はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

ヒナ田舎へ行く 9 [ヒナ田舎へ行く]

ヒナに用意された部屋は、掃除は行き届いているが湿っぽく――おそらく日当たりが悪いせいだろう――、なんとなく気を滅入らせるような雰囲気を漂わせていた。クリーム色の壁紙はただ黄ばんでいるようにも見えなくもないし、くすんだ緑色のカーテンは擦り切れている。

合格点を出せるのはベッドのシーツが真新しく清潔なことだけだった。

ダンは速やかに見張り役のブルーノに部屋の移動を申し入れた。

「この部屋に何の不満が?」ブルーノは気分を害したようだ。

「率直に言って、ヒナはこの部屋を気に入らないと思います」それどころか、こんな陰気な部屋に居ては、めそめそスイッチが入りかねない。

「だが、他に適当な部屋がない」

よくもぬけぬけと!

「この屋敷はさほど大きくありませんが、大小合わせて三十七部屋あると聞いています。ああ、もちろん、客間として使用できるのは十数部屋でしょうが、客にこのような部屋しか提供できないとは、あなたがたの使用人としての能力を疑わなければなりませんね」ダンは言いながらブルーノに詰め寄った。長身の彼に詰め寄ったところで足元に纏わりつく子犬のようでしかないが、それでもヒナに比べればそこそこ威厳は保たれているだろう。

自分の仕事ぶりにけちをつけられたブルーノが、怒りに顔を紅潮させた。灰色の瞳がほとんど黒っぽく変色している。

なんと不思議な!

ダンは思わずその瞳に魅せられた。明るい場所では青みが強く、怒ると黒くなる。僕の平凡な茶色の目とは大違いだ。

「そういう自分はどうなんだ?完璧な使用人だとでも?」

「いいえ、まさか!」そう言ってしまってから、元役者志望のダンはしまったと顔をしかめた。ここでは偉そうな使用人を演じることにしていたのに。こほんと咳払いをして言葉を補う。「完璧かどうかを判断するのは僕ではありません。お坊ちゃまであり、旦那様です」

なかなかうまいこと言えたと、ダンは心持ち得意になった。

「こちらに完璧さを求めるなら、ミスター・ダン。今すぐあなたを追い出さなければなりません」

くそっ。そうきたか。でも、負けていられない。

「こちらとしてもここを出るわけにはいきません。僕の仕事はお坊ちゃまの手となり足となり耳となること。ここで快適に過ごせるように配慮しなければなりません」ダンは胸を張り、ほんのわずか踵を浮かせた。

ブルーノは背筋を伸ばし、ダンの足元に冷やかな視線を向けた。「ご心配には及びません。こちらで万事うまくやります」

「いやいや。あんな子供の一人くらいとなめてもらっちゃ困ります。ああ見えてかなり扱いにくいんですから」ダンは部屋の入口に移動し、旅行鞄を抱えて廊下に出た。どこでもいい、ここではない部屋へ移動だ。南側へ行けば、それなりにいい部屋に出会えるだろう。

「田舎者だと見くびっているようですが――」ブルーノが残りの鞄を抱えて付いてくる。「そちらは使用人の棟です。客室はそこを右」

ダンはにやにやしながら、右に折れた。

つづく


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