はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
ヒナおうちに帰る 5 [ヒナおうちに帰る]
着替えを済ませたヒナはジャスティンを待たず居間に向かう。ヒナの頭の中はシモンのおやつでいっぱいだった。おやつの時間に帰宅すると、こうなってしまう。
手摺りを撫でるように階段を下りながら、ふとまだシモンにただいまを言っていないことに気付く。ヒナの知っている顔も知らない顔も、広間で出迎えてくれたが、そこにシモンはいなかった。
ヒナは方向転換しキッチンに向かった。あいさつもせずにおやつだけ貰おうなんて、そんな礼儀知らずなことしちゃいけない。
「あ、おみやげ」ヒナはすっからかんの両手を持ち上げて眺めた。ダンが全部持って行ってしまったので、手ぶらでの訪問となってしまう。ダンがすでに配り終えていることを期待して、ヒナは地階に駆け降りた。
「しも~ん!ただいまぁ」
背を向けていたシモンは、驚きに満ちた顔で振り返り、かぶっていたコック帽を取って恭しく頭を垂れた。
「ヒナ、おかえり。わざわざシモンに会いに来てくれたのかい?それとも、食べ頃のアイスクリームを取りに来たのかい?」シモンはにやりとした。
「アイスクリーム!?アイスクリーム大好き!」ヒナはわーいと両手をあげた。
「正直者にはたんとおまけしなきゃね」シモンはにっこりと笑って袖口をまくり、用意していた器よりも大きなものを食器棚から取り出した。
ヒナはテーブルに張り付いた。
「ところでヒナ、自慢の長い前髪はどこへ行ってしまったんだい?」シモンはヒナのすっきりとした額に視線を落とした。
「ダンが切ったの」
シモンは青ざめた。「あるじはそれを許したのかい?まさかダンは……クビなんてことになってたりしないだろうね」
「ダンはおみやげ配ってる。シモンにもあるからね。あとで感想聞かせて」ヒナはうふふと笑った。視線はアイスに釘付けだ。
「シモンにもあるのかい?ウィ!ウィ!もちろん感想を伝えるよ。それで、どうして前髪を切ったりしたんだい?」
「お父さんとお母さんにプレゼントしたの。ヒナが来たよっていうしるし」ヒナは短くなった前髪を小さな手でぎゅっと掴んだ。
シモンは喉を詰まらせた。少しでも声を出せば、一緒に塩辛い何かが瞳からこぼれてしまいそうだった。それでもシモンはあっけらかんとしているヒナに合わせて、こう言った。
「それは良かった。あるじが懐に忍ばせているのかと心配してしまったよ」もしかしたら少しばかり失敬しているかもしれないが。
「ジュスがね、そうしなさいって」ヒナはにっこりと笑う。ジャスティンの言うことはすべて正しいとでも言いたげな笑みだ。
「前々から思っていたが、あるじはいい男だ」シモンは素直に認めた。
「ヒナもそう思う。ジュスはいい男」ヒナは単純に言った。深い意味など必要ないのだ。
「シモン、お坊ちゃまのデザートはまだ出来ないのか?そろそろ降りていらっしゃる頃だ――おや、お坊ちゃま。こちらにいらっしゃいましたか」お茶を運び終えたホームズが、いつまで経っても仕上がらないデザートを求めて下に降りてきた。
「アイスを見てたの。出来たら、ヒナが運ぶね」ヒナがホクホク顔で言うと、ホームズはうっすらと笑みを浮かべた。
「いえいえ、これはわたくしの仕事でございます。お坊ちゃまは上で待っていてくださいまし」ホームズはやんわりと、それでいてきっぱりと断る。ヒナの申し出自体は嬉しいのだけれど、主人の大切な人に使用人の真似事などさせられないというわけだ。
「ヒナ、お手伝いできるよ。お皿もいっぱい運んだし、パンも運んだんだ。成長したの」ヒナはぴしりと背筋を伸ばした。
「では、ヒナにはスプーンを運んで貰おうかな?これがなきゃ、アイスが食べられないからね」シモンはぴかぴかに磨かれたスプーンを指し示した。ホームズほど頭は堅くない。
「まかせて!」ヒナは鼻息荒くスプーンの入った銀製のかごを掴んだ。まるでヒナの成長を見てと言わんばかりに。
「では、お坊ちゃま行きましょうか」ホームズはヒナに先を譲った。
「はい。行きましょう!」ヒナは肩をそびやかせ、意気揚々とキッチンを出た。
つづく
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手摺りを撫でるように階段を下りながら、ふとまだシモンにただいまを言っていないことに気付く。ヒナの知っている顔も知らない顔も、広間で出迎えてくれたが、そこにシモンはいなかった。
ヒナは方向転換しキッチンに向かった。あいさつもせずにおやつだけ貰おうなんて、そんな礼儀知らずなことしちゃいけない。
「あ、おみやげ」ヒナはすっからかんの両手を持ち上げて眺めた。ダンが全部持って行ってしまったので、手ぶらでの訪問となってしまう。ダンがすでに配り終えていることを期待して、ヒナは地階に駆け降りた。
「しも~ん!ただいまぁ」
背を向けていたシモンは、驚きに満ちた顔で振り返り、かぶっていたコック帽を取って恭しく頭を垂れた。
「ヒナ、おかえり。わざわざシモンに会いに来てくれたのかい?それとも、食べ頃のアイスクリームを取りに来たのかい?」シモンはにやりとした。
「アイスクリーム!?アイスクリーム大好き!」ヒナはわーいと両手をあげた。
「正直者にはたんとおまけしなきゃね」シモンはにっこりと笑って袖口をまくり、用意していた器よりも大きなものを食器棚から取り出した。
ヒナはテーブルに張り付いた。
「ところでヒナ、自慢の長い前髪はどこへ行ってしまったんだい?」シモンはヒナのすっきりとした額に視線を落とした。
「ダンが切ったの」
シモンは青ざめた。「あるじはそれを許したのかい?まさかダンは……クビなんてことになってたりしないだろうね」
「ダンはおみやげ配ってる。シモンにもあるからね。あとで感想聞かせて」ヒナはうふふと笑った。視線はアイスに釘付けだ。
「シモンにもあるのかい?ウィ!ウィ!もちろん感想を伝えるよ。それで、どうして前髪を切ったりしたんだい?」
「お父さんとお母さんにプレゼントしたの。ヒナが来たよっていうしるし」ヒナは短くなった前髪を小さな手でぎゅっと掴んだ。
シモンは喉を詰まらせた。少しでも声を出せば、一緒に塩辛い何かが瞳からこぼれてしまいそうだった。それでもシモンはあっけらかんとしているヒナに合わせて、こう言った。
「それは良かった。あるじが懐に忍ばせているのかと心配してしまったよ」もしかしたら少しばかり失敬しているかもしれないが。
「ジュスがね、そうしなさいって」ヒナはにっこりと笑う。ジャスティンの言うことはすべて正しいとでも言いたげな笑みだ。
「前々から思っていたが、あるじはいい男だ」シモンは素直に認めた。
「ヒナもそう思う。ジュスはいい男」ヒナは単純に言った。深い意味など必要ないのだ。
「シモン、お坊ちゃまのデザートはまだ出来ないのか?そろそろ降りていらっしゃる頃だ――おや、お坊ちゃま。こちらにいらっしゃいましたか」お茶を運び終えたホームズが、いつまで経っても仕上がらないデザートを求めて下に降りてきた。
「アイスを見てたの。出来たら、ヒナが運ぶね」ヒナがホクホク顔で言うと、ホームズはうっすらと笑みを浮かべた。
「いえいえ、これはわたくしの仕事でございます。お坊ちゃまは上で待っていてくださいまし」ホームズはやんわりと、それでいてきっぱりと断る。ヒナの申し出自体は嬉しいのだけれど、主人の大切な人に使用人の真似事などさせられないというわけだ。
「ヒナ、お手伝いできるよ。お皿もいっぱい運んだし、パンも運んだんだ。成長したの」ヒナはぴしりと背筋を伸ばした。
「では、ヒナにはスプーンを運んで貰おうかな?これがなきゃ、アイスが食べられないからね」シモンはぴかぴかに磨かれたスプーンを指し示した。ホームズほど頭は堅くない。
「まかせて!」ヒナは鼻息荒くスプーンの入った銀製のかごを掴んだ。まるでヒナの成長を見てと言わんばかりに。
「では、お坊ちゃま行きましょうか」ホームズはヒナに先を譲った。
「はい。行きましょう!」ヒナは肩をそびやかせ、意気揚々とキッチンを出た。
つづく
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2016-11-15 23:58
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