はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
ヒナ田舎へ行く 4 [ヒナ田舎へ行く]
「それ、おにいさんの?」
ヒナはダンの制止を振り切り、とびきり愛想よく初対面の男性に話し掛けると、飛びつくようにして自転車にまとわりついた。前カゴを覗き込んだり、サドルに頭を乗せてみたり。
初対面の男――ブルーノは、ヒナの勢いに圧倒され、うっかり自転車から手を離してしまった。
運悪く――当然といえば当然だが――自転車は傾ぎ、ヒナもろとも、折り重なるようにして倒れた。
上が自転車、ヒナは下だ。
ダンは蒼ざめ、金切り声をあげながら駆け寄った。
ヒナに何かあれば、首が飛ぶどころの話ではない。
「ヒナ大丈夫っ!」
ダンがヒナをひっぱり出すが早いか、ブルーノが片手で軽々と自転車を起こした。自転車にしがみついていたヒナも一緒に起き上がる。目をぱちくりさせているが、どうやら怪我はしていないようだ。
「大丈夫ですか?」ブルーノが自転車越しにヒナに問い掛ける。
ヒナはしおらしく、こくんと頷いた。
「ヒナ、怪我してないね?」ダンは着替えさせたばかりのお出掛け着に付いた土を、優しくはたきながら尋ねた。あーあ。お気に入りのリボンも汚れてしまった。ヒナが見たらさぞ悲しむだろう。早いところ屋敷へ行って、ブラシをかけなければ。
「ごめんなさい」と、しゅんとするヒナ。
「いいえ、ヒナは悪くありません。だいたい、いつまでもこんな場所に足止めさせておく方が悪いんです」ダンはチャンスとばかりに、ブルーノとカイルを責め立てた。とにかく、ヒナが何かすれば面倒が起ることは分かったはずだ。世話をする者の一人や二人、この仰々しい門の内側へ入れるくらいなんてことないと、彼らが思ってくれれば幸いだ。
「そっちがうだうだ言うからだろう?」カイルが顎を突き出し、好戦的な構えを見せた。
「お願いをしていただけです」ダンは居丈高に返した。
「ヒナからもお願い」ヒナはシモンから伝授された、おねだり専用の猫撫で声を出した。唇をきゅっとすぼめ、上目遣いでブルーノを見る。
決まりごとにうるさいブルーノは首を横に振った。
ヒナは下唇を突き出し、なおもねだった。
「ヒ、ヒナッ!!」ダンが突如叫んだ。
ヒナは驚いて飛び上がり、ダンの背後にいたカイルも飛び上がった。ブルーノは煩わしげに片眉を上げただけだ。
「膝から血が出ていますよ。ああ、どうしよう。旦那様に殺される」ダンは狼狽え、すぐさまヒナの足元に跪いた。横倒しになったはずなのに、どうして膝なんか擦りむいたんだろう?ふーふーと息を吹きかけ、砂を飛ばそうとするが、どうにもうまくいかない。「と、とにかく早く、屋敷へ。洗って消毒して軟膏を塗って、えーっと、それから――」
「消毒嫌い」ヒナはブルーノに助けを求めた。
ブルーノはヒナに諦めを促した。溜息を吐き、苦渋の決断でもするかのように――実際そうなのだが――苦りきった顔で弟に命じた。「カイル、荷物を積み替えてミスター・ダンと一緒に戻ってこい。俺はカナデ様を後ろに乗せて先に屋敷に戻る」
ダンは抗議の声をあげそうになったが、賢明にも寸前で思い直した。一時ヒナから目を離すことにはなるが、ひとまず門の内側には入れることになった。あとは追い出されないようにすればいいだけ。
ダンには追い出されないだけの自信があった。
だって、ヒナは事あるごとに面倒を起こす達人なのだ。彼らに世話なんかできるはずがない。
つづく
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ヒナはダンの制止を振り切り、とびきり愛想よく初対面の男性に話し掛けると、飛びつくようにして自転車にまとわりついた。前カゴを覗き込んだり、サドルに頭を乗せてみたり。
初対面の男――ブルーノは、ヒナの勢いに圧倒され、うっかり自転車から手を離してしまった。
運悪く――当然といえば当然だが――自転車は傾ぎ、ヒナもろとも、折り重なるようにして倒れた。
上が自転車、ヒナは下だ。
ダンは蒼ざめ、金切り声をあげながら駆け寄った。
ヒナに何かあれば、首が飛ぶどころの話ではない。
「ヒナ大丈夫っ!」
ダンがヒナをひっぱり出すが早いか、ブルーノが片手で軽々と自転車を起こした。自転車にしがみついていたヒナも一緒に起き上がる。目をぱちくりさせているが、どうやら怪我はしていないようだ。
「大丈夫ですか?」ブルーノが自転車越しにヒナに問い掛ける。
ヒナはしおらしく、こくんと頷いた。
「ヒナ、怪我してないね?」ダンは着替えさせたばかりのお出掛け着に付いた土を、優しくはたきながら尋ねた。あーあ。お気に入りのリボンも汚れてしまった。ヒナが見たらさぞ悲しむだろう。早いところ屋敷へ行って、ブラシをかけなければ。
「ごめんなさい」と、しゅんとするヒナ。
「いいえ、ヒナは悪くありません。だいたい、いつまでもこんな場所に足止めさせておく方が悪いんです」ダンはチャンスとばかりに、ブルーノとカイルを責め立てた。とにかく、ヒナが何かすれば面倒が起ることは分かったはずだ。世話をする者の一人や二人、この仰々しい門の内側へ入れるくらいなんてことないと、彼らが思ってくれれば幸いだ。
「そっちがうだうだ言うからだろう?」カイルが顎を突き出し、好戦的な構えを見せた。
「お願いをしていただけです」ダンは居丈高に返した。
「ヒナからもお願い」ヒナはシモンから伝授された、おねだり専用の猫撫で声を出した。唇をきゅっとすぼめ、上目遣いでブルーノを見る。
決まりごとにうるさいブルーノは首を横に振った。
ヒナは下唇を突き出し、なおもねだった。
「ヒ、ヒナッ!!」ダンが突如叫んだ。
ヒナは驚いて飛び上がり、ダンの背後にいたカイルも飛び上がった。ブルーノは煩わしげに片眉を上げただけだ。
「膝から血が出ていますよ。ああ、どうしよう。旦那様に殺される」ダンは狼狽え、すぐさまヒナの足元に跪いた。横倒しになったはずなのに、どうして膝なんか擦りむいたんだろう?ふーふーと息を吹きかけ、砂を飛ばそうとするが、どうにもうまくいかない。「と、とにかく早く、屋敷へ。洗って消毒して軟膏を塗って、えーっと、それから――」
「消毒嫌い」ヒナはブルーノに助けを求めた。
ブルーノはヒナに諦めを促した。溜息を吐き、苦渋の決断でもするかのように――実際そうなのだが――苦りきった顔で弟に命じた。「カイル、荷物を積み替えてミスター・ダンと一緒に戻ってこい。俺はカナデ様を後ろに乗せて先に屋敷に戻る」
ダンは抗議の声をあげそうになったが、賢明にも寸前で思い直した。一時ヒナから目を離すことにはなるが、ひとまず門の内側には入れることになった。あとは追い出されないようにすればいいだけ。
ダンには追い出されないだけの自信があった。
だって、ヒナは事あるごとに面倒を起こす達人なのだ。彼らに世話なんかできるはずがない。
つづく
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2015-01-08 02:46
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