はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
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ヒナおうちに帰る 6 [ヒナおうちに帰る]

ヒナに置いてけぼりを食らったジャスティンは、新しいシャツに袖を通すと、ウェインの差し出す上着を払いのけて、ぷりぷりと部屋を出た。

以前は立場が逆だったような気もするが、今では常にジャスティンがヒナを追いかけている。道中あれだけべたべたしていたくせに、薄情者め。

とにかく、帰宅した時間が悪かった。ちょうどおやつの時間だ。仕方がない。昼食がぱさついたサンドイッチだったのも、要因だろう。ヒナはパンの間のハムを二切れ食べただけだ。

ジャスティンが居間に行くと、パーシヴァルが見たことのない醜悪な長椅子に横になっていた。繊細な細工の施された金の肘掛けに寄り掛かり、何とも気だるげだ。いかにも常にだらだらと過ごしている貴族らしい格好だ。

「やあ、ジャスティン」パーシヴァルは起き上がりもせず言う。

「昼寝なら余所でやってくれ」ジャスティンはシッシと手を払って、向かいに腰を下ろした。ヒナのためにカップに紅茶を注ぎ、冷めるに任せる。

「ヒナはまだ?」パーシヴァルはようやく起き上がると、自分のカップに紅茶を注いで、悪趣味な椅子の背にもたれ優雅な仕草でカップを口に運んだ。

「先に部屋を出たが、どうせキッチンに行ったんだろうよ」ジャスティンは吐き捨てるように言い、不快げに鼻を鳴らした。ぞっとするほど真っ赤なビロード生地の長椅子が、どこから運ばれてきたのか訊く気もなかった。パーシヴァルの趣味が悪いのは今に始まったことではない。

「ヒナは向こうでもシモンを恋しがっていたからね」パーシヴァルは愉快げにふふと笑う。ジャスティンが苛立っているのを見るのが大好きなのだ。

「シモンではなく、シモンのパンだ」ジャスティンはきっちりと訂正する。

「はいはい」パーシヴァルは、ジャスティンのくだらないこだわりを軽く受け流した。

不意に沈黙が落ち、時計のカチカチという音が殊更大きく部屋に響いた。

「ジェームズはどこへ行った?」ジャスティンは苛々した口調で言った。出迎えの時に一瞬顔を見せただけで、旅の報告を聞く気もなければ、不在の間の報告をする気もなさそうだ。いったいどうなっている?

「向こうに行ってる。仕事があるんだってさ。まあ、たぶん、夜は予定があるから今のうちに仕事を終わらせておこうっていう、あれだと思うんだけどね」パーシヴァルは少女みたいなくすくす笑いを漏らした。

気色悪い。

「お前は手伝うんじゃなかったのか?」ジェームズにクラブを譲る条件として、パーシヴァルがどう関わるかを盛り込めばよかった。金銭以外の関わりは出来れば遠慮して欲しい。

「手伝うさ。クラブの経営についても、ちゃんと意見したしさ。色々考えてるんだ、二人でね」

パーシヴァルがどれだけジェームズに夢中になっているのかはどうでもいいが、クラブの先行きについて無関心は装えない。譲ったとはいえ、大切なものだ。

もしかすると、ジャスティンの引退宣言は時期尚早だったのかもしれない。

つづく


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