はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

ヒナ田舎へ行く 8 [ヒナ田舎へ行く]

一足遅かった。

ダンはすでに玄関広間にいて、ぐるりと首を巡らせ、装飾や調度品を値踏みしていた。

捨て置かれている屋敷にしては、まあまあ。というのがダンの感想。

といっても基準は、公爵の次男の住まうバーンズ邸や贅の限りを尽くしたスティーニー館なのだけれども。

「スペンサー!そう急ぐこともないだろう?」

「中に入り込まれたら、追い出すのが面倒だろう?」

ほとんど怒鳴るようにして現れた二人を目にして、ダンは居ずまいを正すと、厳めしい顔つきで、ヒナの居所を訪ねた。ここで下手にへらへらしては、『こんな男追い出すのは造作もない』と思われ兼ねない。一人は先ほど頑なに自分を拒絶していたブルーノだ。もう一人は、おそらくここを取り仕切る長男のスペンサー・ロスとみた。弟のブルーノよりも濃い金髪に鮮やかな青い瞳。頑固そうな顎はブルーノよりも末の弟カイルによく似ている。

「誰が勝手に入れと言った?」

手厳しい一撃だ。だがすでに何度も拒絶されているので、痛くもかゆくもない。

「あいにく、玄関の扉が開け放たれておりました」すまし顔で言う。「お坊ちゃまはどこですか?そろそろお腹が空いたと騒ぎ立てる頃ですので、ジャムクッキーかチョコレートか、とびきり甘いものを用意願います」

「チョコレートなら、わたくしたちも頂きました」ブルーノが言うと、スペンサーが苦い顔をした。

「ああ、公爵のチョコレートですね」したり顔で言う。ヒナがどこの誰だか知らなかったとしても、公爵と親しくしていると聞けば接し方も変わるというもの。

「公爵のチョコだか何だか知らないが、とにかく、いますぐ回れ右してここから出て行ってくれ。ごちゃごちゃ言うようなら、二人揃って追い出してもいいんだぞ」スペンサーがいきり立つ。

あーあ。ヒナが伯爵の孫だと明かせたらどんなにいいか。そうしたら、僕に対する態度だって改善されるだろうに。

「あ、そうだ。皆さんにもお持ちしているんですよ。チョコレート」そう言った瞬間、スペンサーの表情が和らぐのをダンは見逃さなかった。「ひと箱ずつ」と付け加えると、もうこっちのもの。

「おい、さぼってないで荷物運べよ。ったく。客でもないくせに」両手に荷物を抱えたカイルが、よろよろと玄関に現れ、ダンに噛みついた。

「ああ、そうですね」カイルから鞄をひったくると、ダンは適当な方向に動き出しながら言った。「お坊ちゃまの部屋はどこですか?」

こうやって、内部まで侵入してしまえば、追い出すに追い出せなくなる。こういうずうずうしいやり口はウェインに教わった。

「そっちではない」

ほらね。

つづく


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