はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

迷子のヒナ 8 [迷子のヒナ]

「もう、いい?」

ヒナはパチパチと薪がはぜる暖かな暖炉の前で、直立不動で、眠たい目をしばたたきながら尋ねた。今朝もいつものように、ダンに支度を手伝ってもらっている。

たったいま、首をぎゅっと締めつけられるようにして、クラヴァットが形良く結ばれた。

ヒナの世話係のダンは、流行に敏感なお洒落さんなのだ。ヒナよりも三つ年上の十八歳。役者に憧れ、田舎からロンドンへ出てきたものの、右も左も分からず悪意のあるものの餌食になろうとしていたところをジャスティンに助けられたのだ。つまりはヒナと同じで拾われたという事だ。

「ええ、そうですね――。うーんやっぱり、ひだの数をもうひとつ増やした方がもっと綺麗に見えると思うんだよな」

ダンはそう言って、クラヴァットを解いた。

最初からやり直しだ。

辛抱強く直立していたヒナは、がっかりするあまり、おおきな溜息をついた。あまりに大きかったためか、ダンの茶色い前髪が風でふわりと揺れた。

「早くしないと、ジュス(=ジャスティン)、食べ終わっちゃう」ヒナは焦って足を踏み鳴らした。

「そんなことありませんよ。まだ九時ですから。旦那様はまだベッドの中ですよ」ダンが余裕綽綽で答える。

ヒナはきゅっと口を尖らせた。
ダンはわかっていない。
最近ジュスはヒナを避けている。仕事仕事で全然構ってくれないから、会いに行ったら、ジャム(=ジェームズ)にものすごく怒られた。

『いい子にしていないと、ジャスティンに二度と会えないぞ』

そう言われた時、膝がガクガクと震えた。ジャムは本気だ。

『はぁい』と間延びした返事をして、一目散に屋敷へ駆け戻った。地下通路の途中でホームズが待ち構えていて、ほっとした。

『シモンが待っています。今夜はレモンパイとアイスクリームだそうですよ』

ホームズは細くて長い身体を半分に折って、ヒナの手を取った。

『ねえ、ホームズ……』もじもじしながら、ヒナはホームズを見上げた。

ホームズは前を向いたままゆっくりと歩きながら、『なんでございましょう?』と優しく問い返した。

『ジュスは僕のこと、キライ?』

ホームズが珍しく驚いた顔でヒナを見おろし言った。

『いったいなぜそんな事を?旦那様はお坊ちゃまの事が大好きなのですよ』

『ほんとにそう思う?』そう訊き返しながらも、ヒナの顔には満面の笑みが広がっていた。

ヒナにもわかるほど、ジャスティンはヒナを可愛がっている。ヒナはそんなジャスティンが好きで堪らなかった。けれど、最近は妙によそよそしく、一緒にいる時間もめっきり減ってしまった。嫌われるような事をしたのだろうかとヒナは頭を悩ませるのだが、ジャスティンの考える事など到底わかるはずもなく……。

「さあ、出来ましたよ」ダンの満足げな声に、ヒナは反射的に笑顔を向けた。

やっと苦行のようなネクタイ結びが終わった。「ありがと、ダン」

ヒナは部屋を飛び出し、ジャスティンに会うため急いで階下へ向かった。

つづく


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あとがき
こんばんは、やぴです。
ヒナ初登場!?
ジャスティンのことはジュス、ジェームズのことはジャムと呼んでます。

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