はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
ヒナの縁結び 3 [ヒナの縁結び]
シモンはただいま休憩中。
ヒナがキッチンを覗いても、そこはがらんとしているだけ。もちろんヒナは承知している。目的地は談話室だ。
「おや、お坊ちゃま。シモンはいませんよ」目の前からホームズがやってきた。ヒナがヒナのいるべき場所から逸れると、必ず誰かが見つける。
ラドフォード館ではヒューバート、スティーニー館ではハリー、そしてここではホームズだ。
「知ってるよ。ウェインに会いに来たの」ヒナはホームズを見上げるように胸を張った。
ホームズはかすかに目を見開き、驚いた様子を見せた。ヒナがウェインに用があるとは、まったくの予想外だったようだ。
「さようでございますか。ウェインは談話室ですよ」
「ダンもいる?」
「いいえ、仕事に戻りました」
「ホームズは休まないの?いつおやつ食べてるの?」ヒナは純粋な疑問をぶつけた。ホームズはいつ会っても仕事中だ。
ホームズは微笑んだ。「先ほどまで休んでいましたし、おやつもいただきました」
「よかった」ヒナはほっとした。ホームズは休まないわけではなかったのだ。「じゃあね」ヒナは手を振って、ホームズの脇をすり抜けた。談話室を覗くと、ウェインは小さな流しでマグをカチャカチャと洗っているところだった。
ヒナは丸い木のイスに腰掛けた。目の前のクッキーに手を伸ばす。割れていて一口で食べるのにはちょうどいい。
「ひッ!ヒナ!そこで何をしているんです?」洗い物が終わって振り返ったウェインが、ヒナを見て悲鳴じみた声を上げた。
「クッキー食べてた」
「上で食べたでしょう?なにも割れたクッキーなんか食べなくても」
割れていてもいなくても味は一緒なのに変なの。
「おいしいよ」
「知ってる。それで、どうしたんだい?ダンなら上だし、ああ!カイルなら部屋に戻っちゃったよ」
「知ってる」ヒナは言い返した。「ねえ。ジュス、どこ行ったか知ってる?」
「旦那様?」ウェインは手を拭きながらヒナの前に立った。「旦那様は仕事で出ているって聞いてるけど」
「ジュスは仕事やめたんでしょ?」だからヒナとずっと一緒にいてくれると思ったのに。
ウェインは椅子に座って、布巾をテーブルに丸めて置いた。「クラブの経営から手を引いたけど、色々することはあるんだよ。たぶん今日はあちこちのクラブを巡ってるんじゃないかな?敵情視察ってやつだよ」
てきじょう?なにそれ?「ジュスはいつ帰ってくるの?」
「夜まで戻らないんじゃない?クラブに行ったときはいつもそうだから」
そっか。遅いときはクラブに行ってたんだ。
「ウェインは好きな人いる?」ヒナはいたってさり気なく訊ねた。ここからが本題だ。
「え、何、急に。別にいないよそんな人」話の脈絡のなさにウェインは戸惑ったが、素直に答えた。答えなければこの状況から解放されないと知っているから。
「ヒナはいる」ヒナはきっぱりと言った。
「知ってるけどさ、そもそもヒナはどうして旦那様が好きなの?」ウェインはかねてからの疑問をヒナにぶつけた。
「えっと、ヒナのことが好きだから、かなぁ?」ヒナは顎をぽりぽりと掻いた。
ジュスの好きなところをあげればきりがない。ジュスはヒナを助けてくれて、愛してくれて、お父さんとお母さんにも会わせてくれた。もうすぐおじいちゃんにも会わせてくれる。なのに好きにならないなんておかしい。
「そりゃ、旦那様はヒナが好きだよ。一目惚れだったんだから。でもヒナは?いつから好きだったの?」
ヒナは、いつだったのだろうかと、ぼんやりと考える。
痛くて怖くてずっと目を閉じていたいと思っていたあの時、おそるおそる開いた目にジュスの顔が映った瞬間、ヒナはジュスに夢中になった。もう大丈夫だって思えたから。
「教えない」これはヒナとジュスの大切なもの。「それで、ウェインはどうなの?」
つづく
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ヒナがキッチンを覗いても、そこはがらんとしているだけ。もちろんヒナは承知している。目的地は談話室だ。
「おや、お坊ちゃま。シモンはいませんよ」目の前からホームズがやってきた。ヒナがヒナのいるべき場所から逸れると、必ず誰かが見つける。
ラドフォード館ではヒューバート、スティーニー館ではハリー、そしてここではホームズだ。
「知ってるよ。ウェインに会いに来たの」ヒナはホームズを見上げるように胸を張った。
ホームズはかすかに目を見開き、驚いた様子を見せた。ヒナがウェインに用があるとは、まったくの予想外だったようだ。
「さようでございますか。ウェインは談話室ですよ」
「ダンもいる?」
「いいえ、仕事に戻りました」
「ホームズは休まないの?いつおやつ食べてるの?」ヒナは純粋な疑問をぶつけた。ホームズはいつ会っても仕事中だ。
ホームズは微笑んだ。「先ほどまで休んでいましたし、おやつもいただきました」
「よかった」ヒナはほっとした。ホームズは休まないわけではなかったのだ。「じゃあね」ヒナは手を振って、ホームズの脇をすり抜けた。談話室を覗くと、ウェインは小さな流しでマグをカチャカチャと洗っているところだった。
ヒナは丸い木のイスに腰掛けた。目の前のクッキーに手を伸ばす。割れていて一口で食べるのにはちょうどいい。
「ひッ!ヒナ!そこで何をしているんです?」洗い物が終わって振り返ったウェインが、ヒナを見て悲鳴じみた声を上げた。
「クッキー食べてた」
「上で食べたでしょう?なにも割れたクッキーなんか食べなくても」
割れていてもいなくても味は一緒なのに変なの。
「おいしいよ」
「知ってる。それで、どうしたんだい?ダンなら上だし、ああ!カイルなら部屋に戻っちゃったよ」
「知ってる」ヒナは言い返した。「ねえ。ジュス、どこ行ったか知ってる?」
「旦那様?」ウェインは手を拭きながらヒナの前に立った。「旦那様は仕事で出ているって聞いてるけど」
「ジュスは仕事やめたんでしょ?」だからヒナとずっと一緒にいてくれると思ったのに。
ウェインは椅子に座って、布巾をテーブルに丸めて置いた。「クラブの経営から手を引いたけど、色々することはあるんだよ。たぶん今日はあちこちのクラブを巡ってるんじゃないかな?敵情視察ってやつだよ」
てきじょう?なにそれ?「ジュスはいつ帰ってくるの?」
「夜まで戻らないんじゃない?クラブに行ったときはいつもそうだから」
そっか。遅いときはクラブに行ってたんだ。
「ウェインは好きな人いる?」ヒナはいたってさり気なく訊ねた。ここからが本題だ。
「え、何、急に。別にいないよそんな人」話の脈絡のなさにウェインは戸惑ったが、素直に答えた。答えなければこの状況から解放されないと知っているから。
「ヒナはいる」ヒナはきっぱりと言った。
「知ってるけどさ、そもそもヒナはどうして旦那様が好きなの?」ウェインはかねてからの疑問をヒナにぶつけた。
「えっと、ヒナのことが好きだから、かなぁ?」ヒナは顎をぽりぽりと掻いた。
ジュスの好きなところをあげればきりがない。ジュスはヒナを助けてくれて、愛してくれて、お父さんとお母さんにも会わせてくれた。もうすぐおじいちゃんにも会わせてくれる。なのに好きにならないなんておかしい。
「そりゃ、旦那様はヒナが好きだよ。一目惚れだったんだから。でもヒナは?いつから好きだったの?」
ヒナは、いつだったのだろうかと、ぼんやりと考える。
痛くて怖くてずっと目を閉じていたいと思っていたあの時、おそるおそる開いた目にジュスの顔が映った瞬間、ヒナはジュスに夢中になった。もう大丈夫だって思えたから。
「教えない」これはヒナとジュスの大切なもの。「それで、ウェインはどうなの?」
つづく
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2017-01-14 00:35
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