はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

伯爵と少年 6 [伯爵と少年]

エドワードは久しくこの領地から離れていない。不思議なことにアンディがここで目覚めたという五年前から。

理由は明確。貴族というものに嫌気がさし、社交界でのくだらない付き合いに嫌気がさし、そして自分の両親に嫌気がさしたからだ。

貴族というものは世間体だけで生きている。少なくともエドワードはそう思っている。
夫は妻に貞淑を求めながら、自分は外に愛人を作り娼館に通う。その妻も夫のいない間に家に愛人を引き込む。お互いそれに気付いているのだ。妻に求めるものは身分とその身分にあった姿形なのだ。
エドワードの父はその典型だった。

ある時事件は起きた。

エドワードの母クリスティーヌが、些細なことから父ハロルドと口論となり怪我を負わせたのだ。
些細なこと――確かに些細なことがきっかけだったが、それまでに積もり積もったものがあったのだ。

クリスティーヌはハロルドを愛していたが、ハロルドは違った。クリスティーヌが公爵家の娘だったから結婚したまでだ。
その時は世間体を考えて、父が過って怪我をしたということにしたが、実際は母がペーパーナイフで刺したのだった。
それは豪奢な装飾の施された真鍮製のもので、いつも父の書斎机の上に置いてあった。
以前母が父に送ったもので、母はとっさに手に触れたそれを父の背に突き刺したのだった。

その事件のあと、父は病気で亡くなった。そのケガが原因だったのかは分からない。
母は今、父親のランフォード公爵の所有する城の一つでひっそりと暮らしている。

世間はこのスキャンダルを見逃さなかった。噂が噂を呼び、一時社交界はこの話題で持ちきりだった。
しかしランフォード公爵の力により、すぐに次の噂に取って代わられた。

父の死後その爵位を受け継いだエドワードは二十二歳、すでに社交界へ顔を出すようになっていた。当時子爵家の令嬢と婚約中だったのだが、この事がきっかけで婚約破棄となった。尾ひれのついた噂話ほど質の悪いものはない。

エドワードはそう思いたかったが、婚約破棄のすぐ後にエドワードの友人でもあった伯爵家の長男と婚約したと知った時は噂話が原因でないと嫌でも気付かされた。

激しい怒りに襲われ、二度と他人に心を許すまいと誓った。もちろん彼女にそれほど惹かれていたわけではなかったが、体面は傷つけられ辱めを受けたも同然だった。

それからエドワードは社交界を去り、ロンドンを離れ、自分の領地に引きこもったのだ。
人を遠ざけ、何も誰も信じず、その心の中には深い失望と孤独しかなかったはずなのに、アンディとの出会いで何かが変わった。

あの泉で会った瞬間に――何の違和感もなくアンディが心の内に入り込んできた。

初めて強く何かを欲した。
しかしエドワードはアンディに素直に『ここにいて欲しい』という気持ちを、言い表すことが出来なかった。なぜならその方法を知らなかったからだ。

だから命じた。ここにいろと。

つづく


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