はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
伯爵と少年 5 [伯爵と少年]
エドワードは書斎に入ってきた少年に惹きつけられた。
ちゃんとした身なりをするとこうも違うのか。肌は思っていたよりずっと白かった。澄んだ青い瞳は宝石のようにきらきらしていた。髪の毛はくすんだ金髪ではなく、まるで光をすべて吸収して輝くようだった。
だからどうした?たかが子供だ。
「それで、お前はどこから来た?私の領地に入り込んで何をしていたのだ。村のものではないだろう」
エドワードは侵入者に絶対的な身分の差を分からせるように、高圧的に言い放つ。束の間魅せられていたなどとおくびにも出さず。
「ぼくはロンドンから来ました。それで、あの……あの」
「ゆっくりでいい。ちゃんと聞くから、その代わり――嘘をつくことは許さない」
「ぼくはここに、いえ、あの泉の傍にいたんです。今日のことではなくて、五年前……目が覚めたらそこにいて何も覚えてなかったんです。名前だけしか……」
ふうむ、興味深い。この子は五年前すでにここに入り込んでいたわけか。その時私は何をしていただろうか。
「名前は?」エドワードはゆっくりと訊ねた。記憶がないというこの子からもっと話を聞きたかった。
「アンディ」
「では、アンディ。君は記憶がないそういうことか?今はロンドンに住んでいるのか?ロンドンで五年も何をしていたのだ?なぜここに戻ってきた?」
アンディは矢継ぎ早の質問にも臆することなく、ひとつずつゆっくりと質問に答える。
「なぜ記憶を失くしてしまったのかはわかりません。とにかく、ぼくは名前しか覚えてなかったんです。それで、ロンドンでは――」アンディは言葉に詰まった。答えたくないのだろうかとエドワードが思っていると、しばらくののちまた喋り始めた。「いろいろです……とにかくなんでもしました。ぼく、火をおこすの得意なんです。ぼくにはここしか、いいえ、ここに来たのは――何か忘れていることを思い出せるかもって思って。だって……いえ、まさか伯爵様のお屋敷があるなんて知らなくて、本当に申し訳ございません」
エドワードはアンディの説明に聞き入っていた。言葉遣いは多少子供っぽいが、発音は完璧だ。とても孤児には見えない。
「わかった。スティーヴン、この子を部屋に案内してくれ」
エドワードがそう言うと、隣の部屋に続くドアがすっと開いて執事が入ってきた。元々ドアは開いていてスティーヴンはすべて聞いていただろう。だから説明するまでもなくエドワードの思うとおりにしてくれるはずだ。これまでもずっとそうだった。
スティーヴンは五十台半ば、人生の半分エドワードに仕えている。もとは真っ黒だった髪にもちらほらと白いものが見え始めてきた。それでも寸分の乱れもなく整えられていて、顔も体もひょろ長いせいかマッチ棒みたいに見える。いかにも執事然としているが、唯一、凛々しく蓄えられた髭がそれらしくない。
「部屋って?」アンディはスティーヴンと同じ青い瞳に困惑の色を滲ませた。
「今日からここで暮らせばいい。どうせロンドンに住む家などないのだろう?」エドワードはひらりと手を振って、ここで子供一人の面倒を見ることなど造作もないと示した。
アンディは驚き言葉を失っている。いや、それともそんな施しなど必要ないと拒絶しているのだろうか?それとも住む家は当然あって、こちらの申し出など全く必要としていないのかもしれない。
「いいえ、帰ります」とアンディ。あまりに頑なな物言いにエドワードはカッとなった。
「帰る?帰る家など無いのにどこに帰るというのだ。ここにいて記憶が戻るのを待てばいい。医者にも見せてやる」
アンディは一瞬迷いを見せた。それもそのはず、寝食を用意し記憶を取り戻すために医者も連れてくるのだから断る理由などない。
「家はないけど、待っている人がいるので帰ります」
エドワードはまさかの返事に机の上でこぶしを握った。
「待っている人だと?家族がいるのか?ぼくにはここしかないとさっき言ったのは嘘なのか?」
どうしてだか分からないが、なんとしてもアンディを引き留めなければ。そうしなければ――
「友達が待っているんです。それに仕事も。ぼく、毎朝マリーおばさんの家の火おこしをしなきゃいけなくて。いいメイドさんが見つかるまでだけど、でもマリーおばさんはメイドさんなんて探してなくてずっとぼくに仕事をくれているんです。」
マリーおばさんの家の火をおこす者と、待っている友達とやらにアンディはもう戻らないと告げる。「すべて手配する。それでいいだろう!」エドワードは言い切り、これ以上のアンディの反論を受け付けなかった。
つづく
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ちゃんとした身なりをするとこうも違うのか。肌は思っていたよりずっと白かった。澄んだ青い瞳は宝石のようにきらきらしていた。髪の毛はくすんだ金髪ではなく、まるで光をすべて吸収して輝くようだった。
だからどうした?たかが子供だ。
「それで、お前はどこから来た?私の領地に入り込んで何をしていたのだ。村のものではないだろう」
エドワードは侵入者に絶対的な身分の差を分からせるように、高圧的に言い放つ。束の間魅せられていたなどとおくびにも出さず。
「ぼくはロンドンから来ました。それで、あの……あの」
「ゆっくりでいい。ちゃんと聞くから、その代わり――嘘をつくことは許さない」
「ぼくはここに、いえ、あの泉の傍にいたんです。今日のことではなくて、五年前……目が覚めたらそこにいて何も覚えてなかったんです。名前だけしか……」
ふうむ、興味深い。この子は五年前すでにここに入り込んでいたわけか。その時私は何をしていただろうか。
「名前は?」エドワードはゆっくりと訊ねた。記憶がないというこの子からもっと話を聞きたかった。
「アンディ」
「では、アンディ。君は記憶がないそういうことか?今はロンドンに住んでいるのか?ロンドンで五年も何をしていたのだ?なぜここに戻ってきた?」
アンディは矢継ぎ早の質問にも臆することなく、ひとつずつゆっくりと質問に答える。
「なぜ記憶を失くしてしまったのかはわかりません。とにかく、ぼくは名前しか覚えてなかったんです。それで、ロンドンでは――」アンディは言葉に詰まった。答えたくないのだろうかとエドワードが思っていると、しばらくののちまた喋り始めた。「いろいろです……とにかくなんでもしました。ぼく、火をおこすの得意なんです。ぼくにはここしか、いいえ、ここに来たのは――何か忘れていることを思い出せるかもって思って。だって……いえ、まさか伯爵様のお屋敷があるなんて知らなくて、本当に申し訳ございません」
エドワードはアンディの説明に聞き入っていた。言葉遣いは多少子供っぽいが、発音は完璧だ。とても孤児には見えない。
「わかった。スティーヴン、この子を部屋に案内してくれ」
エドワードがそう言うと、隣の部屋に続くドアがすっと開いて執事が入ってきた。元々ドアは開いていてスティーヴンはすべて聞いていただろう。だから説明するまでもなくエドワードの思うとおりにしてくれるはずだ。これまでもずっとそうだった。
スティーヴンは五十台半ば、人生の半分エドワードに仕えている。もとは真っ黒だった髪にもちらほらと白いものが見え始めてきた。それでも寸分の乱れもなく整えられていて、顔も体もひょろ長いせいかマッチ棒みたいに見える。いかにも執事然としているが、唯一、凛々しく蓄えられた髭がそれらしくない。
「部屋って?」アンディはスティーヴンと同じ青い瞳に困惑の色を滲ませた。
「今日からここで暮らせばいい。どうせロンドンに住む家などないのだろう?」エドワードはひらりと手を振って、ここで子供一人の面倒を見ることなど造作もないと示した。
アンディは驚き言葉を失っている。いや、それともそんな施しなど必要ないと拒絶しているのだろうか?それとも住む家は当然あって、こちらの申し出など全く必要としていないのかもしれない。
「いいえ、帰ります」とアンディ。あまりに頑なな物言いにエドワードはカッとなった。
「帰る?帰る家など無いのにどこに帰るというのだ。ここにいて記憶が戻るのを待てばいい。医者にも見せてやる」
アンディは一瞬迷いを見せた。それもそのはず、寝食を用意し記憶を取り戻すために医者も連れてくるのだから断る理由などない。
「家はないけど、待っている人がいるので帰ります」
エドワードはまさかの返事に机の上でこぶしを握った。
「待っている人だと?家族がいるのか?ぼくにはここしかないとさっき言ったのは嘘なのか?」
どうしてだか分からないが、なんとしてもアンディを引き留めなければ。そうしなければ――
「友達が待っているんです。それに仕事も。ぼく、毎朝マリーおばさんの家の火おこしをしなきゃいけなくて。いいメイドさんが見つかるまでだけど、でもマリーおばさんはメイドさんなんて探してなくてずっとぼくに仕事をくれているんです。」
マリーおばさんの家の火をおこす者と、待っている友達とやらにアンディはもう戻らないと告げる。「すべて手配する。それでいいだろう!」エドワードは言い切り、これ以上のアンディの反論を受け付けなかった。
つづく
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2022-04-02 00:00
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