はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
ヒナ田舎へ行く 6 [ヒナ田舎へ行く]
スペンサーはまだ居間にいた。
ブルーノが部屋を飛び出してから、足を組み替えた他、身じろぎひとつしていない。
少しうとうとしていたのだ。客はもうやってこないのだから、午後のひと時をのんびり過ごしたとて文句を言うものは誰もいない。そう思ったスペンサーが迂闊だったといえばそれまでなのだが、残念ながら客人はおまけ付きで到着する事となった。
「スペンサー!!」
玄関扉が開き、盛大に呼ばわる声が聞こえた。
やれやれ、問題発生か。
スペンサーは伸びをしながらゆっくりと立ち上がり、快適な椅子を名残惜しげに一瞥すると、厄介事を片づけるため玄関広間へと足を向けた。
調理場担当のブルーノの手が塞がっていては、いつまでたっても茶のひとつにもありつけやしない。
半円形に形作られた玄関広間には、弟と見知らぬ子供が立っていた。弟はここを出た時と同じ黒の上下に身を包み、見知らぬ子供――おそらくは十二,三歳か――茶色っぽいツイードの上下に編上げブーツ、帽子はかぶっておらず、長い髪を青いリボンでひとつに束ねている。
誰だ?
「ブルーノ、そちらは――」
「はじめまして。ヒナです」子供はぺこんとこうべを垂れた。
「コヒナタカナデ様です」ブルーノは端的に述べた。特に重要な部分だけを。横で、子供が「ヒナだよ」と囁く。
スペンサーはにわかには信じがたいという顏で、本日到着予定の客を見おろした。ブルーノとの身長差は三〇センチくらいか。まるでほうきとちりとりのようだ。
「ようこそいらっしゃいました。えーっと、ヒナ様?」早速仕事モードに切り替えた。
「ヒナだよ」子供はまた言った。
「スペンサー、詳しい話は後でするが、とにかくヒナさ――ヒナの傷の手当てを」ブルーノはしつこく指摘される前に、言い直した。
「傷だと?怪我をしたのか?まさかっ!カイルのやつが――あ、いや、迎えの者が粗相を?」
「こけたの」ヒナは膝を指差した。「でも消毒はいらないと思う――思います」鹿爪らしく言う。
「ちょっと擦りむいただけだが、ヒナの連れがひどく蒼ざめて。まあ、とりあえずきれいな水と消毒と軟膏を持って来てくれ」
弟に命令されムッとするほど狭量なスペンサーではないが、客の前で顎で使われるのはあまりいい気がしない。何はともあれ、世話係の言うことに逆らう気はないが。
自分にその役目が回ってきたら、ことだ。
「では、ヒナ様を居間へお連れしておいてくれ」スペンサーは背中に「ヒナだよ」の言葉を聞きながら、玄関広間をあとにした。
つづく
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ブルーノが部屋を飛び出してから、足を組み替えた他、身じろぎひとつしていない。
少しうとうとしていたのだ。客はもうやってこないのだから、午後のひと時をのんびり過ごしたとて文句を言うものは誰もいない。そう思ったスペンサーが迂闊だったといえばそれまでなのだが、残念ながら客人はおまけ付きで到着する事となった。
「スペンサー!!」
玄関扉が開き、盛大に呼ばわる声が聞こえた。
やれやれ、問題発生か。
スペンサーは伸びをしながらゆっくりと立ち上がり、快適な椅子を名残惜しげに一瞥すると、厄介事を片づけるため玄関広間へと足を向けた。
調理場担当のブルーノの手が塞がっていては、いつまでたっても茶のひとつにもありつけやしない。
半円形に形作られた玄関広間には、弟と見知らぬ子供が立っていた。弟はここを出た時と同じ黒の上下に身を包み、見知らぬ子供――おそらくは十二,三歳か――茶色っぽいツイードの上下に編上げブーツ、帽子はかぶっておらず、長い髪を青いリボンでひとつに束ねている。
誰だ?
「ブルーノ、そちらは――」
「はじめまして。ヒナです」子供はぺこんとこうべを垂れた。
「コヒナタカナデ様です」ブルーノは端的に述べた。特に重要な部分だけを。横で、子供が「ヒナだよ」と囁く。
スペンサーはにわかには信じがたいという顏で、本日到着予定の客を見おろした。ブルーノとの身長差は三〇センチくらいか。まるでほうきとちりとりのようだ。
「ようこそいらっしゃいました。えーっと、ヒナ様?」早速仕事モードに切り替えた。
「ヒナだよ」子供はまた言った。
「スペンサー、詳しい話は後でするが、とにかくヒナさ――ヒナの傷の手当てを」ブルーノはしつこく指摘される前に、言い直した。
「傷だと?怪我をしたのか?まさかっ!カイルのやつが――あ、いや、迎えの者が粗相を?」
「こけたの」ヒナは膝を指差した。「でも消毒はいらないと思う――思います」鹿爪らしく言う。
「ちょっと擦りむいただけだが、ヒナの連れがひどく蒼ざめて。まあ、とりあえずきれいな水と消毒と軟膏を持って来てくれ」
弟に命令されムッとするほど狭量なスペンサーではないが、客の前で顎で使われるのはあまりいい気がしない。何はともあれ、世話係の言うことに逆らう気はないが。
自分にその役目が回ってきたら、ことだ。
「では、ヒナ様を居間へお連れしておいてくれ」スペンサーは背中に「ヒナだよ」の言葉を聞きながら、玄関広間をあとにした。
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2015-01-10 02:03
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