はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

伯爵と少年 3 [伯爵と少年]

アンディは列車の中であの目覚めた日のことを思い出していた。

まだ肌寒さの残る、少し曇った日だった。体の痛さに目が覚め、知らない場所に恐怖し、何か思い出そうにも空っぽの頭に混乱した。
どうして何も覚えてないのか?どうして捨てられたのか?
もしかしたら自分で家出したのかもしれないし、悪いやつにさらわれて逃げ出したところかもしれない。本当は自分が悪いことをして逃げているのかもしれない。
けれどどんなに考えても結局は思い出せないのだ。

あの日と何も変わっていない、ひと目でここだとわかった。
すべては記憶が頼りだった。
駅で泉のことを尋ねたら、駅員さんは少し考えてからパッと閃いたようにアンディの欲しかった答えをくれた。

「少し距離はあるけど、大きな道沿いを行けば辿り着けるよ」さらには途中ホロウェルの商店街を抜けるとほんのわずかだが近道だとも教えてくれた。もし迷っても町で道は訊けるし、いざとなれば泊まることもできる。

この時やっとアンディはここがホロウェルワースというところなんだと知った。駅名は全然違うのにと疑問に思ったけれど、それは口にせず駅員さんにお礼を言って道を進んだ。ただただ黙々と進み町も素通りして目的の場所に辿り着いた。

この場所だけだ――この場所だけがきっと記憶をなくす前のぼくを知っている。
何も変わっていない。大きな樫の木も、この清らかな泉も、ただ季節が違うので周りの景色は少し色が違って見えた。

「そこで何をしている!!」

怒りを含んだ鋭い声がアンディの耳に響いた。びくりとして振り返ると、すぐ後ろに黒い馬に乗った男がいた。背に陽を浴び顔が陰になっている。

「あっ、あのぼく――」

アンディが言い訳する間もなかった。男はすばやく下馬すると手に持っていた鞭を振り上げた。
その恐ろしさにアンディは凍りつき身動きできなかった。鞭が振りおろされるのをまるで他人事のように見ていた。

ぼくやっぱり悪いことをして逃げていたんだ。記憶を失くしたのもその事実から逃れるため。けれどもう逃げられない。
アンディは苦痛に顔を歪め意識が遠くへ行くのを感じた。
ただ、怖かった。

意識が遠のくその一瞬に男の顔がはっきりと見えた。その顔を見てアンディは地獄へ堕ちるのだと思った。

つづく


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