はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
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ヒナの縁結び 7 [ヒナの縁結び]

今夜の晩餐はヒナとカイル、そしてパーシヴァルの三人だけ。なので大きなテーブルの端に片寄っての気楽なものとなった。

ちなみにジャスティンは敵情視察中、ジェームズはクラブの執務室に籠りきりだ。

「そういえば、僕の使用人たちがウェストクロウから戻ってくるらしいよ」パーシヴァルは空になったスープ皿を押し退けながら言う。「ヒナ、そこのパン、ひとつ取って」丸くて小さなパンは、もちもちしていてみんなの好物だ。

「パーシーの使用人たちって?ロシタのこと?」ヒナはパンかごをパーシヴァルの方に押しやりながら訊ねた。

「名前はなんだったか……とにかく、全員引き揚げてくるんだってさ。使用人のことはジェームズが管理しているから、僕は何が何だかよくわからないけどね」パーシヴァルは両方の手の平を上に向けて肩をすくめた。

「じゃあ、スペンサーたちと一緒なのかな?」カイルは独り言のように言って、生ハムのサラダをライ麦パンに挟んでかぶりついた。晩餐と言うよりまるでピクニックだ。

「どうだろうね?ジェームズかジャスティンがいれば訊けるんだけど、あいにくあの二人は仕事に夢中のようだし」パーシヴァルは悩ましげに溜息を吐いた。

「ジュスは遅くならないと帰って来ないんだって」ヒナは理不尽だとばかりに言う。確かに、昨日はベッドに来るのが遅いとぐちぐち言われたのだから、ヒナが愚痴のひとつもこぼしたところで文句は言えまい。

「それを言うならジェームズはきっと朝まで戻ってこないさ。あのろくでなしは、僕を避けているんだ」パーシヴァルは次の一皿、エビとホタテのクリームソースを目の前に嘆いた。

「あの……クロフト卿は、その……ジェームズさんとお付き合いされていたりするんですか?」カイルはかねてからの疑問をパーシヴァルに突き付けた。

「ふふふっ。気になるかい?」訊ねられて上機嫌だ。

「気になります。だってクロフト卿はジェームズさんのことすごく好きだってわかるし、ジェームズさんもきっとそうなんだって」カイルは顔を赤らめながらも、言い切った。あわよくば、恋愛指南役をお願いしようとさえしている。見方によってはそれだけ追い込まれている証拠だ。

カイルの心意気にパーシヴァルは感心した。子供は相手の身分がどれだけ上でも物怖じしないから好きだ。

「カイルの目にはジェームズが僕を好いているように見えるかい?」

「はい」

「だって、ヒナ。嬉しいね」パーシヴァルはにんまりとし、ヒナにも同じ答えを求めた。想い合っているって素敵だろうと言わんばかりに。

「ヒナはわかんない」ヒナはぶんぶんと頭を振った。二人の関係が、自分たちとは違い過ぎて、本当に恋人同士なのか疑い中だ。

「ジェームズはいつもつんつんしてるから、わかりにくいかもなぁ。二人きりの時も、まあ、あまり変わらないけどね。そういうところが好きなんだけどさ。ほら、二人とも、エビ、美味しいよ」食事の手が止まっている二人に、シモンのとっておきの料理を勧める。もしもヒナが残したりすれば、シモンはひどく悲しむだろう。

「どうしたら、クロフト卿とジェームズさんみたいになれますか?」

「わぉ!ヒナとジャスティンみたいにじゃなくて、僕とジェームズみたいに?いいねぇ~。それで、誰とそうなりたいんだい?僕に任せれば、きっと相手を夢中にさせてあげられるよ」

ヒナはそんな安請け合いして大丈夫なのという目でパーシヴァルを見た。つい数時間前、ヒナも同じようなことをして失敗したところだ。

「あの、秘密ですよ」

カイルがちらちらと部屋の隅に控える給仕係を気にする素振りを見せると、パーシヴァルは手を振り速やかに追い払った。彼らは次の料理までは顔を見せないだろう。

「もちろんだよ。さあ、言ってごらん」

「ウェインさん……です」カイルは熟れたりんごみたいに真っ赤になった。

「あー……えっと、誰だっけ?」パーシヴァルはなんの臆面もなくぽかんとした。

さすがにこれにはヒナもつっこむ。「ウェインだよ、パーシー」

「ああ、あの地味っ子ね。ああ、そうか、そうだよね。カイルが彼に夢中なのには気付いていたよ。それともヒナに聞いたんだっけ?」パーシヴァルの頭の中にはウェインの記憶はひとつもなかった。ジャスティンの従者だということはかろうじて思い出したが、いかんせん、何の特徴もない男だ。さて困った。ああいう男の扱い方はまったく分からない。

「さすがクロフト卿。やっぱり気付いていたんですね」純情なカイルは、すでにパーシヴァルを恋の伝道師か何かと思い始めていた。

「とにかく、今は食事を楽しむとして、あとでゆっくり作戦を練ろう」

それまでにはきっと、何の特徴もない下僕とヒナの大切なお友達をくっつける案が、ひとつくらいは浮かぶだろう。

「ねろうねろう!」

「練ろう練ろう!」

ヒナのカイルが同意したところで、給仕係が待ちかねたように持ち場に戻ってきた。

つづく


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