はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

妄想と暴走 4 [妄想と暴走]

ジェームズがその気になっているように見えるのは、錯覚か都合のいい妄想か――まさかの現実か。

パーシヴァルは期待と興奮で震える手で、ジェームズのカップに紅茶を注いだ。どうにかしてジェームズが正気に戻る前に、正気を失くさせる必要がある。

「紅茶にブランデーでも垂らすか?」むしろブランデーに紅茶を垂らしたいくらいだ。シモンはいつもそうしていると、ヒナが言っていた。

ところで、ジェームズは酒に強いのか、弱いのか?それすら知らないことに気付いて、パーシヴァルは少なからずショックを受けた。ジェームズは僕がブランデーやウイスキーの類が苦手なのを知っている。それは単に客の好みを把握していたに過ぎないのだが。

「ここにはありませんよ。万一、ヒナが口にしてはいけないので」

チッ!「ああ、ここがヒナの屋敷だってことうっかり忘れてたよ」茶化すように言ったが、内心ヒナを恨まずにはいられなかった。応援しているというわりに、ちょいちょい邪魔をするのだから、まったく。

「三年前からずっとそうです」

ジェームズは笑みを見せている。どうやら機嫌は良いようだ。

好きな人とソファに仲良く並んでお茶を楽しむ、こんな日が来ようとは、ほんの数ヶ月前には想像もしなかったことだ。しかも相手は堅物ジェームズ。僕の魅力をもってしても、堅牢過ぎる守りを崩さない男だ。

つい数分前まではここに押し倒されることを望んでいたが、このままずっと寄り添っているのも悪くはない。

となると、このピンクのクッションが邪魔だ。すごく。

そう思っていると、ジェームズがクッションを掴んで持ち上げ、二人を隔てる障害物を取り除いてくれた。

「これはあなたが持ち込んだものですか?」

「いや、それはヒナのだ。おおかたジャスティンが『お!これはヒナが喜びそうだ』とかなんとか言って買って来たんだよ。衝動買いってやつさ。君みたいによくよく吟味して買って来たものとは違う」そう言って、パーシヴァルは感謝の眼差しをジェームズに向けた。「ステッキ、気に入っているんだ。最近は出掛けることも少ないけどさ」

「これからはもっとその機会が減るかもしれませんよ。仕事、するのでしょう?」

「そう言っているだろう」拗ねてうつむくとジェームズの手が伸びてきて、顎をとられてそのまま抱き寄せられた。

ああ、ここは図書室だぞ。と、束の間理性的な事を考えたりしたが、こんなチャンスを逃すのは愚か者か、恥ずかしがり屋だけだ。幸か不幸か、パーシヴァルはそのどちらでもない。

ジェームズはこめかみのあたりにキスをし、それから囁くように言った。「心配しなくても、好きな時に好きなだけ出掛けられる。ラッセルでヒナとお茶を楽しんでもいいし――」

なんだって?「役立たずだからか?だから、好きなようにすればいいと?」ジェームズの物言いに、つい口を挟まずにはいられなかった。肩でジェームズを小突き、唇を噛んで青い瞳を睨みつける。

「いいえ。あなたはこれまで通り、自由で魅力的でいればいいと言うことです。そうすれば、クラブの役に立つ」

最初に持ち上げておいて、最後に崖から突き落とす。ジェームズのいつもの戦法だ。

「むっ。その言い方だと、客寄せのサルみたいじゃないか」

ジェームズはちょっとだけ考えるふりをして、「そうとも言えますね」とにやりと笑った。

なんだ、からかっているのか。むきになって反論なんかして、もう少しでいい雰囲気を壊すところだった。

ジェームズがなぜ急に――ジャスティンがいなくなった途端――こうも、親密な態度に変わったのか不思議でならなかったが、やはり、ここはチャンスをふいにするわけにはいかない。くだらない事を考えるのはやめて、二人の『初めて』に向けてもっともっといい雰囲気にしなければ。

ああ、初めての場所が図書室なんて――わくわくする!

つづく


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