はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
ヒナ田舎へ行く 7 [ヒナ田舎へ行く]
歓迎しないはずだった客。
コヒナタカナデこと、ヒナ。
すっかり居間に腰を落ち着け、ブルーノが特別に淹れた紅茶をじっと眺めている。スペンサーにとっては予定通りのアフタヌーンティー。ヒナにせがまれ、同席しているのだが、ブルーノは手にカップを持ってはいるが、やはり窓辺に立ったまま前庭に目を凝らしている。
「毒は入っていませんよ」スペンサーは冗談混じりに言った。
大きすぎるソファに包まれるようにして座るヒナは、スペンサーの言葉を聞いていたのかいないのか、どこからともなく取りだしたチョコレートを口の中で転がしながら、しぶしぶといった態でスペンサーとブルーノに差し出した。
分けたくないのなら一人でどうぞと言いたいのをこらえ、スペンサーは軽く腰を上げ手を伸ばして丁重に受け取った。
「エディがくれたの」ヒナは得意げににっこりした。
「お友達ですか?」スペンサーは言い、受け取ったチョコレートを口に運んだ。
う、美味いっ!!なんだこれは?
ヒナはゆるい頭をなんとか回転させているようで、しばらくしてようやく答えた。
「ランフォードこうしゃく?アンディとはいとこなんだって。ヒナとパーシーみたいでしょ?あ、でもパーシーはおおおじって言ってた」
いったい何を言っているのかさっぱり。だが、すでに口の中で無くなりかけているチョコレートは愛らしいまでに濃厚で、明々白々、一級品だ。
一方のブルーノは、チョコレートを指先でつまんだまま、しばらく見分していたが、ヒナの意味不明な言葉に何か閃いたようだ。「もしかしてエドワード・スタンレー伯爵ですか?もちろん、いまはランフォード公爵ですが」そう言って、出自のあきらかになったチョコレートを口にポンッと放り込んだ。
「そうそう」と同意の言葉を口にすると、ヒナはカップを手にして紅茶を啜った。異国の子供らしく、下品な音とともに。
スペンサーはぎょっとして青い瞳をヒナに向けた。
ヒナは今、軽くとんでもないことを口にしなかったか?
公爵と友達だと?
ではパーシーの正体は?
「ねえ、ブルゥ。ダンはまだ?」
ブルゥ?
スペンサーはまさかなと、ブルーノと顔を見合わせた。ブルーノもまさかなという顏をしている。
「ダンというのは?」いったい誰だ?とブルーノに問いかけた。
「ヒナの近侍です。カイルと一緒に来ることになっています。荷物と一緒に」ブルーノはぬけぬけと言った。
「おい、弟よ。ちょっといいか」スペンサーはブルーノに目を据えたまま、廊下に向かって顎をしゃくると、肘掛けを力いっぱい握りながら立ち上がった。威厳をもってきびきびと部屋を出ると、のろのろとついて出て来たブルーノに指を突きつけた。
ブルーノは降参だといわんばかりに両手を軽く上げた。「あとで説明すると言っただろう」
「言ったが、そのあととやらはいったいいつのことだ?」
「今だ」
「ほう?では今、説明をしろ。コヒナタカナデ以外、敷地内に立ち入らせてはいけないと言う主人の命を忘れたか?」
「ヒナが怪我をしたと近侍が騒ぎ立てたから、ひとまずそうしたまでだ。荷物を運ばせたら、すぐにでも追い出すつもりだ。それなら文句ないだろう?どうせ伯爵本人が目を光らせているわけでもあるまいし」
事の重大さがわかっていないブルーノは不遜な態度で兄をわずかに見下ろした。
忌々しいっ!
ほんの数センチの差が、兄としての威厳を確実に損ねている。だが、このままブルーノの好きにさせるわけにはいかない。ここでの最終決定権はこの俺にあるのだから。
とにかく、歓迎されない客が到着し次第、一刻の猶予もなく門の外へと追い立ててやる。
スペンサーは再び玄関へ向かった。
つづく
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コヒナタカナデこと、ヒナ。
すっかり居間に腰を落ち着け、ブルーノが特別に淹れた紅茶をじっと眺めている。スペンサーにとっては予定通りのアフタヌーンティー。ヒナにせがまれ、同席しているのだが、ブルーノは手にカップを持ってはいるが、やはり窓辺に立ったまま前庭に目を凝らしている。
「毒は入っていませんよ」スペンサーは冗談混じりに言った。
大きすぎるソファに包まれるようにして座るヒナは、スペンサーの言葉を聞いていたのかいないのか、どこからともなく取りだしたチョコレートを口の中で転がしながら、しぶしぶといった態でスペンサーとブルーノに差し出した。
分けたくないのなら一人でどうぞと言いたいのをこらえ、スペンサーは軽く腰を上げ手を伸ばして丁重に受け取った。
「エディがくれたの」ヒナは得意げににっこりした。
「お友達ですか?」スペンサーは言い、受け取ったチョコレートを口に運んだ。
う、美味いっ!!なんだこれは?
ヒナはゆるい頭をなんとか回転させているようで、しばらくしてようやく答えた。
「ランフォードこうしゃく?アンディとはいとこなんだって。ヒナとパーシーみたいでしょ?あ、でもパーシーはおおおじって言ってた」
いったい何を言っているのかさっぱり。だが、すでに口の中で無くなりかけているチョコレートは愛らしいまでに濃厚で、明々白々、一級品だ。
一方のブルーノは、チョコレートを指先でつまんだまま、しばらく見分していたが、ヒナの意味不明な言葉に何か閃いたようだ。「もしかしてエドワード・スタンレー伯爵ですか?もちろん、いまはランフォード公爵ですが」そう言って、出自のあきらかになったチョコレートを口にポンッと放り込んだ。
「そうそう」と同意の言葉を口にすると、ヒナはカップを手にして紅茶を啜った。異国の子供らしく、下品な音とともに。
スペンサーはぎょっとして青い瞳をヒナに向けた。
ヒナは今、軽くとんでもないことを口にしなかったか?
公爵と友達だと?
ではパーシーの正体は?
「ねえ、ブルゥ。ダンはまだ?」
ブルゥ?
スペンサーはまさかなと、ブルーノと顔を見合わせた。ブルーノもまさかなという顏をしている。
「ダンというのは?」いったい誰だ?とブルーノに問いかけた。
「ヒナの近侍です。カイルと一緒に来ることになっています。荷物と一緒に」ブルーノはぬけぬけと言った。
「おい、弟よ。ちょっといいか」スペンサーはブルーノに目を据えたまま、廊下に向かって顎をしゃくると、肘掛けを力いっぱい握りながら立ち上がった。威厳をもってきびきびと部屋を出ると、のろのろとついて出て来たブルーノに指を突きつけた。
ブルーノは降参だといわんばかりに両手を軽く上げた。「あとで説明すると言っただろう」
「言ったが、そのあととやらはいったいいつのことだ?」
「今だ」
「ほう?では今、説明をしろ。コヒナタカナデ以外、敷地内に立ち入らせてはいけないと言う主人の命を忘れたか?」
「ヒナが怪我をしたと近侍が騒ぎ立てたから、ひとまずそうしたまでだ。荷物を運ばせたら、すぐにでも追い出すつもりだ。それなら文句ないだろう?どうせ伯爵本人が目を光らせているわけでもあるまいし」
事の重大さがわかっていないブルーノは不遜な態度で兄をわずかに見下ろした。
忌々しいっ!
ほんの数センチの差が、兄としての威厳を確実に損ねている。だが、このままブルーノの好きにさせるわけにはいかない。ここでの最終決定権はこの俺にあるのだから。
とにかく、歓迎されない客が到着し次第、一刻の猶予もなく門の外へと追い立ててやる。
スペンサーは再び玄関へ向かった。
つづく
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2015-01-11 01:42
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