はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 241 [花嫁の秘密]

エリックにとってリード邸の図書室は、さほど心地のいい場所ではない。もちろん居心地が悪いわけではないが、ハニーのように長居したい場所かと言われればそうではないというだけ。ただここにはコートニー邸にはない上等な酒がキャビネットにずらりと並んでいる。好みの酒を手に取ればたちまち居心地が良くなるから不思議だ。

実のところ、このままクラブに行ってもよかった。けれども、さっき口にした通り今夜はもう誰にも会いたくなかったし、何よりサミーが心配だった。
道中何度か休憩を挟んだが、サミーは終始不機嫌で食欲もなく、数日前からの風邪がまだくすぶっているようだった。まあ、不機嫌なのは半ば強引に連れ出されたことに腹を立てているからだろうが、ちょっとでも目を離すとろくなことをしないのだから仕方がない。ジュリエットのことなど俺一人でもどうにかできる。そうしないのは、サミーにハニーを救わせたいからだ。

「それで、明日はどこへ?」そう言ってこちらを見るサミーは、ソファのひじ掛けを枕に今にも眠ってしまいそうだ。

「明日は俺一人で動く、お前は休め」エリックはブランデーグラスを手に取った。一番高い酒はどれだろうかと値踏みする。こういうのは大抵一番手に取りやすいデキャンタに上等な酒が入っていると相場は決まっている。クリスのいいところはいい酒を取り揃えているところだ。

「僕も休むからね」セシルが聞いてもいないのに答える。

「いや、ちょっと待て……わざわざここまで連れてきて、休め?」サミーが不満そうな声を上げた。

「そのかわり明後日、ブライアークリフ卿のパーティーには必ず出てもらう」エリックはブランデーの入ったグラスに口をつけながら、近くの椅子に座った。サミーの顔が正面から見える位置だ。

「出るさ、そのつもりで連れてきておいて何を言っているんだ。それより、あともう一人の名前を聞いていないけど?」サミーはエリックの手の中のグラスを見て顔を顰めた。

「あ、そうそう。僕も気になってたんだ。サミーが殺される方に賭けた四人、そいつらがまたハニーを狙うんでしょ?」セシルが無邪気に言う。道中聞かされた話があまりにも突拍子のないもので、理解が追い付いていないようだ。

「ハニーを狙うのはあくまでジュリエットだ。四人はただ賭けを面白くするため必要なことをするだけだ」エリックは簡潔に述べた。

「その賭けに参加しているメンバーは他に誰がいるんだ?殺されない方に賭けた奴もいるんだろう。表向きは僕がジュリエットと半年以内に結婚するかどうかで賭けが行われているけど、もっと刺激が欲しい者がいるのも知っている」サミーはエリックに答えを求めた。

「四人以外はサミーの言うように刺激が欲しいだけの屑だ。ただ面白おかしくちょっとしたゲームに参加しているだけで何をするわけでもないから放っておいてもかまわない」

「で、あと一人は?」サミーが先を促す。最後の一人の名前を聞くまで、質問を繰り返す気だ。

「まだわからない」エリックは素直に打ち明けた。

「マックス・ホワイトは時々見かけるな。彼はとても目立ちたがりだから行けば嫌でも目に入る。ほかは覚えがないし、ホワイトと一緒に酒を飲んでいたやつでやばそうなのはいなかったはずだ」サミーは記憶を辿った。「デレクのことは会員だということさえ知らなかった」怒りを込めて言う。

いったいサミーとデレクの間に何があったのだろう。そのうち聞き出すか……おそらく喋らないだろうから、勝手に調べるか。

「まあ、何かを企むときは個室を利用するからな」

「あと一人がわからないのに、どうして四人だと思ったの?」セシルはなかなか鋭い。

「正体は不明だが、そいつがあとの三人をうまく動かしているのは確実なんだ……ただ、姿を見せないから――」これ以上先を喋るわけにもいかず、エリックは言葉を濁した。

「オーナーに聞いてみたらどう?」とセシル。

「会員制クラブのオーナーが客のことをペラペラしゃべると思うか?金で解決できるならそうするが、生憎金には困っていないだろうしな」エリックはセシルに向って言いながら、視線はサミーに向けていた。

サミーはじっと考えに耽っているようだが、いったい何を考えているのだろう。おそらく明日にでもプルートスに行こうと作戦を立てているのだろう。明日はダメだと言って聞くはずもなく、つまり、計画を前倒しする必要に迫られている。

エリックはひとまずブランデーを飲み干し、執事を呼んだ。何か食料を持ってこないとそろそろセシルが暴れ出しそうだ。

つづく


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