はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
ヒナ田舎へ行く 5 [ヒナ田舎へ行く]
ブルーノは自転車の荷台にクッション代わりの膝掛けを折り畳んで置くと、好奇心で目をぎらぎらさせているカナデにそこに座るように言った。
カナデはダンの手を借りて荷台にちょこんと腰掛けた。
「わたくしの腰の辺りをしっかりと掴んでおいて下さい」ブルーノは言って、自転車に跨がった。
苦労知らずの華奢な手がブルーノのわき腹を鷲掴みにした。ブルーノはくすぐったさに身を捩らせたが、何とか噴き出さずに済んだ。特段敏感な方ではないが、そうそう触られ慣れていない場所でもある。
「では出発します」恭しく言う。
「はぁ~い」嬉しそうな声が返ってきた。
ブルーノはふと思った。コヒナタカナデは何者なのだろうかと。
ラドフォード伯爵の代理人によれば、カナデは伯爵となんらかのゆかりのある人物の御子息だという。家庭の事情で、しばらくウェストクロウのラドフォード館に身を寄せるらしいが、行動ひとつひとつに条件が付されている。ブルーノはまだその書類すべてに目を通していないので、これからどのようにカナデに接していけばいいのか分からないままだが、条件のひとつがすでに破られた事は確かだ。
もちろん、ミスター・ダンはすぐにでも追い出すつもりだ。
「名前、なんていうの?」
背中に質問が浴びせられた。いつの間にかカナデは背中に頬を寄せていたようだ。わき腹を掴んでいた手は、いまはお腹の辺りを掴んでいる。
「ブルーノと言います。カナデ様」
「ブルーノ……?だから目は青いの?あ、それからヒナはカナデサマじゃなくて、ヒナです」
「わたくしの目は青いですか?ヒナ様」時折、濃い青色だと表現される灰色の瞳を持つブルーノだが、初対面でそれを指摘されたのは初めてだった。
『おひなさまみたい』
「いま、なんと仰ったのですか?」初めて聞く言葉にブルーノは戸惑った。まるで何かの呪文のようだ。
「ダンはちゃんとついてくる?もうダメって言わない?」
ブルーノの質問はさらりと流され、新たな質問を投げかけられた。しかもかなり答え難い質問だ。
仕方がないので背筋を伸ばし、自転車をこぐのに必死な振りをした。先ほど横倒しになったせいか、車輪のどこかがカタカタといびつな音を立てている。
「あーあ、ヒナ、ダンがいないとなんにも出来ないなぁ~。髪もぐちゃぐちゃになっちゃうしなぁ」
かなり訛りがキツく、ブルーノはほとんど想像で語意をくみ取るしかなかった。
「そうですか」ブルーノは曖昧に返事をした。この子は本当に何もできないのだろう。
風の音に紛れ、ヒナの溜息が聞こえた。
「どうかされましたか?」ブルーノは気遣わしげに訊ねた。
「なんでもない。ヒナはただジュスに会いたいだけ」
ジュス?初めて聞く名だ。何を意味するものだろうか。
ブルーノは返す言葉が見つからず、そこから屋敷までの道のりをただ黙々とペダルを回し続けた。
つづく
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カナデはダンの手を借りて荷台にちょこんと腰掛けた。
「わたくしの腰の辺りをしっかりと掴んでおいて下さい」ブルーノは言って、自転車に跨がった。
苦労知らずの華奢な手がブルーノのわき腹を鷲掴みにした。ブルーノはくすぐったさに身を捩らせたが、何とか噴き出さずに済んだ。特段敏感な方ではないが、そうそう触られ慣れていない場所でもある。
「では出発します」恭しく言う。
「はぁ~い」嬉しそうな声が返ってきた。
ブルーノはふと思った。コヒナタカナデは何者なのだろうかと。
ラドフォード伯爵の代理人によれば、カナデは伯爵となんらかのゆかりのある人物の御子息だという。家庭の事情で、しばらくウェストクロウのラドフォード館に身を寄せるらしいが、行動ひとつひとつに条件が付されている。ブルーノはまだその書類すべてに目を通していないので、これからどのようにカナデに接していけばいいのか分からないままだが、条件のひとつがすでに破られた事は確かだ。
もちろん、ミスター・ダンはすぐにでも追い出すつもりだ。
「名前、なんていうの?」
背中に質問が浴びせられた。いつの間にかカナデは背中に頬を寄せていたようだ。わき腹を掴んでいた手は、いまはお腹の辺りを掴んでいる。
「ブルーノと言います。カナデ様」
「ブルーノ……?だから目は青いの?あ、それからヒナはカナデサマじゃなくて、ヒナです」
「わたくしの目は青いですか?ヒナ様」時折、濃い青色だと表現される灰色の瞳を持つブルーノだが、初対面でそれを指摘されたのは初めてだった。
『おひなさまみたい』
「いま、なんと仰ったのですか?」初めて聞く言葉にブルーノは戸惑った。まるで何かの呪文のようだ。
「ダンはちゃんとついてくる?もうダメって言わない?」
ブルーノの質問はさらりと流され、新たな質問を投げかけられた。しかもかなり答え難い質問だ。
仕方がないので背筋を伸ばし、自転車をこぐのに必死な振りをした。先ほど横倒しになったせいか、車輪のどこかがカタカタといびつな音を立てている。
「あーあ、ヒナ、ダンがいないとなんにも出来ないなぁ~。髪もぐちゃぐちゃになっちゃうしなぁ」
かなり訛りがキツく、ブルーノはほとんど想像で語意をくみ取るしかなかった。
「そうですか」ブルーノは曖昧に返事をした。この子は本当に何もできないのだろう。
風の音に紛れ、ヒナの溜息が聞こえた。
「どうかされましたか?」ブルーノは気遣わしげに訊ねた。
「なんでもない。ヒナはただジュスに会いたいだけ」
ジュス?初めて聞く名だ。何を意味するものだろうか。
ブルーノは返す言葉が見つからず、そこから屋敷までの道のりをただ黙々とペダルを回し続けた。
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2015-01-09 01:53
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