」伸ばされた手を振り払おうとして、ふと気づく。「君の髪も濡れているようだけど?」
「途中何度も酒場へ寄ったからな。安酒と煙草の匂いが染みついてるから仕方なくだ。明日の朝でもよかったが、明日はちょうど朝から用があるし、まあ、ついでだ」
別に朝でも昼でも好きな時に入浴すればいいのに、気を使っているのだろうか。男三人分湯を沸かすのは大変だが、クリスは新しくボイラーを設置したと言っていたから、なんてことはない。それに彼らは仕事が増えれば貰える手当も増えるのだから気にすることもない。
サミーは暖炉の前に座り込んだ。頭をかざし、指で髪の毛を梳く。同じようにエリックも座って、肩よりも長く伸びた髪をうっとうしげに後ろに払った。いつもは結んでいて気にも留めていなかったが、エリックはなぜ髪を伸ばしているのだろう。
「君は酒場に寄るたびに飲んで、ここでも飲んで、よく湯船に沈まなかったね」
「お前も少しは飲めばよかったのに。クリスのワインはなかなかだったぞ」エリックはちょっとした嫌味も意に介さない。片膝を立ててすっかりくつろいだ様子だ。
こいつは僕が酒を飲めばどうなるか知っているくせに、何かにつけ飲ませようとする。いったい何度このやり取りをしただろう。
「それで、明日は朝からどこへ?」僕が必要だと言いながら、勝手に行動するわけだ。
「んー、朝食会に出るだけだ。それとついでに、新聞社に寄る」
「どこの?」
「それは朝食会のことか、それとも新聞社の――」
「朝食会に決まっているだろう。君が普段出入りしている新聞社に興味はない」
「ふうん、普段、ね……色々知っていそうだな」エリックはしたり顔でサミーを見る。「ハリエットおばさまが、クリスマスをこっちで過ごすなら顔を出せというから、明日の午前中なら空いていると答えたんだ。それで朝食を一緒にな」
「君の親戚にハリエットおばさまなんていたっけ?」サミーはまじまじとエリックを見た。なぜか不意を突かれた気分だ。
「いや、彼女は親戚でも何でもないただの昔からの知り合いだ」揶揄うようなはしばみ色の瞳が暖炉の明かりを受けて煌めいた。
「知り合いね……」つまり、ハリエットおばさまとやらはエリックのパトロンか何かなのだろう。ずっと不思議に思っていた。僕ほどではないにしてもエリックも相当な資産を持っている。とはいえ、金遣いは荒いし、安定した収入を得ているように見えない。
そういえば、彼自身メリッサのパトロンだ。
若いころに旅先で出会った彼女――いや、彼を国に連れ帰った。いったいどうやってそんなことをやってのけたのだろう。エリックが政府の仕事に手を貸しているというのは、僕のただの推測だろうか。
もうすでにはちみつ色の髪は乾いているように見える。それなのに一向に出ていこうとしないのはなぜだろう。
つづく
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話が進むにつれ居心地のいい図書室から動くのが面倒になり、食事もそのままそこで適当に済ませることになった。エリックは執事に言って、極上のボルドーワインを持ってこさせた。クリスのものはアンジェラのものも同然で、すなわちアンジェラの兄である自分にも飲む権利があるとかどうとかくだらないことを言っていた。
クリスのものだろうが何だろうが、ワインくらい好きに飲めばいい。ワインも地下で眠っているより飲まれた方がその価値があるというものだ。
「なあ、僕は本気で疲れているんだ」サミーはタオルで頭を拭きながら、背後に立つ男にうんざりと言った。
「気にするな」
気にするな?朝目覚めてから寝るまで一日中つきまとわれればうんざりもする。しかも長旅になったのはエリックが列車で行くのを拒んだからだ。ちょうどいい時間がなかったものあるのだろうが、あちこち寄り道して、それにはおそらく目的があったはず。
サミーは言われた通り気にしないことにしたが、背中にぴったりとくっついていられたら気にしないわけにはいかない。
「いい加減部屋に戻ったらどうだ?僕は髪を乾かしたいんだ」
「手伝ってやるからそこに座れ。なんだってこんなに寒い日に髪を洗う?」
「手伝いはいらないし、僕は君と違って綺麗好きだからね」伸ばされた手を振り払おうとして、ふと気づく。「君の髪も濡れているようだけど?」
「途中何度も酒場へ寄ったからな。安酒と煙草の匂いが染みついてるから仕方なくだ。明日の朝でもよかったが、明日はちょうど朝から用があるし、まあ、ついでだ」
別に朝でも昼でも好きな時に入浴すればいいのに、気を使っているのだろうか。男三人分湯を沸かすのは大変だが、クリスは新しくボイラーを設置したと言っていたから、なんてことはない。それに彼らは仕事が増えれば貰える手当も増えるのだから気にすることもない。
サミーは暖炉の前に座り込んだ。頭をかざし、指で髪の毛を梳く。同じようにエリックも座って、肩よりも長く伸びた髪をうっとうしげに後ろに払った。いつもは結んでいて気にも留めていなかったが、エリックはなぜ髪を伸ばしているのだろう。
「君は酒場に寄るたびに飲んで、ここでも飲んで、よく湯船に沈まなかったね」
「お前も少しは飲めばよかったのに。クリスのワインはなかなかだったぞ」エリックはちょっとした嫌味も意に介さない。片膝を立ててすっかりくつろいだ様子だ。
こいつは僕が酒を飲めばどうなるか知っているくせに、何かにつけ飲ませようとする。いったい何度このやり取りをしただろう。
「それで、明日は朝からどこへ?」僕が必要だと言いながら、勝手に行動するわけだ。
「んー、朝食会に出るだけだ。それとついでに、新聞社に寄る」
「どこの?」
「それは朝食会のことか、それとも新聞社の――」
「朝食会に決まっているだろう。君が普段出入りしている新聞社に興味はない」
「ふうん、普段、ね……色々知っていそうだな」エリックはしたり顔でサミーを見る。「ハリエットおばさまが、クリスマスをこっちで過ごすなら顔を出せというから、明日の午前中なら空いていると答えたんだ。それで朝食を一緒にな」
「君の親戚にハリエットおばさまなんていたっけ?」サミーはまじまじとエリックを見た。なぜか不意を突かれた気分だ。
「いや、彼女は親戚でも何でもないただの昔からの知り合いだ」揶揄うようなはしばみ色の瞳が暖炉の明かりを受けて煌めいた。
「知り合いね……」つまり、ハリエットおばさまとやらはエリックのパトロンか何かなのだろう。ずっと不思議に思っていた。僕ほどではないにしてもエリックも相当な資産を持っている。とはいえ、金遣いは荒いし、安定した収入を得ているように見えない。
そういえば、彼自身メリッサのパトロンだ。
若いころに旅先で出会った彼女――いや、彼を国に連れ帰った。いったいどうやってそんなことをやってのけたのだろう。エリックが政府の仕事に手を貸しているというのは、僕のただの推測だろうか。
もうすでにはちみつ色の髪は乾いているように見える。それなのに一向に出ていこうとしないのはなぜだろう。
つづく
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2022-10-18 15:57
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