はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花村と海 5 [花村と海]
海が自転車をぶっ飛ばし家に帰ると、陸が包丁を手に玄関で仁王立ちしていた。
「今何時だと思ってんの?」陸は包丁を危なっかしく振り回し、言い訳があるなら聞こうじゃないかと、高圧的に顎を突き出した。
「出迎えとかいいのに」海は減らず口を叩いた。
陸の怒りはわかる。今日は食事当番だったし、まっすぐ家に帰らなかった自分が悪いんだけど、今は誰の小言も聞きたくない。
須山との関係がこれ以上発展することはないとはっきりさせてきたところで、しかもそれを後悔しているような気がして、ひどくむしゃくしゃしている。だから陸と言えども、てゆーか、最近ユーリとうまくいっているからって調子に乗ってる陸なんかに説教されたくない。
「朋ちゃんから帰るって連絡あったから、さっさとするよッ!」陸は海の心情を察してか、それ以上四の五の言わず台所へ戻った。
海は口答えせず、陸の後を追った。憂さ晴らしに、鞄は玄関に投げっぱなしにしてやった。
「今日何?」台所へ入るなり、目がチリチリした。
「カレー」
原因は玉ねぎか。
「また?この前もしたじゃん。ごはんは炊いてる?」
「仕方ないじゃん!カレー粉いっぱいあるし、野菜も肉もあったんだから。ごはんは五合にしたよ」
「え?足りる?おかわりのことちゃんと考えてる?俺、今日ものすごい食べるよ」
海の剣幕に、陸は顔をしかめる。「まさにいは今日は飲み会なんだってさ。だから足りるんじゃない?」手を洗う海のために場所を空ける。
「あー、足りるかもね」海は手を洗って、シャツの袖をまくった。「どこまでやってんの?」
「ほとんどやっちゃってるよ。あとは鍋に全部ぶっ込むだけ。お肉はそこにあるから、やってよね。俺はツナ缶開けるから」
「何それ?指引っかけてひっぱるだけじゃん」海はぼやくように言い、ガスコンロにカレー鍋を置いた。火を点けると同時に油を適当に入れて、鶏もも肉と野菜を一気にぶっ込んだ。陸がそうしろって言ったから。
「ふぎゃうぎゃう、ぎゃおうぎゃおうッ」
陸がツナ缶を開けた途端、ブッチがどこからともなく猛獣のような声を出しながら速足で台所に入ってきた。膨らませた尻尾を立てて椅子に座る陸の脚に頭突きをくらわせ、首を上下に擦り付け、おねだりマックス状態だ。
「猫缶と間違えてんじゃん」海は他人事のように言い、鍋の中をスパチュラでかき混ぜた。
「ンガーオ」ブッチは変な声を出して、陸の膝に飛び乗った。
いよいよピンチの陸。「もう、ブッチ。カリカリあげたじゃん。これはツナ缶。ブッチのじゃないんだからね」
魚の匂いのする缶詰を開けて、それはお前んじゃないと言われてもブッチが納得するはずがない。
「こないだ買った舌平目のやつあげたら。ゼリー寄せみたいなの」ホームセンターに行った時、陸は女子みたいにきゃあきゃあ言いながらブッチの缶詰を選んでいた。
「あれは特別な日用なんだけど」陸は不満げに唇を尖らせた。
「ブッチにそんなんないじゃん」あるとしたら、ブッチを拾った日くらいだろう。
「あるよ、色々。ほら、今度は朋ちゃんの誕生日があるじゃん。あ、それで思い出した。朋ちゃんの誕生日会するから、十月十日は絶対予定を入れちゃダメだってさ」
誕生日会?
「朋ちゃんはコウタと過ごすんじゃない?」だからコウタの誕生日会はしなかったし、去年もそうしたはず。
「知らないよ」陸はどうでもいいとばかりに答えると、しつこいブッチを引き連れて台所を出て行った。特別な缶詰だってなんだって、ブッチが欲しいと言えばあげるしかない。
俺だって、欲しいもんは欲しいもん。
それより、誕生日会には花村も来るのだろうか?
つづく
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「今何時だと思ってんの?」陸は包丁を危なっかしく振り回し、言い訳があるなら聞こうじゃないかと、高圧的に顎を突き出した。
「出迎えとかいいのに」海は減らず口を叩いた。
陸の怒りはわかる。今日は食事当番だったし、まっすぐ家に帰らなかった自分が悪いんだけど、今は誰の小言も聞きたくない。
須山との関係がこれ以上発展することはないとはっきりさせてきたところで、しかもそれを後悔しているような気がして、ひどくむしゃくしゃしている。だから陸と言えども、てゆーか、最近ユーリとうまくいっているからって調子に乗ってる陸なんかに説教されたくない。
「朋ちゃんから帰るって連絡あったから、さっさとするよッ!」陸は海の心情を察してか、それ以上四の五の言わず台所へ戻った。
海は口答えせず、陸の後を追った。憂さ晴らしに、鞄は玄関に投げっぱなしにしてやった。
「今日何?」台所へ入るなり、目がチリチリした。
「カレー」
原因は玉ねぎか。
「また?この前もしたじゃん。ごはんは炊いてる?」
「仕方ないじゃん!カレー粉いっぱいあるし、野菜も肉もあったんだから。ごはんは五合にしたよ」
「え?足りる?おかわりのことちゃんと考えてる?俺、今日ものすごい食べるよ」
海の剣幕に、陸は顔をしかめる。「まさにいは今日は飲み会なんだってさ。だから足りるんじゃない?」手を洗う海のために場所を空ける。
「あー、足りるかもね」海は手を洗って、シャツの袖をまくった。「どこまでやってんの?」
「ほとんどやっちゃってるよ。あとは鍋に全部ぶっ込むだけ。お肉はそこにあるから、やってよね。俺はツナ缶開けるから」
「何それ?指引っかけてひっぱるだけじゃん」海はぼやくように言い、ガスコンロにカレー鍋を置いた。火を点けると同時に油を適当に入れて、鶏もも肉と野菜を一気にぶっ込んだ。陸がそうしろって言ったから。
「ふぎゃうぎゃう、ぎゃおうぎゃおうッ」
陸がツナ缶を開けた途端、ブッチがどこからともなく猛獣のような声を出しながら速足で台所に入ってきた。膨らませた尻尾を立てて椅子に座る陸の脚に頭突きをくらわせ、首を上下に擦り付け、おねだりマックス状態だ。
「猫缶と間違えてんじゃん」海は他人事のように言い、鍋の中をスパチュラでかき混ぜた。
「ンガーオ」ブッチは変な声を出して、陸の膝に飛び乗った。
いよいよピンチの陸。「もう、ブッチ。カリカリあげたじゃん。これはツナ缶。ブッチのじゃないんだからね」
魚の匂いのする缶詰を開けて、それはお前んじゃないと言われてもブッチが納得するはずがない。
「こないだ買った舌平目のやつあげたら。ゼリー寄せみたいなの」ホームセンターに行った時、陸は女子みたいにきゃあきゃあ言いながらブッチの缶詰を選んでいた。
「あれは特別な日用なんだけど」陸は不満げに唇を尖らせた。
「ブッチにそんなんないじゃん」あるとしたら、ブッチを拾った日くらいだろう。
「あるよ、色々。ほら、今度は朋ちゃんの誕生日があるじゃん。あ、それで思い出した。朋ちゃんの誕生日会するから、十月十日は絶対予定を入れちゃダメだってさ」
誕生日会?
「朋ちゃんはコウタと過ごすんじゃない?」だからコウタの誕生日会はしなかったし、去年もそうしたはず。
「知らないよ」陸はどうでもいいとばかりに答えると、しつこいブッチを引き連れて台所を出て行った。特別な缶詰だってなんだって、ブッチが欲しいと言えばあげるしかない。
俺だって、欲しいもんは欲しいもん。
それより、誕生日会には花村も来るのだろうか?
つづく
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2016-10-24 01:20
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