はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 243 [花嫁の秘密]

なぜこんなにもサミーに執着するのか、エリック自身理解できないでいた。
最初は好奇心、それとも同情したからか――今はもう別の感情に変化してしまい思い出すことができない。

「おい、いつまでそうしているつもりだ?」エリックはぼんやりと暖炉の炎を眺めるサミーに声をかけた。

「なにが?」サミーは思考を分断されたことに、目をぱちくりとさせてエリックを見る。

「髪をちりちりにする気か?」エリックは這うようにしてサミーのそばに寄ると、肩を掴んで後ろに引いた。
サミーの絹糸のように繊細なプラチナブロンドの髪がふわりと揺れる。少し伸びてきただろうか、柔らかい毛先があちこちに跳ねている。指の間に絡めた時の心地よさを思い出し、エリックは思わず呻き声をもらした。

「そっちこそ、もう乾いているじゃないか。そろそろ部屋へ戻ったらどうだ?」サミーが警戒心もあらわに言う。

警戒はしていても、手を払い退けはしないわけか。いつまで経っても怪我をした猫のように牙を剥いてくるが、ごくたまに甘えたような姿を見せることもある。今は違うが。

エリックはさらに近づいた。

「エリック、僕は本当に疲れているんだ」

「ベッドへ運んでやろうか?それとも――」疲れていてもキスくらいできるだろうと、エリックはサミーに軽く口づけた。

「やめろ……ベッドへ行く」サミーはぼそぼそと言い、のそりと立ち上がるとベッドへと向かい、力なく倒れこんだ。「君は来なくていいからな」

そう言われて引き下がると思っているのだろうか。もちろんそんなことはしない。

「来るなって、言っただろう」

「はいはい、お前は寝てろ。何もしない、少しこうしていたいだけだ」サミーの背に貼りつき、まだわずかに熱を持つ髪を梳く。頬に触れるとサミーの身体がわずかにこわばった。

「触ってるじゃないか」

口ほどには嫌がっていないようだ。それともただ疲れ切って動けなくなってしまっただけか。エリックは足元の上掛けを引っ張り上げて、サミーと自分を包み込んだ。サミーが抵抗しようと振り向きかけたが、エリックは頭を押さえてそれを止めた。

「いいから寝ろ」

サミーは言われた通り、枕に頭を沈め、寝心地のいい場所を探って身じろぎをした。ベッドに誰がいようが気にしないことにしたようだ。エリックは満足から思わず息を吐いた。ようやくここまで手懐けることができた。これ以上は懐かないかもしれないが、縁は一生続く。

エリックはもう一歩踏み込むことにした。

「諦めて俺のものになれ」

束の間の沈黙のあと、サミーがうんざりと返す。「だから、しないって――」

「そうじゃない」ったく、俺がこんなにぐったりしている男を襲うように見えるか?「今すぐとは言わない、お前を愛してやれるのは俺だけだ」

とうとう口にしてしまった。はっきり言わないとサミーが理解しないのだから仕方がない。

「アンジェラを忘れろって?」

まさか返す言葉がこれとはね。エリックは苛立たしさと同時にここまでサミーを夢中にさせる末の弟に嫉妬した。

「忘れろとは言っていない。だいたいハニーを忘れられるはずないだろう、俺が言うのもなんだが、あの子は特別だ。あんなかわいい弟はそうはいないからな」このセリフ、前にも言った気がする。おそらく同じような説明を求められたら何度でも言うだろう。

「ああ、君とは似ていないしね」サミーの声はまるで初めて恋した十代の少年のようだった。

サミーの初恋がアンジェラではないことを知っていたが、エリックはますます苛立った。嫉妬は醜い。エリックは鍛えられた忍耐力を発揮して穏やかに返した。

「そのぶんお前を守れる力を持っている」どれだけ胡散臭く見えようとも、エリックにはその力がある。サミーは金は持っているが人脈は持っていないに等しい。いくら情報を集めようと、最終的には人が動かなければどうにもできない。

「君はいつもそばにいるわけじゃないだろう?仕事で長期間いなくなることもある――べ、別に守ってもらう必要はないけど」サミーも自分がしようとしていることの危険は承知している。仕掛けてしまった以上引き返せないことも。

「ほんと、お前は素直じゃない。まあ、そういうところが好きなんだが。いいから、もう寝ろ」

サミーの返事はなく、しばらくして寝息が聞こえ始めた。

つづく


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