はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

ヒナおじいちゃんに会いに行く 5 [ヒナおじいちゃんに会いに行く]

家族用の小さな居間に通されたダンは、暖炉の上の鏡に映る自分に思わず息を呑んだ。

な、なんてひどい!こんな姿でどうしろって言うの?

「すまない」ブルーノが背後でまた謝った。

さっきのは僕を窒息させようとしたことへの謝罪、で、今度は僕を見るも無残な姿にしたことへの謝罪。

でも、原因は僕にもある。求め合うのが罪だとは、誰も言えない。

「ヒナが話し終えるまでに何とかしないと」身支度は得意だけれど、それは平常心でいる時の事。今はとても興奮しているし、この姿に動揺もしている。

「すぐ直してやるから大丈夫だ」ブルーノは身体を密着させるようにして背中に張り付くと、鏡の中のダンを見ながら両手で髪を梳いた。「ほら、もう直った。だから機嫌を直してくれ」

「別に機嫌は悪くありませんよ。ちょっと驚いただけです……」子供っぽい反応しかできない自分が恥ずかしい。しかも、鏡の中のブルーノはドアを開けた時と何も変わっていないのだから、なおさら。

「そこに座ってろ。水を持ってきてやる。少し、冷やした方がいい」ブルーノはそう言って、足早に居間を出て行った。

ダンはぐるりと部屋を見回した。カスタードクリームみたいな色の壁紙がとても女性的で意外な気がした。ここには男の人しかいないはずなのに。

窓から離れた椅子のひとつに座ると、赤くなった唇を撫でた。まだキスの名残でじんじんしている。会えて嬉しいし、キスも嬉しい。でも、会うたびにこんなことをしていたら、いつか仕事に影響しそうで怖い。僕はヒナを守る立場にいる。それなのに、キスひとつでふらふらになっていたのでは、守るどころではない。

「おい、ブルーノ!ヒナは来ていないだろう?ウォーターズが店で騒いでいるんだ――が……ダン?ここで何してる」

ぴたりと閉じられていたドアが勢いよく開いて現れたのは、店にいるはずのスペンサー。そこにドアがあったなんて気付きもしなかった。

「あ、あの……」完全に油断していた。言葉が出ない。

「その顔どうした?」

スペンサーの問いかけに、ダンは咄嗟に両手で顔を覆い隠した。一番やってはいけない仕草だ。そして間の悪いことに、ブルーノが戻って来た。それもそうだ。ただ水を取りに行っていただけなのだから。

「何か用か?」ブルーノは威嚇するように言い、ダンに目を向けた。「どうした?何かされたのか?」

何かしたのはブルーノでしょう?とダンは心の中で呟いた。

「お前こそ、ダンに何をした。と言うより、なぜダンがここにいる?まさか!ヒナがいるんじゃないだろうな?」スペンサーはヒナが昼寝をしていそうなソファに視線を向けた。確かに、ヒナが寝るにはちょうどいい大きさだ。

「ヒナは上だ。カイルの部屋にいる」ブルーノがうんざりしたように言う。ダンがいるなら当然だろうと言わんばかりに。

「くそっ!馬鹿か。ウォーターズがすごい剣幕で店に怒鳴り込んできて、ヒナを返せと言っている。ヒナはいないと言ったが聞きゃあしない」

「あ……」しまった。帽子屋に行くと書き置いてきたんだった。「スペンサー、旦那様をこちらに連れてきてもらえますか?僕はヒナを連れてきますので」ダンは言いながら、さりげなく上着の皴を伸ばした。髪はまとまったし、あとは自分でも恥ずかしくなるようなにやけ顔をどうにかするだけ。

「ああ、わかった」スペンサーは不機嫌に言い、ブルーノを睨み付けてから部屋を出て行った。

「階段を上がって右側でしたよね」ダンは虚ろに言い、スペンサーが出て行った反対側のドアを目指す

「俺が行ってくる。ダンはここにいろ」

「いいえ。ヒナがいない状況で旦那様に会いたくないです。僕、クビになります」

絶対。

つづく


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