はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

ヒナおうちに帰る 7 [ヒナおうちに帰る]

ヒナはホームズを従え、居間に入った。

お仕着せを着ていたらかなり様になったのだろうが、残念ながらヒナはいつものようにシャツの裾をだらしなくズボンから出して、ほぼ裸足といういで立ちだ。

それでも両手でしっかりと掴まれた銀製のかごは、ヒナの手の中でいつもよりも輝いて見えた。

ジャスティンはヒナが妙にしゃちほこばっていても、眉ひとつ動かさなかった。ヒナはラドフォード館で過ごした三週間で、色々なことが出来るようになった。お手伝いもそのひとつだ。

頑張っているのに、笑うなんて不作法、絶対にしてはいけない。

「おやおや、可愛らしい給仕係の登場だ」パーシヴァルが笑いながら言う。どうにもくすくす笑いが止まらないようだ。

「立派な、と言うべきだぞ。パーシヴァル」ジャスティンは鋭く指摘し、ヒナがパーシヴァルの言葉に傷ついていないかを、それとなく確かめた。

ヒナはうふふと笑って、かごをテーブルに置いた。笑い方がおじと全く同じだったことに、ジャスティンは渋面になった。

「今日のおやつはなんだい?」

「アイスクリームと、えっと……」ヒナはアイスとスプーンに夢中で、おやつに何を用意されているのかきちんと確認していなかった。

「レモンタルト、ジャムクッキーでございます。長旅でお疲れかと思いまして、チョコレートとはちみつたっぷりのふわふわパンもご用意しております」

「ヒナの好物ばかりだな」ジャスティンが言う。

「仕方がないよ。シモンはヒナが大好きなんだから。ヒナが帰ってきて一番喜んでるのはシモンじゃない?」パーシヴァルがさっそくスプーンを手にする。

ヒナはジャスティンの隣に座って、ホームズが差し出すアイスを受け取った。もちろん一番に受け取る権利がある。

「差し出がましいようですが、意見させてもらいます。わたくしも、お坊ちゃまがご帰宅されたことをとても喜んでおります」ホームズは主人に対してはほとんど意見をすることはないが、パーシヴァルが相手となれば話は別だ。“シモンが一番喜んでいる?わたくしの方がもっと喜んでいるに決まっている”これは心の中で呟くにとどめた。

「ヒナもうれしい」ヒナはホームズの胸の内など知る由もなく、純粋な気持ちを伝える。

ホームズは満足げな面持ちで、静かに引き下がった。

「挨拶は無事済んだのか?」ちょっぴりシモンにやきもちを焼くジャスティンが、拗ねた口調で訊ねる。置いて行かれたのをまだ根に持っているのだ。

ヒナはアイスクリームをぱくり。うん、と頷く。

「美味しいか?」ジャスティンは、また訊ねた。

ヒナはにっこりとして、また頷いた。

「ほんと、これ美味しい。カイルにも食べさせてあげたいね。溶ける前に来てくれたらいいけど、そうもいかないだろうし」パーシヴァルはスプーンを悩ましげに振った。

「シモンにまた作ってってお願いしてみる」ヒナは薄茶色の眉をしょんぼりと下げた。

「名案だけど、シモンは労働時間に厳しい男だよ」パーシヴァルも気遣わしげに眉を顰めた。

「それなら心配はいらない。特別手当には弱い男だ」あるじがひと言。

シモンは金と女と、そしてヒナに弱い男である。

つづく


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