はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
ヒナおじいちゃんに会いに行く 7 [ヒナおじいちゃんに会いに行く]
ヒナはジャスティンに守られるようにして、バーンズ邸へと帰って行った。
主人の怒りを買ったダンは、当然置いて行かれた。
「クラウドさん、お騒がせして申し訳ございませんでした」
ひとまず、帽子屋を騒がせた謝罪はダンの役目だ。後始末をきっちり出来てこそ、優秀な使用人というもの。とはいえ本心は、出来るだけ早くここから離れたかった。
完璧とは言い難い身なりで、帽子屋の店内に立つのは洒落者を気取るダンにとっては屈辱でしかない。しかも、ブルーノもスペンサーも奥の方で成り行きを見ているだけ。心細いったらない。
「ブルーノの伝達ミスだ。気にすることはない。だが、お坊ちゃまを連れて来るときは必ずここを通るように」スペンサーと同じ顔に極上の笑みをたたえたクラウドの言葉には、非難めいたところはひとつもなかった。
それでも、背筋がぞくりとした。クラウドは笑いながら怒れるタイプの人間だ。
「はい、次からは必ずそうします」そう答えたけど、もう次はない気がする。たとえ首が繋がったとしても、ヒナを勝手に連れ出した罪が消えるわけではない。
「ダン、あとで行くからね」
カイルの元気付けるような一言に、気持ちが少しだけ楽になった。薄情な二人と違って、そばにいてくれたのが何より嬉しい。
「ヒナに伝えておきます。それでは」ダンは深々と頭を垂れて、来た道を戻った。
足取りは重い。戻ったらきっとすぐにホームズに呼び出される。そして降格を言い渡されるか、最悪クビ。ヒナがかばってくれるのを期待するけど、今日の旦那様の怒りようだと、望みは薄い。
それでも、ヒナの言うことを聞かなければよかったとは思わない。
ヒナは少しの時間も待てないほど、不安で追い詰められていた。助けが必要だった。だから助けた。
旦那様以外でヒナの心をほぐせるのはカイルだけ。クロフト卿だっているし、僕だっているけど、やっぱり親友の存在は違う。
恐る恐る裏口のドアを開けると、のんきな顔をしたウェインが立っていた。ウェインはいつだってのんきな顔をしている。
なんとなく腹が立った。
「何?どうしたの?」ダンは噛みつくように訊ねた。
「カイルが怒られたんだって?」
「え?」まずはカイルの心配って、何なの?「怒られたのはヒナだよ。あんな旦那様、初めて見た……」恐かった。
「そうなの?なんだか大事そうに抱えて戻って来たけど、怒っているようには見えなかったよ」
「そりゃいつまでも怒ってないよ。旦那様はちゃんと、ヒナがカイルのところへ行った理由を分かっているんだから」
「なんで言って出掛けなかったの?」ウェインが至極まともなことを言う。
「ヒナが今にも飛び出しそうになっているのに、そんな余裕あったと思う?」ダンは卑屈に答えた。
「書き置きが出来たんなら、言えたでしょ?」またウェインがまともなことを言った。
腹立つ。
「まぁ、そうだけど。まさか気付かれると思わなかったって言うか……」
「ははん。あわよくばバレずに終わればいいとか思ってたんだ。ちょっとそこまでだし、とか?甘いなぁ」ウェインはチッチと舌を鳴らした。
「ウェインに言われたくないよ」
でも、確かに僕は甘かった。
もしも首が繋がっていたら、これまでのような甘さは捨てなければならない。
つづく
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主人の怒りを買ったダンは、当然置いて行かれた。
「クラウドさん、お騒がせして申し訳ございませんでした」
ひとまず、帽子屋を騒がせた謝罪はダンの役目だ。後始末をきっちり出来てこそ、優秀な使用人というもの。とはいえ本心は、出来るだけ早くここから離れたかった。
完璧とは言い難い身なりで、帽子屋の店内に立つのは洒落者を気取るダンにとっては屈辱でしかない。しかも、ブルーノもスペンサーも奥の方で成り行きを見ているだけ。心細いったらない。
「ブルーノの伝達ミスだ。気にすることはない。だが、お坊ちゃまを連れて来るときは必ずここを通るように」スペンサーと同じ顔に極上の笑みをたたえたクラウドの言葉には、非難めいたところはひとつもなかった。
それでも、背筋がぞくりとした。クラウドは笑いながら怒れるタイプの人間だ。
「はい、次からは必ずそうします」そう答えたけど、もう次はない気がする。たとえ首が繋がったとしても、ヒナを勝手に連れ出した罪が消えるわけではない。
「ダン、あとで行くからね」
カイルの元気付けるような一言に、気持ちが少しだけ楽になった。薄情な二人と違って、そばにいてくれたのが何より嬉しい。
「ヒナに伝えておきます。それでは」ダンは深々と頭を垂れて、来た道を戻った。
足取りは重い。戻ったらきっとすぐにホームズに呼び出される。そして降格を言い渡されるか、最悪クビ。ヒナがかばってくれるのを期待するけど、今日の旦那様の怒りようだと、望みは薄い。
それでも、ヒナの言うことを聞かなければよかったとは思わない。
ヒナは少しの時間も待てないほど、不安で追い詰められていた。助けが必要だった。だから助けた。
旦那様以外でヒナの心をほぐせるのはカイルだけ。クロフト卿だっているし、僕だっているけど、やっぱり親友の存在は違う。
恐る恐る裏口のドアを開けると、のんきな顔をしたウェインが立っていた。ウェインはいつだってのんきな顔をしている。
なんとなく腹が立った。
「何?どうしたの?」ダンは噛みつくように訊ねた。
「カイルが怒られたんだって?」
「え?」まずはカイルの心配って、何なの?「怒られたのはヒナだよ。あんな旦那様、初めて見た……」恐かった。
「そうなの?なんだか大事そうに抱えて戻って来たけど、怒っているようには見えなかったよ」
「そりゃいつまでも怒ってないよ。旦那様はちゃんと、ヒナがカイルのところへ行った理由を分かっているんだから」
「なんで言って出掛けなかったの?」ウェインが至極まともなことを言う。
「ヒナが今にも飛び出しそうになっているのに、そんな余裕あったと思う?」ダンは卑屈に答えた。
「書き置きが出来たんなら、言えたでしょ?」またウェインがまともなことを言った。
腹立つ。
「まぁ、そうだけど。まさか気付かれると思わなかったって言うか……」
「ははん。あわよくばバレずに終わればいいとか思ってたんだ。ちょっとそこまでだし、とか?甘いなぁ」ウェインはチッチと舌を鳴らした。
「ウェインに言われたくないよ」
でも、確かに僕は甘かった。
もしも首が繋がっていたら、これまでのような甘さは捨てなければならない。
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2017-02-19 01:55
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